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ストーカーは自分の部屋から醤油を取ってきて、肉じゃがを完成させた。
その間私は、正座をしておとなしく待っていた。
少しでも動こうものなら、やつの手に握られた包丁が嫌な光り方をするのだ。

「さあ、どうぞ」
テーブルにずらりと並べられた美味しそうな和食に、目が釘付けになった。
これ全部ストーカーが?
私より確実に料理上手だ・・・。
途端に空腹を感じてがっつきそうになる。
待て、待つんだ自分。
変な薬が入っていないとも言い切れない。

私が黙っていると、ストーカーは、いただきますと手を合わせた。
「心配しなくても大丈夫だよ」
くすくすと笑って焼き魚に手を付ける。
一口、また一口と食べ進める。
「早くしないと全部食べちゃうよ?」
私の肉じゃがに伸ばされた箸を、とっさに手刀で叩き落とす。
「あ・・・ごめんなさい」
「ふふ、食べてごらんよ」
小さくいただきますをして、肉じゃがを口に運んだ。
それはどこか懐かしいような、少し泣きたくなるような。
たくさんの真心がこもっている味だった。

「・・・おいしい」
「よかった」
にっこりと微笑んだストーカーに鼓動が速くなる。
ほんのちょっとだけ、胃袋を掴まれた気分が分かった気がした。

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