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ライトアップされた藤に近づく人影。
その顔がはっきりと照らされた。
寂しげな瞳でその花に触れる。
慈しむように、だけどどこかためらいがちに。
これは、夢だろうか。
僕はこの一瞬を逃すまいと、半ば反射的にシャッターを切った。

カシャッという音が静寂に響き、彼女は僕の方を見た。
「あ・・・」
つぶやいたその声は、紛れもなく名前も知らない君で。
だけど、はじかれたように目の前の彼女は立ち去って行く。
追いかけようにも一歩が踏み出せない。

僕には、呼び止める術はなかったんだ。

その後何度も電話をしたけれど、繋がることはなかった。

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