19.非科学的な現実


何がどうなっているのかわからず、あわあわする私に我慢できなくなった記者の女性がグイッと顔を近付けて言った。



「美風藍さんと同棲しているって、本当なんですかッ!?」

「え、あ、あのっ……。」

「お二人はどうゆうご関係でー?」

「どうなんですか!!」



ど、どうしよう…!!

とにかく藍ちゃんが今帰ってきたらマズいことになるよね。

め、メール!メールしなきゃ!



「……ぁ。」



携帯を持った手の動きが止まる。

・・・時、既に遅し。

振り返った先には手土産をたくさん抱えた藍ちゃんが立っていた。



「美風藍だ…!!」



1人の記者の声を合図に、その場にいた記者全員が凄い勢いで私たちを囲んだ。



「美風さん、彼女とはどうゆうご関係なんですか!?同棲してるって本当なんですかっ?!」

「お2人がこのマンションから出入りしてる、ってタレコミがあったんですよ!どうなんですか!」



藍ちゃんが口を開いたその時、



「その説明はミーがしまショー。」

「この声は……」

「うわあぁああッ?」



壁から出てきた社長に男性記者の1人が驚きの声を上げる。

早乙女さんはいつも人間離れした行動をするので、私たちは既に突っ込む気力を無くしていた。



「彼女、Miss七瀬は将来有望であるデザイナーの卵…そして今回の我が社主催のショーでMr.美風の衣装をデザインしマシター。」

「そういえば、美風さんの雰囲気とか今までとちょっと違ったかも…。」

「すごいな、あの子!」



ざわざわと記者たちの視線が私に移り、私は「あぁ、助かったんだ」と少し緊張がほぐれた。



「ってなワケでぇ、細かな打ち合わせまで頑張った彼らにはご褒美をあげまショー!」

「えっ!?」



ボスン、と何やら音がして視界が暗くなり体が宙に浮いた。

「何なんだ一体!?」と混乱する声が遠ざかっていった。


私は夢を見ているのだろうか。


不思議なことに眠ってしまっていて記憶が曖昧で、何も考えられない。

ただ一つ確かなことは、目の前に広がる青い海。



「起きた……?」



どこからどこまでが夢なのか。

ただ夢の中でさえも、どうしてそんな切ない顔をしてるの…藍ちゃん。


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