23.言葉の違い


学園祭の後、一十木くんたちに誘われて先生たちに許可を得て教室で打ち上げをすることになった。

大勢でわいわいするのは楽しい。

ー…バンッ!

気分が盛り上がり課題のダンスをみんなと踊っていた翔くんとぶつかってしまった。



「わ、わりぃ…って、優子…。」

「ごめんね、翔くん。」

「あ…いや……それより、それ似合ってんな、…ドレス。」

「あっありがとう…でもちょっと恥ずかしいな、自分で作ったのって着たことないから……。」



そう照れ笑いを浮かべると、熱を帯びた翔くんの瞳と目が合う。

すると、スッと翔くんが手のひらを私に向ける。



「『…お手をどうぞ、お姫様。』」

「あ、舞台の……!」

「ほ、ほら、手…握れよ…。」



遠慮がちに手を重ねると、優しく握りかえされて、胸がドクンと高鳴った。

もし、手を握り返してくれたのが藍ちゃんだったら私はどんな顔していたのかな…。

そんなことを考えてエスコートをしてくれてる翔くんに失礼だと思い、私は差し出されたジュースを飲む。

あれ……なんか、目がクラクラしてきたかも。


ー…バタッ。

「優子っ!?」

教室に倒れ込んだ私は、そのまま意識を手放してしまった。

目が覚めたとき、私はマンションのリビングのソファーに寝かされていて、キッチンから声がする。



「ばか、お前は何入れてんだよ!」

「え?睡眠薬ですよ〜っ、優子ちゃんは睡眠不足なんです!」

「アホかーーッ!」



…翔くんと那月くんの声だ。

ということは2人が連れて来てくれたのかな?



「翔くん、那月くん…。」

「あっ、優子ちゃん、目が覚めたんですねっ!ふふ、寝起きも可愛いです。」

「お、おい!大丈夫か…?」

「うん、ありがとう2人とも。」



思った通り、翔くんたちは私をここまで運んでくれて夕飯まで作ってくれているとのこと。

2人にお礼を言ってご飯を口にしているとニコニコしながら那月くんが私に言った。



「…僕、優子ちゃんが大好きです!」



その時、私はいつも翔くんに言っている意味と同じだと思い軽く受け流して…



「私も那月くんのことは好きだよ。」



そう言ったことを、後悔することになる。


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