30.思わぬ知らせ


「強くなったんだな、お前。」



僕の中の暗闇で、もう1人の自分であるさっちゃんが言った。

…彼女は僕のことを軽蔑したりせず自ら寄ってきてくれた強い人。

だから、僕も強くなるって決めたんです。

いつか大切な人ができたとき、彼女みたいに傷つけたりしないように。

守れるように。



*****



パーティーが終わり、早くも年末。

藍ちゃんにキスされてから、しばらく経つけれどあれからお互いに連絡をとっていない。

一体、私たちってどうゆう関係なんだろう。

ハッキリと藍ちゃんに「好き」とか「付き合おう」とか言われていないから…友達以上恋人未満?

そんなことを考えていると携帯が震えた。

ー…美風 藍、と表示される。



「えぇっ!あ、ああ藍ちゃん!?」

「相変わらず元気だね、優子……良い子にしてた?」

「え、う、うん!」

「……、……本当に?」

「信用無いな私!!」



それから藍ちゃんは思い出したようにサラリと言い放った。



「今夜、会いに行くから。」

「え……。」

「…嬉しくない?」

「う、ううん!すごく…すごく嬉しいです。」

「そう。じゃあ待ってて。」

「…!」



電話越しにキスなんて…
そんなの反則だよ、藍ちゃん…。

21時頃にマンションに来る、と言われてリビングを大掃除。


それから、あっという間に約束の時間になった。

…けれど、藍ちゃんはまだ来ない。

予定より30分が経過し、さすがにちょっと心配になってきた。

仕事が長引いてるのかな…?


そして再び鳴る携帯電話に藍ちゃんかな、と思い手に取る。



しかし表示は知らない番号。



「……、…ぇ?」



それは、藍ちゃんが事故にあったという知らせだった。

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