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「佐々部さん!カウンター席の壁に飾られている藤の写真!作者は分かりませんか!」
「えっ?ああ、あれか」
姪のだよ、彼はそうつぶやいた。
「不二くんと一緒で写真が趣味なんだよ。ほら、来週も写真展開くし、作品がないと困るからね。だけど姪は恥ずかしがり屋で、あの藤の花しか借りられなかったけど」
「そうですか・・・」

一瞬で魅せられた。
光と雫が互いにきらめきあい、淡い紫色を引き立たせている。
自然の雄大さ、柔らかさ、繊細さ。
それが、あの小さな景色に凝縮されている。
圧倒されたと同時に、心を奪われたんだ。

「あの・・・会うことはできませんか?」
「姪にかい?」
「ええ・・・」
佐々部さんはうーんと唸りながら、腕を組んだ。
その様子から察するに難しそうだ。
「無理ならいいんです。すみませんでした」
「いや!会うことは難しいかもしれないが、電話くらいならいいかもしれない。俺から姪に連絡してみるよ。今晩にでも不二くんの携帯に電話するよう言うから」
一気に嬉しさがこみ上げてきた。
今までたくさんの写真を見てきたけれど、これほどまでに作者に興味を抱いたことはない。
僕は佐々部さんに深くお礼を言い、帰路についた。

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