21.真斗くんのフリル


あれから約1ヶ月が過ぎ、学園祭も前日と迫っていた。



「うん、ぴったり!」

「良かったぁ…。」



出来たばかりの衣装に袖を通した音也くんを見てホッとため息を吐く。

音也くんたちが出る舞台衣装を私は任されていた。



「うん、俺様も気に入ったぜ!」

「翔くん、普段もお洒落だからそう言ってもらえて安心。」

「まあ、ファッションセンスには自信あるぜ〜。」



そんな話をしていると、今まで黙っていた真斗くんが顔を赤らめているのに気がついた。



「真斗くん?」

「七瀬、これは…その、いくら何でもフリルが多すぎやしないか。」

「いーじゃん!マサは女性役な訳だし、そのくらい大胆な方が面白いって!」



そう、音也くんの言うとおり、真斗くんは女性を演じることになっていたのだ。

夏の水球対決で負けてしまったAクラスは罰ゲームで女装をしたのだけれど、その中でも真斗くんの女装が高評価を得て…

今回の役も女装で出演ということになったのだと言う。



「真斗くんの女装姿、私は見てないから…つい張り切っちゃって。」

「……………。」

「ごめんね、作り直すね!」

「…いや、いい…。」

「「「え?」」」



私を含むその場にいた数人が真斗くんの言葉にポカンとする。

ついさっきまでフリル気にしてたのに、直さなくていい、なんて……。



「その…お前が期待をしてくれていると言うのなら、その期待に応えねば男の恥だからな。」

「………真斗くんって、言葉遣いが渋いよね?イイと思うよっ!」



私の言葉に、またも周りが「え?」というような顔をする。



「真斗くん、優しいから…きっとそうゆう話し方が似合うんだね。」

「…なっ!」

「舞台楽しみにしてるねっ。」



私が教室を出た後、

「天然って怖いよなー」という会話が繰り広げられているなんて、知るはずもない。

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