赤ずきんパロ



ミストレ…赤ずきん
エスカバ…狼
ヒビキ…おじいさん
R18予定
半獣化注意!

***


昔々あるところに、花のように美しく、しかしの鬼のように強い、一人の美少年がいました。
少年の名前はミストレーネ・カルス。
彼はいつも赤い頭巾を被っていることから、幼少時は親しみを込めて赤ずきんちゃんと呼ばれていました。
ですが成長と共に美しさに磨きをかけていったミストレ。今や真っ赤な頭巾もその美貌に霞み、村人は皆ミストレ様と呼んでいます。ちゃん付けなんて恐れ多いのです。

ミストレはその風貌と、数々の戦闘で作り上げた実績から、村で一番の人気者であり、また村の誰よりも頼りにされていました。
そして今日も今日とて、ミストレの元に悩みを抱えた村人がやって来たのです。

「ミストレ様、麓(ふもと)に住んでいるヒビキさんが足を捻挫して買い出しに行けないそうなんです。この小麦粉を彼の家まで届けてくれませんか?」
「別にいいよ」

ミストレの元に頼み事にやって来たのは、隣りに住むバウゼン爺さん。麓の村でラーメン屋を営んでいるヒビキ爺さんのところへお使いのお願いのようです。
この村から麓の村は、人食い狼や人食い熊、あとカッパも出没するという大変危険な道で結ばれています。ミストレ以外の村人は誰も近づけません。
ですが、ミストレにとっては通い慣れた道であったので、二つ返事で承諾したのでした。





(ヒビキ爺さんにラーメン奢って貰お〜)

西日が眩しい夕刻時、夕飯の時間帯にラーメンにありつくべく、ミストレは出発しました。
村人は誰もが寄り付かない道でしたが、麓までの道には所々花畑が広がっており、美しいものが大好きなミストレは上機嫌でした。
暫く花畑を眺めながら、軽い足取りで歩みを進めていたミストレは、ふと立ち止まります。
怪我人の元にお使いを頼まれたというのに、お見舞いの品を持っていないことに気いたのです。
小麦粉を届ける代理の立場でしたが、体裁を気にするミストレは道に沿って広がっていた花畑に入り、お見舞いに花束を渡すべく花を摘み出しました。


「おい、お前」
「ごめんね、ナンパはお断りだよ」

ミストレが一生懸命花を摘んでいると、後ろから若い少年の声がかかりました。
ですが、ミストレはナンパをするような男に興味がないので見向きもしません。

「はっ!?違ーよ!」

ナンパをされ慣れていたミストレは冷たくあしらいましたが、次に背中に浴びせられたのは予想外の一言でした。
ミストレは思わず振り返ります。

「え?オレのような美形を目の前にしてナンパしないとか君の目は節穴?」
「お前、相当自意識過剰な野郎だな」

聞き捨てならない言葉が耳に届き、ミストレは目の前の男を睨み上げます。

(ん?男…?)

しかしミストレが睨みつけた男の頭には、黒くて大きな獣のような耳、下半身にも同じ毛色の大きな尻尾が付いていました。

「……てか君何者?」
「見りゃ分かるだろ」

そう言われてまじまじと目の前の男を眺めるミストレ。暫く考えていたようでしたが、頬にある黒い模様を見て閃きました。

「ああ、何だアライグマか」
「アライグマじゃねえええ!俺は狼だ!」

目の前の人型狼が声を荒げて叫びます。
普通だったら恐れ戦くところですが、ミストレは恐れるどころか口元に笑みを浮かべました。

「ふーん…。で、狼さんがオレに何の用?」
「お前を食うために話し掛けたんだよ!」

そう言って、勢いよく襲い掛かる狼。
ですが次の瞬間には、視界が逆転し、自分が下に組み敷かれていました。

「……あれ?」
「あんまり人間ナメんじゃないよ」

夕日を背にしたミストレが不敵に笑います。
まさかの狼が絶体絶命です。


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