36.双子の弟


今日は、ST☆RISHメンバー全員で卒業オーディションに向けて放課後練習をすることになった。

作曲家である春歌ちゃんがメンバー6人と意見を交わし、曲のアレンジをしている。

私はというと、衣装のデザインを考え中でノートと睨めっこ。



「なぁ、ちょっといい?」



不意に翔くんが声をかけてきた。

教室には私たちしか残っていないのだけれど、メンバーにも聞かれたくない内容なのか屋上への移動を促された。



「翔くんの…か……、彼女…に?」

「た、頼むッ!!その…理由は言えねーんだけど、弟の前で俺の彼女のフリをして欲しいんだ。」



翔くんの頭が下がった。

友達がこんなに頼んでるんだから、協力しない訳にはいかないよね…!



「えっと、私でよければ協力するよ。」

「本当か!?サンキューッ!!」



そんな訳で翌日、弟さんをお招きしてレコーディングルームへと訪れた…のだけれど………。

め、めちゃくちゃ睨まれてる!!

翔くんそっくりの弟さんは私をジローっと見た後、低い声で翔くんに言った。



「ねえ、翔ちゃん…この人が本当に翔ちゃんの彼女なの?」

「あぁ…だからお前はもう帰れよ。」

「…、……もし本当にこの人が彼女だって言うなら証拠を見せて。」

「は?証拠って……。」



ビシッと私を指差して、弟さんは言った。



「今すぐこの人とキスして。」

「はあ〜〜っ!?///」

「えぇ〜〜っ!?///」



私たちの反応を見て、「やっぱり信用できないから、僕は帰らないよ」と弟さんは寮へ向かって歩き出した。

ふるふる、と翔くんの拳が震える。



「待てよ、薫!!」

「…きゃあっ!」



翔くんが私の手を引いて、追いかけるように走り出す。

あぁぁ…翔くん速いよぉおお…!



ーバンッ!!



「薫っ……!!」

「あれぇ、翔ちゃんが2人?」



翔くんたちの部屋に着くとそこには那月くんに携帯でパシャパシャと撮られている弟さんがいた。



「だから僕は……!」



那月くんから離れた彼は言う。


ー来栖"薫"。

翔ちゃんの双子の弟だよ。



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