06





毎週金曜、次の日は土曜日だから遅く帰っても大丈夫。
その決まりごとを聞いたのが、約三週間前。
その三週間の間、詳しく言えば一週間前に関係が激変した。
図書館でたまに会えば、人目を盗んでキスをする。
古書の匂いの中でキスをすると、脳がくらくらして気持ちいい。
家に来れば、セックスをする。
少しずつ手馴れてきたライナーと一緒に、気持ちよくなっている。
そんな関係になっていた。
ライナーは、この関係をただの遊びだと思っているのか、本気なのか、わからない。
少なくとも私は、ライナーが強い興味の対象だ。
つまり、恋愛感情を抱いている。
いつだかに読んだ少年愛だかの本の内容は忘れることにした。
ライナーは、逞しくて、筋肉が凄くて、大人びていて、私からしたら大人に見える。
そんな子を子供扱いするほうが、失礼なのだ。
そして、金曜。
ライナーは友人であるベルトルトくんを連れて図書館に来た。
いつ見ても、あの子は背が高い。
ライナーよりも高いんじゃないか。
物腰柔らかそうな仕草と笑顔に、可愛らしいと思ってしまった。
年齢をすこしだけ重ねて、十代の魅力も分かるようになったのだろうか。
そう思いたい。
本をいくつか持ったライナーとベルトルトが、貸し出し受付まできた。
私はそっと受付をして、返却期日を告げる。
これが仕事なのだが、相手はライナー。
赤面してしまう。
ちらり、とライナーを見ると、ライナーも照れくさそうに笑っていた。
あっさりと、ライナーはベルトルトに私を紹介し始めた。
「なまえさんだ。」
「うん、知ってる。この前ペンケースのことで話したよ。」
「そうなのか?」
「そうだよ、ここにペンケースを忘れたから、届けてくれって。」
「ああ、そうだな、ここに忘れた。」
私は二人の会話を聞き流していたが、安心した。
ライナーは無事、私とライナーの関係がばれないようにかわしてくれた。
そう思った。
「次からは、忘れ物しないで頂戴ね」
「わかってますよ、司書さん。」
ライナーがわざとらしく敬礼すると、ベルトルトくんが笑い出した。
この雰囲気の子なのに笑うなんて珍しいな、と思ったけれど、この子も十代だろう。
そんな時期があってもいい。
「また来てね、おすすめの本があったら、紹介するわ」
私の言葉に対し、ベルトルトくんはにこやかに笑った。
「ありがとう、なまえさん。」
ライナーに、こんな友達がいるとは思わなかった。
孤独を貫くタイプではなさそうだと思っていたけれど、ジョック系なのに大人しめの子と仲良くなっている。
非常に珍しい交友関係だと思った。
司書の仕事を終わらせるまで、最低でも17時までは拘束だ。
それでも、ライナーは図書館の入り口で待っててくれる。
気遣いというよりは、見た目の割りに人を気にするんだとしか思わなかった。
私を見ると、ふっと微笑んでくれる。
嬉しかった。
17時半には喫茶店で茶葉とお菓子を買って、帰宅する。
ご飯を食べて、シャワーに入ったり着替えたりして生活感まるだしのことをしたあと、抱き合う。
こういう関係になってから、下着はパンツのみにして寝巻きを着ている。
無論、揉みやすいように、だ。
迫ってくるのは、ライナーのほう。
覆いかぶさり、胸を揉みながら腰を振るのが好きらしく、その体位でよく責めてくる。
慣れとは恐ろしいもので、ライナーとのセックスで自分でも驚くような喘ぎ声が出るようになった。
あんあん、ではなく、ああ、はあ、うっ、のような、吐き出す声。
気持ちいいとこうなるんだな、と思った。
私が思考回路を巡らせてる間に、ライナーが膣からペニスを引き抜き、体勢を変えた。
私が横になり、足をそのまま広げる形になった。
恥ずかしい、そう思ったけれど、濡れたそこに挿入されて刺激されて感じるのは容易だった。
きっと、誰かが見たら、ものすごく卑猥な体位をしていると思う。
私が刺激に耐えかねて、目を伏せて喘いでいると、ライナーが声をかけた。
「なまえさん、わかる?ぬちぬち音が出てるぜ。」
「わ、かる・・・」
「足おっぴろげて、厭らしいな。」
「や、恥ずかしい、だめ」
ライナーは私のお尻を鷲づかみにして、これでもかというくらい腰を打ち付けてきた。
激しさに、体が揺れる。
「なまえさん、なまえさん、俺、なまえさんがっ・・・」
そこまで言うと、私の中で射精した。
疲れ果て、だらんとした私を見て、そっと隣に寝転んだライナーの顔を見るだけでも、胸がときめいた。
「痛かったりしたか?」
「ううん」
「俺、あんまり抑えきかなくって、痛かったりしたら言ってくれよな。」
「わかった」
今にも寝そうな私の頬を撫でるライナーの手の暖かさに、眠ってしまいそうだった。
その手から、すこしばかり愛液の匂いがする。
気だるい雰囲気と、淫猥な気分の融合。
基本的にその二つがないと、だらしなく快楽を求めるセックスは成立しない。
たまにはいいだろう、本能のままにしても。






2013.08.03

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