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彼女からの電話を待ちわびて、数時間。
何をするにも気が気じゃなかった。
どんな声をしているんだろうとか、どんな気持ちであの写真を撮ったんだろうとか、考えると止まらなくて。
でも頭の片隅にはいつ着信が鳴ってもいいように、スタンバイしている僕がいる。

なんだかくすぐったいな。
自嘲気味に笑みをこぼすと、それに反応したかのように携帯が鳴った。
表示されたのは知らない番号。
きっと、彼女だ・・・。

小さく深呼吸をして、ボタンを押した。
「不二です」
「あ・・・。あの・・・」
聞こえてきたのは、とても繊細で優しい声だった。
「佐々部の姪ですが、おじさんに電話するように言われて・・・」
胸が高鳴るのをはっきりと感じた。
耳元で彼女の声がこだまする。
「えっと・・・。不二さん、聞こえてますか?」
ハッと我に返り、返事をした。
「すみません。あなたの声があまりにも可愛らしかったので」
「えっ!!!」
電話越しに戸惑いが見て取れた。
想像以上に素敵な人のようで、自然と笑顔になる。
「ふふ。すぐに僕からかけなおします。電話してくれてありがとう」
「いいえ・・・」

宣言通りかけなおして、ほんの少し話をした。
あの藤の写真に一目惚れしたこと、ぜひ会ってみたいと思ったこと。
それらを素直に伝えると、彼女は照れた様にありがとうと言った。
そして、少しためらいがちに「会うことはできない」と続いた。
思わずくじけそうになった。
だけど、ここで諦めたら二度と彼女と関われない予感がして、気が付くとまた電話をしてもいいかと聞いていた。

答えはイエス。
僕は安堵した。
ただ、電話を切った後にひとつだけ後悔したことがある。

彼女はなんて名前なんだろう。

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