17.わすれもの


夏休みが終わり、新学期に入ると学園祭の話でもちきり状態だ。



「どうせだからさ、こう派手な感じの衣装でさ〜…!!」

「おい優子、聞いてっか?」

「え?あ、ごめん…。」



興奮気味の音也くんのすぐ側で翔くんが私のボーッとする意識を戻してくれた。

いかんいかん・・・。

集中していないと、すぐ藍ちゃんのことを考えてしまう。



「で、衣装なんだけど…優子に頼んでも良いかなっ?」

「私でよければ、喜んで!」

「サンキューッ!…って、あぁ、ごめん!!」



そう言って、両手で包み込んだ私の右手を慌てて離した。

ちょっぴり心臓がドクンと跳ねた。



「気にしてないから大丈夫だよ!」

「……ははは、少し気にしてくれると嬉しいかな。」

「え?」

「うーうん、何でもないよ。」



じゃあよろしく、と爽やかに手を振って音也くんは教室を後にした。

「あ!」と翔くんの声。



「ったく音也のやつ、ピック忘れてんじゃん。」

「私、届けてくるよ!」

「そうか?じゃあ頼んだ。」



廊下を走って見つけた赤色。

力いっぱいに名前を呼ぶと太陽みたいな笑顔で振り向いてくれた。



「優子?どうかした?」

「これっ、お気に入り、だって…言ってたピック…教室に、忘れてたから……。」

「わあぁ、ありがとう!今無くしたと思ってちょー焦ってたんだ〜。」



お礼に、と音也くんに連れて来られたのは『さおとメイト』。

そこでたくさんお菓子を購入して、広場へと向かった。



「こんな沢山のお菓子…ピクニックみたい。ありがとう、音也くん!」

「っ…いや、こっちこそ……その、優子ってさ……笑うと破壊的に…」

「破壊的に…?」

「可愛い、な…って…。」



頬を真っ赤にする音也くん。

そして小さく呟いた。



「恋愛禁止令なんて、無ければいいのに………。」



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