9.放課後の教室
国語、数学、英語…いわゆる普通科目の筆記試験が終わったのだけれど、デザイナー志望の私には課題が残っていた。
「うーん…え〜っと…、あ!」
思い付いたことをメモる。
単に絵を描くときや、デザインをするときはいつもメモから生かせそうな部分を取り入れる。
今回の課題はとにかくデザインを描くこと!
「…頑張っているようですね。」
翔くんがよく飲んでいる缶ジュースを私に差し出して、トキヤくんが言った。
放課後の教室には私とトキヤくんの2人しかいない。
「ありがとう。今日だけじゃなくてこの間も!」
「礼には及びませんよ。…そのデザイン、見せて頂いても?」
「え、あ、どうぞ…!」
トキヤくんがデザイン画に目を通す。
本当にHAYATOにそっくり。
じっと見ていると、不意にトキヤくんと目が合う。
「…あ…、…。」
「いいですね、このデザイン。」
何度か見たことある優しい笑みを向けられ、思わず頬が赤くなった。
照れくさくなった私の視線は明後日の方向へさ迷う。
「おや、照れているんですか?」
「う、うんっ!」
「ははは、…全く君らしい。」
トキヤくんに別れを告げ、私もマンションへ帰ることにした。
画材を持っているため、リュックサックからカギを取り出すのは困難である。
藍ちゃんが今部屋にいるかわからないけれど、ダメ元でインターフォンを押す。
そしてガチャリ、とドアが開いたかと思えば・・・
藍ちゃんに抱きしめられた。
[ 9/53 ][*prev] [next#]
[しおりを挟む]