赤ずきんパロ-8話-




「…ん……っ」

ある程度構えていた狼でしたが、恐れていた程の激痛はなく、ゆっくりとミストレが中に入ってきます。
そこで狼は、先程までの行為はミストレがただ自分の身体を弄んでいたのではなく、挿入するまでの入念な準備をしていたのだと悟りました。

「は…っ…」

一つ吐息をつくと、受け入れている苦痛が幾分楽になります。
ですが、下腹部に強烈な違和感があるのは否めません。

「大丈夫?」

見下ろすミストレの表情も少し苦し気です。狼が強い圧迫感を感じている分、ミストレもまた、きつい狼の中に締め付けられていました。

「大丈夫…だ…」

狼は努めて冷静な声色で応えます。本当は、逃げ出したい気持ちもありました。
しかしこれ以上情けないところは見られたくない気持ちの方が勝ります。
そんな狼の精一杯の虚勢に、ミストレの口は弧を描きました。

「君の中、すごく熱くてきつい…」

汗で額に張り付いた前髪を掻き分け、ミストレが耳元で囁きます。
その仕草が妙に色っぽく、狼は思わず目線を逸らしました。

「動くよ…」
「んっ……」

ゆるゆるとした抽挿に、狼は必死に呼吸を合わせます。

――ミストレが自分の中にいる。こんな風に誰かの体温を感じたのはいつぶりだろう。

狼にとって、信じがたい出来事も、その証拠が熱い脈動を伝え、痛い程の存在感を示します。
狼はミストレの体温を直に感じながら、必死に背中に腕を回しました。

「あ…っ」

奥まで突かれ、押し寄せる快感に狼は小さく喘ぎます。
はぁはぁと浅い呼吸を繰り返しながら、とまどった拍子に、再度突かれた箇所から背筋まで突き抜けるような強い快感が走りました。

「ああっ…!」
「ここが、いいんだ?」

答える前に再び突き上げられ、そのままどんどん抽挿が激しくなります。
もはや狼は置いていかれないように必死にしがみつく他ありません。

「う…あっ…あ、ひああっ!」

ミストレの激しい律動に、狼は叫ぶように喘ぎました。

「ねぇ…っ、俺のこと好きになってくれた?」
「……あっ…ああっ…!」
「好きって言ってよ」
「ああっ!好き…ぃっ!好…きぃ…はぁっ…!」

壮絶な快感に、狼は形振りかまわず、髪を振り乱して叫びます。
すると視界が白くなり、すぐに腹部に濡れた感触が伝わりました。
そしてミストレもそのまま数回、深く突き入れると、狼の腹の中に熱いものを放ちました。


「「はぁっ…はぁ…」」

二人分の呼吸が薄暗い室内に響き渡ります。
ミストレは狼を固く抱きしめたまましばらく荒い呼吸を整えるように、じっとしていました。
狼も同じく呼吸を整えながら、ミストレの体温に包まれ、白いぼんやりとした世界と現実の狭間をさ迷います。

「…俺も好きだよ、エスカ」

ミストレが囁いた二度目愛の言葉は現実なのか、それとも夢なのか。
今の狼に、それを判断出来るほどの思考は持ち合わせていませんでした。
しかし、呼ばれ慣れていない名前も不思議と何の違和感もなく狼の心にすうっと溶け込んでいったことだけは否定出来ない事実として心で感じとります。

狼は中にまだミストレがいることを感じなから、そのまま引きずり込まれるように、意識を失いました。


***

続きます




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