神の愛、人の愛 4 (1/4)

 暗い森の中、唯一開けた場所にある小高い丘。周囲を木々の濃緑色で隠された中、そこだけまるで別の世界のように日の光が降り注ぎ、淡い色の花々が咲き乱れている。その丘の頂に、丸い小さな墓石が立っている。綺麗に磨かれた白く滑らかなその石には、何も刻まれていない。ただ、墓石の周りは鮮やかな薄紅の薔薇が花開いており、それを取り囲むように霞草が丘を覆う白い絨毯を形作っていた。遠目にみると、丘そのものが一つの花束のように見える。名を刻まれぬ墓石の下に眠る誰かへの手向けの花束。
 その丘を一人で作り上げたスザクにも、自分がどういうつもりだったか明確に思い出せない。ただひたすらに彼女の笑顔を思い浮かべ、一心不乱に苗を植え続けた。苗は彼女の姉君が用意してくれたものだ。どんな花が咲くのかも知らぬままに植えたスザクだったが、花が咲いたのを見たときは本当に彼女そのものだと涙が零れた。姉君がいかに彼女を大切に思っていたかを如実に表しているその花々は、見る度に彼女の優しく可憐な微笑みを思い起こさせる。そして、それと同時にあの時の絶望が鮮明に蘇った。


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