18.ファッションショー


音也くんの言葉が頭をぐるぐる。

モヤモヤとした気持ちのまま私は藍ちゃんがくれたチケットを手に会場への道を歩いていた。

今日はファッションショーの当日。



「恋愛禁止・・・か。」



悩む必要なんて、最初からないのに気付けば眉間にしわを寄せている。

藍ちゃんが好き。

ただそれだけ、進展なんて望んじゃいけない。

今ならきっとまだ間に合う、この気持ちにブレーキをかけられる。



「素敵………。」



ステージを堂々と歩く藍ちゃんは、どのモデルさんより綺麗だった。

白を基調とした衣装が藍ちゃんをより輝かせている。

涙が出そうになった。

ショーの後、スタッフさんに連れられ、楽屋へと向かうと腕組みをした藍ちゃんがそこにいた。



「どうだった?」

「藍ちゃんが一番…輝いてました。」

「当然でしょ。」



そうじゃなくて、と溜め息混じりに藍ちゃんが言う。



「デザイナーとして、何を感じた?」

「あ……。」



嬉しくて、嬉しくて、たまらなかったけど…他のデザイナーさんたちに比べたら改善点はまだまだある。



「悪くはないけど、今回のショーはまだ完璧じゃない……僕が言いたいことわかる?」

「えっと…はい……。」

「……期待、してるよ。」



思わず顔を上げると、少し顔の赤い藍ちゃんが私を真っ直ぐ見ていた。

お祝いにシュークリームを沢山買ってマンションへ戻った。

・・・のだけれど、とんでもない事態が起きた。



「……おい、誰か来たぞ!」

「女だ!女!カメラ回せ!」



それは何度かテレビで見たことのある光景だった。

複数のフラッシュ、マイクやボイスレコーダーを片手に詰め寄ってくる人たち。

・・・なにこれ。


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