32.愛しあい


ー…優子、好きだ。




夢じゃないかと思った。




『…美風藍のマネージャーの園崎です。』

『ぁ、藍に…、…軽自動車が突っ込んだきたようで…ッ…。』



藍ちゃんが事故に遭って、もしかしたらなんて最悪な事態を考えたくなくても考えちゃって。

眠りに落ち掛けていたドライバーの自動車は、藍ちゃんの数センチ前でブレーキを踏んだのだという。

不幸中の幸い、「打ち所が良く大怪我で済んだ」という知らせを受け病院へ向かった。



病院に着いた頃には手術が行われていて、しばらくして無事に終わって。

目を覚ました藍ちゃんを見て、思わず涙が零れ落ちて。



そして・・・

「好きだ」って、言ってくれた。



「っう…ぅう……ぐす…。」

「何で泣くの…?」

「だって嬉しいんだもーんッ!!!」



よしよし、と頭を撫でられる。

不意に藍ちゃんが顔を歪めて、脇腹を押さえた。



「せ…先生呼んでくる…ッ!」



それから、藍ちゃんの入院の手続きが行われた。



「何それ?」

「お守りです。藍ちゃんが早く退院できるように、作ったんです!」

「………………。」



あれ?嬉しくなかったのかな?と少し汗ばんだ私の手を藍ちゃんが握りしめて……顔を近付けたと思うと、そっと唇を重ねてキスをした。



「藍ちゃん…。」

「言ったでしょ、本番はいつかしてあげる…って。」

「…わ、私もっ藍ちゃんのことが…大好きです!!」

「っ!」



思い切って告ると、見たこともないくらい顔を赤らめた藍ちゃんがそこにいた。



「…優子、もう一度キスしてもいい?」

「っはい、…ん……。」

「ん…ちゅ…、…っ。」



私たちは、恋人になった。

もう引き返せない。

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