「実はね、姪のことなんだよ」衝撃が走った。「自分の名前が広く知られていることが嫌なんだろう。あいつは自分から名乗らないんだよ」「そうなんですか・・・」きっと、僕は薄々感じていたんだ。彼女が遠い存在だってことに。「少し、話をしていいかな?」彼はコーヒーを手渡しながら言った。「ええ」返事をしてからカップに口をつける。酸味の強いものだった。「あれは、もう5年も前になるのか――」prev nextback