35.お見舞い


「へーえ…それじゃ、これから今よりもっと忙しくなる訳だね。」



みんながグループでオーディションを受けること、そしてその衣装を私が制作することが決まって数日。

私は藍ちゃんのお見舞いに来ていた。



「本当は、課題が無い日は授業を終えたらできるだけここに来たいと思っていたんですけど……。」

「今の状況からすると、それは流石に無理だね。」

「……そう、ですよね。あっ怪我の具合は大丈夫ですか!?まだ痛いですよ……ね…?」

「………………。」



ふわっ、と優しく笑う藍ちゃんが私の頭を撫でた。



「…優子。」

「は、い……」

「僕にあまり会えなくて…寂しい?」

「そ…当たり前、です……。」

「そう。それじゃあ……、」



藍ちゃんは首についていたネックレスを外すと、それを私の手に握らせた。

それはシルバーのリングがついている物で、藍ちゃんがよく身に付けていたもの。



「藍ちゃん、これ……。」

「僕の変わりに…持ってても良いよ。」

「うんっ、ありがとう!!」

「……あと、もうひとつ。」



ポンポン、とベッドに座るよう促され側に寄る。

するとスッと白い腕が伸びて、頭の後ろに触れたと思うと…藍ちゃんが私の首に顔をうずめた。



「…っあ!」



ちゅっと首筋にキスをされ、思わず声をあげてしまった。

顔の熱がカアッと上がっていく。



「……優子にはちょっと早すぎたかもしれないね。でも、僕のものってシルシだよ。」

「あ、ああいちゃん……!」



赤面してパクパクと口が閉じられない私を「金魚みたい」なんて藍ちゃんは笑う。

そして私をぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いた。



「……僕だって、優子に会えなくて寂しいよ。本当は心配で仕方ない。」

「心配?」

「優子、無茶ばっかするでしょ?そのままリビングで寝ちゃうし。」

「あ……。」

「あそこは男ばっかりだし…。」



最後の言葉にえ?と首を傾げると「何でもない」と言った藍ちゃんは布団に潜ってしまった。

照れてる・・・・のかなぁ?

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