「で、誰がおれの女だって?」

「……ハッ!!」


クラッカーさんは楽しそうに首をかしげて、わたしの返事を促した。


「あの、あ〜、……それはですね、」

「………………」

「あの、あの時はそうでも言わないと海賊達にやられるかどうかの、状況でして……、仕方なく、」

「仕方無くおれの名を汚すような嘘を吐いたのかお前は」

「ごごっ、本当にごめんなさい!……ほんとに、クラッカーさんの名前を、汚すような嘘をついて…申し訳なく思ってます……」

「いくら状況が劣勢だったとはいえ、すぐバレるような嘘を吐くな」

「……はい、すみません」

「奴らの反感を買いこのザマだ。従っていれば今ほど痛い目を見なくとも済んだ……違うか」

「……はい、でも、」
 
「『でも』じゃない」
 
「……はい」

「この世界で弱者は強者にただ従うことだ」

「はい」

「そもそもお前の思考は手に取るように分かり易いのに見抜けない奴らも奴らだ」

「はい」

「……いっそなれば良い。おれの女に」

「はい」

「……おい」

「はい」

「#name#」

「はい」

「ほっぺを捻るぞ」

「はい…………イッひゃ!はにふるんですかっ」

「おれの話を聞いていれば回避できた」

「ふみまへん、聞いてはへんでいた」

「話したいことがたくさんある……これは誰の言葉だろうな」


ほっぺを摘まんでいた手が、今度はぺちん、ぺちんとリズムよく鳴らされる。


「ちょっと眠くなっちゃって……それにクラッカーさん小言言い始めたら長いから、つい」 

「小言だと…?おれはお前の為を思い言ってやっているのに…ッ、やっぱりお前はちっとも可愛くない!」

「んむ」
 

大きな手でほっぺを真ん中に寄せられた。


いけない。せっかくクラッカーさんとお話出来ているのにウトウトしてた。怒られて当然だ。


だって、ベッドに寝かされてる上に普段の調子なクラッカーさんの声が心地好くて、つい。


眉間に皺を寄せてじっ、と見つめてくるクラッカーさんからフイ〜と視線をさ迷わせる。手のひらに冷や汗が。


「………………」

「………………」


何だろうこの間。


………………気まずい。


気まずそうな顔をしたいのに、クラッカーさんの手がそれを許さない。


………………。


タコみたいになってるだろう自分の顔を想像してみた。


………………。


「ブッ!!!」

「ッ、お前!!」

「ごごごごめんなさいっ…!!」

2018/02/18 08:59


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