07






いつも来ている仲良しグループに、ライナーとベルトルトくんが加わっている。
珍しい光景だ。
話している感じから見るに、元々友人なのだろう。
たしかあの制服は、また別の高校だったはず。
昔からの仲で、久しぶりに鉢合わせて話しているといったところだろうか。
黒髪の少年、金髪童顔の少年、黒髪の女の子。
三人でよくここに来ている。
名前も聞いたことがあるはずなのだが、ぱっと出てこない。
仕事はあるが、暇な時はとても暇なのだ。
気になる人の名前や、いつも来る人の顔くらいはすぐに覚えられる。
もっとも、それは私の癖であって、そんな癖があるからライナーのことをすぐに覚えた。
金髪で童顔の少年は、一人でもよくここに来ている。
本が好きなのだろうか。
いつかあの少年とも話してみたい。
ライナーと、黒髪の少年と金髪の童顔の少年が気兼ねなく話している。
とても学生らしい光景だ。
しかし、その光景を見ているベルトルトくんが、なんだか落ち着かない様子だ。
黒髪の少年と話しているライナーを、今にも引きずって連れ去りそうな雰囲気を醸し出している。
友情ゆえの嫉妬、としか思い浮かばない。
物静かに本を読みながらノートを作っている女の子は、ずっと黒髪の少年に寄り添っている。
付き合っているのだろうか?
それにしては、黒髪の少年は女の子に構っていない。
幼馴染か、何かだろう。
よく見ると黒髪の女の子は、端正な顔立ちに随分と綺麗な黒髪をしている。
見た目からして、優等生ちゃんだ。
図書館ではお静かに、なんて言うけれど、人の少ない時間帯の図書館ほど喋りやすい空間はない。
黒髪の少年が、すこし大きな声を出したので、視線でたしなめると、すっと静かになった。
女の子は相変わらず本とノートで手元を動かしている。
この女の子のことがとても気になるけれど、他人の詮索はよくない。
引かれるようにライナーと視線が合ったけれど、にこやかに笑うことにして、すぐに視線を反らした。

「さっきの子達、友達?」
帰り道、話題を繋ごうと振ってみた疑問に、ライナーはなんなく答えた。
「ああ。中学が一緒だった。」
同窓の友人と、別々に進学しても仲がいいというのは微笑ましい。
友人とだいぶ連絡をとっていない、そう思いながらも羨ましく感じた。
「いいわね、そういうの」
私のその言葉を聞いて、ライナーがふと私を見下ろす。
歩幅は明らかにライナーのほうが大きいので、私は小走りでついていく。
制服を着た人に見下ろされるとは、なんとも不思議な気分だ。
「学校ねえ、私は特に面白いことも悪いこともなかったかな」
「平凡ってことか?」
「そうじゃなきゃ司書なんかしてないわ」
まるで真面目にしかなれない職業、と言う口振りになってしまった。
皮肉をすこしだけ込めたことを言う時は、どうしても悪戯っぽく笑ってしまう。
それはきっと、相手がライナーだからであって、他の人にはしない。
心を許したときに皮肉な面を見せようとする、そんな部分が自分にある気がした。
悪戯っぽい笑みを浮かべた私を見たあと、ライナーが気づいたように呟く。
「あ、再来週の水曜、休みだ。」
「ああ、祝日ね、そういえば」
信号で立ち止まり、道行く車を眺める。
赤から青に変わるだけでルールが変わることができる世の中なのに、複雑なことは沢山存在する。
それも含めて、難しいことと簡単なことの区別なんて曖昧なのだ。
「なまえさん、暇ならどこか行くか?」
ライナーの提案に心躍ると同時に、敬語をようやく使わなくなったことに気がついた。
距離が、もっと縮まったように感じる。
「そうね、時間があるなら映画館がいいわ」
私の提案に、いいなと言って笑ったライナーは、相も変わらず大人びていた。







2013.08.03

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