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翌日、部活を抜け出したことを手塚に怒られた。
罰としてトレーニングが3倍になった。
何も考えたくないから、ちょうどいいや。

それでも、約束の日は来る。

出来上がった写真を手に、とぼとぼとギャラリーへ向かう。
小さく収まった被写体を見つめると、チクリと胸が痛んだ。
勝手に撮ってしまった罪悪感。
追いかけられなかった失望感。
関係が途切れた孤独感。
ぐじゃぐじゃな感情を押し殺して、歩みを早める。

「close」のプレートがかかった扉をノックすると、佐々部さんが出迎えてくれた。
「待ってたよ!」
「お誘いありがとうございます」
お礼を言い、勧められた椅子に腰かける。
「早速力作を拝見しようかな!」
上機嫌な彼にためらいながらも、写真を手渡す。
「実は・・・たまたま彼女がいて。気が付いたときにはシャッターを切っていて・・・」
「そうかい」
やけにあっさりした反応の彼に面食らう。
「この写真の子は、やっぱり姪御さんなんですね?」
佐々部さんはにやりと笑うと、大きくうなづいた。
「姪の名前は聞いたかい?」
「いいえ・・・」
「そうか・・・。名字名前という名前は、聞いたことあるかな?」
名字名前。
確か僕と同じ年の天才写真家だ。
早くからその才能を発揮していたけれど、スランプで潰れてしまったと聞いたことがある。

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