スザクのイケない!?○○指導 (4/5)

 「興奮? あの程度で? 俺が? 巫山戯るなっ!!」

突然怒鳴り出すスザク。

 これには全員呆気の取られて彼の方を注視した。

 「だいたい、君達はAVの何たるかを全く理解していない!!」

暑苦しく語り出すスザクに、AVなんぞ所詮ただのおかずだと言える勇者はこの場にはいなかった。ただ唖然と、ゼロでも出てきたかのような彼の豹変振りを見守るだけである。

 「まず、ルルーシュ!!」

最初に矛先が向けられたのはルルーシュだった。

「なんだ、あの糞ビデオは!! 見損なったよ、ルルーシュ」

「何だと!? 幼馴染みものの何がいけない!! 最高じゃないか、幼馴染み」

ルルーシュはさり気なく、自分のスザクへの想いをアピールしてみる。だが、そんなものが彼に通じるわけはなかった。

「幼馴染みは構わないよ。萌え要素としてはポピュラーな部類だ。でも、その設定が全然生かせてないじゃないか。再会して急にヤり始めたかと思ったら、いつの間にか主従関係? そんな都合のいい話があるわけじゃないじゃないか。そこに何の葛藤も、愛情も感じられない」

「くっ…確かに……」

言われてみればルルーシュにもそんな気がする。

 スザクが用意したAVでは、主人公の少女が男に躯を許すまでに葛藤や愛情の芽生えがきちんと表現されていた。だからこそ、結果的に色んな男性と寝る主人公がただの淫乱になり果てない。ルルーシュに反論の言葉はなかった。

 「あんなヤってるだけのくだらないAV。そんなものばかり見てるから、君はいつまで経っても童貞なんだ」

冷たい口調でスザクに止めを刺され、ルルーシュは床に突っ伏した。何事かぶつぶつと言いながら涙を流すその姿は、リフレイン患者より危ない気がする。

 ロロがルルーシュをフォローしようと駆け寄ったが、フォローの言葉が浮かばずにオロオロしていた。

 「次にジノ!!」

「何だよ、スザク。スザクが全然私に構ってくれないのが、悪いんじゃないか。でなかったら、私だってあんな偽物で抜いたりなんか…」

ジノが後ろめたそうに言い訳するのに、スザクが大きな溜息を重ねる。

「別にこの際、僕のそっくりさんものだっていうのはどうでもいいんだよ。問題はその設定を生かしきれているかだ。あんな部下や同僚とやってるだけなら、僕である意味がどこにあるんだ?」

「だって、スザク可愛いし……」

「実物じゃないだろ。っていうか、ああいうのは容姿じゃなくてシチュエーションに萌えるんだよ、シチュエーションに。せっかく皇帝陛下の騎士なんだから、陛下の命令で見世物として部下とさせられて…とか。イレブンだからと同僚とは名ばかりの便器扱いとか。色々あるだろ、生かせる設定が!!」

「何!? スザク、お前軍でそんな酷い目に遭っているのか!?」

「現実と妄想を履き違えるなよ、童貞」

あまりのショックに復活したルルーシュ。だが、スザクの一言ですぐに二度目の撃沈。

 スザクのあまりに自虐的な発言にジノすらも茫然としている。だがスザクの方に自覚はないらしい。更に熱弁を続ける。

 「だいたいあの俳優、髪と目の色が僕と似てるだけで、明らかにブリタニア人じゃないかっ!!」

「別にそんなの、スザクに似てればどっちでもいいじゃないか…」

流石にジノが選んだものだけあって、主演俳優はブリタニア人とはいえ面立ちはスザクに似ている。

「君は知らないのか!? ブリタニアで“大和美人”とかいうタイトルのAVを見つけて日本人だと期待して見たら、着物を着た金髪ビッチが出てきて“ファックミー”って言った時の、あの失望感を!!」

知るわけがない。というか、そんなことがあったのか。

 「じゃあ、スザクが私の相手をしてくれよ。そしたら私はAVなんか見ないから」

めげずにスザクに抱きつくジノだが、スザクの鮮やかな背負い投げで床に叩きつけられる。その拍子にルルーシュの本棚にジノの足がぶつかり、本棚の本と一緒にスザクの隠し撮り写真が大量に落ちてきたのはこの際置いておこう。

「こんなAVで抜けるぐらいなら僕がわざわざ相手をしてやる必要はないだろ、駄犬」

冷たく言い放たれて、ジノも撃沈した。


 「で、次はロロだけど…」

ロロは兄の介抱をしながら、とうとう自分の番が来てしまったと肩を震えさせた。いっそギアスを使って逃げるべきかとすら思えてくる。

 ところがスザクは先程の二人の時とは打って変わって、ロロに向かってニッコリと微笑んだ。兄一筋のロロだが、あまりに可憐なその笑顔に思わず顔が赤くなる。

「ロロのは、なかなかよかったよ。ストーリーもしっかりしていたし、兄弟ならではの禁断がちゃんと表現できていたし…」

ロロはホッとして体の力が抜けた。スザクの優しい笑顔が妙に眩しく、胸がドキドキする。

「惜しむらくは、せっかくの学ランを脱がして濡れ場をしちゃったところかな。せっかく学生なんだし、脱がせちゃったら勿体ないよ」

批評する口調も穏やかだ。

「君はなかなか見込みがあるよ。よかったら、僕と一緒にお勉強しようか?」

 なんだと!? スザクとイケナイお勉強!?

ルルーシュとジノがスザクの言葉に思わず起き上がってくる。だがスザクは二人など眼中にない様子でロロに歩み寄り、彼の頭を撫でた。

「スザクさん……」

「大丈夫。安心して? 優しく教えてあげるから」

スザクの甘い声に誘われて、ロロは思わずうっとりと頷いてしまった。後ろで彼の最愛の兄やどうでもいい犬が抗議の声を上げているが、今のロロにはスザクしか目に入らない。瞳を潤ませて、一心にスザクを見上げていた。

「ご指導、宜しくお願いします」

「うん、任せて。手取り足取り教えてあげるから」

一体何を手取り足取りご指導するのか。スザク曰く見込みのない二人を置いて、スザクとロロが親密な関係を築くことになったとかならなかったとか。

 END


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