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毎週日曜日は写真の日。
愛用のカメラでいろいろな風景を撮影しながら、馴染みのギャラリーへと向かう。
今日はどんな写真と出会えるだろうか。
自分自身には決して生み出せない、作品の数々。
考えただけで胸が膨らみ、足取りも軽い。

町はずれのギャラリーへと到着すると、オーナーの佐々部さんが真っ先に声をかけてきた。
「不二くんいらっしゃい。今日も爽やかだねぇ!」
彼はその巨体を揺らしながら笑い、すぐに肩を落とした。
「どうかしたんですか?」
「実は・・・」
僕はふと、違和感を感じて辺りを見回す。
いつもそこそこ人で賑わっている店内は、しんと静まり返っていた。
「誰もいませんね。それに・・・」
写真が1枚もない。
「参っちゃうよなぁ。有名な写真家の大先生が個展開きたいって言うから、場所を提供したのに。今日になってキャンセルだよ」
「それは残念です」
「まあ、キャンセル料はたんまりもらうけどね」
佐々部さんはふざけた様子でそう言って、奥の休憩室へと入って行った。

しょうがない、帰ろう。
振り返り扉に手をかけたそのとき、僕は息をのんだ。
視界の端に映った小さな写真。
紫色の花が、額縁の中に収まっていた。

これは、藤・・・?
僕は思わず休憩室へと駆け込んだ。

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