生酔いの触感


土方さんが「貰った。」と言って持ってきた大量のビールに一番最初に飛びついたのは、牛山さん。
次いで夏太郎くん、キラウシさんだったと記憶している。
酒の席が始まる予感がして、私は風呂へと足を運んだ。
楽しそうな声を聞きながら湯を浴びるつもりが、一刻も経過せずキラウシさんの怒鳴り声のあとに牛山さんの爆笑が聞こえた。
合間に何かが割れる音がして、風呂から急いで上がる。
浴衣を着る頃には永倉さんの叫び声が聞こえ、この事態を見逃していたことを悔いながら向かった。


廊下で寝る尾形さんと有古くんを跨いで、座敷に入った。
火鉢の近くで倒れるキラウシさんの足元で座布団を抱いた夏太郎くんが寝ている。
鍋の周りにいるのは、ビールを飲む門倉さん、牛山さん、都丹さん、土方さん。
半分以上残った鴨鍋の周りにはビール瓶が散らばり、騒ぎの名残が残る。
「いやね?俺はね、ちょっと煽っただけっていうか…。」
ビールを飲みながら言い訳する門倉さんを、都丹さんが笑いながら諫めた。
「あれはちょっとじゃねえだろ。」
いつもより顔が赤い都丹さんを珍しく思いながら、壁に向かって投げられたビール瓶を見つめる。
「門倉が歌いながら尾形に飲ませたのを皮切りに全員飲み始めて、この有様よ。」
牛山さんが爆睡する夏太郎くんを見て、また一口ビールを飲む。
起きている中では一番酔いが回っているのか、牛山さんの目元は眠そうだ。
尾形さんのいる方向から鳴き声のような寝言が聴こえて、門倉さんが笑う。

「なまえも飲め飲め。」
元凶の門倉さんは酔いながら、私にまで酒を勧めた。
久しぶりの酒、飲まずにはいられない。
ビールを受け取って、一口飲む。
「皆さん強いのね」
門倉さんと都丹さんは頬が赤いだけで、けろっとしている。
「東北もんは滅多に飲まれねえ。」
都丹さんがそう言うのだから、間違いないのだろう。

「門倉さん、何を歌ったんですか?」
「口をつけた酒は息継ぎせずに一気に飲み干せ〜酒を飲め〜っていう内容の歌。」
「そのままじゃないですか」
たしか、門倉さんは青森の出身。
知見が浅くとも、酒豪の名産地であることは察せた。
後ろのほうで「永倉ァ…おぁ…ん……すまない…。」と呻く尾形さんの声がして、気づく。永倉さんの姿が見えない。
「あの、永倉さんは?」
「呆れて寝ちまったよ。おかげで一人分の酒が余った。」
楽しそうに言う牛山さんを見た土方さんが「茶漬けを作ってくる。」と言い残し、部屋を後にした。
酒が回って、世界がまどろむ。
先に風呂に入っててよかった、もし眠っても布団で眠ればいい。
門倉さんが「監獄にいたときも正月の餅つきがあってよ、岩息って囚人が調子いい時期と被るんだ。」と言うのを聞いてから、ビールをまた一口飲んだ。





「それでねー!かんたろくんが!」
隣にいる都丹さんの肩を揺らしながら、笑って話す。
つられて笑っている門倉さんが、お椀をひっくり返して牛山さんに羽交い締めにされた。
楽しそうな悲鳴を聞きながらお茶漬けを食べる土方さんを横に、ビールをまた一口。
しゅわしゅわした飲み心地と、独特の味。
何でもかんでも話したくなる気分になった私を、都丹さんが支えてくれた。
「お前さっきから夏太郎の話しかしてねえな。」
「だってー面白いもん」
「さっきの『餌と間違えて永倉の爺さんの塩を食べた』って話は面白かったわ、オレも見たら笑ってた。」
都丹さんらしい返事に、私が大声で笑う。
廊下から見える有古くんの足がびくりと動くのが見えて、どれくらい時間が経過したか分からないことに気付いた。
まあいいか、何時でも。
都丹さんの肩に寄りかかって、思い出し笑いをしながら鴨鍋をつつく。
お椀を持つ手にも熱が集まってきて、酔っていると自覚する。
牛山さんの羽交い締めから解放された門倉さんが、お椀の中身を片付けながら私を伺ってくれた。
「つーか、都丹となまえってわりと一緒にいるよな。」
当たり前でしょ、私と都丹さんは好き同士なんだもの。
「うん、いるよー」
「オレはこいつに懐かれてるだけ。」
都丹さんは、決して人前で関係を言わない。
でも、今日だけは何だか違う気分。
箸を手に取り、私のお椀にある鴨肉を掴んで都丹さんの口元へ持っていった。
「はい、あーん」
「誰がするか。」
このまま箸を自分の口に、とも思ったけど都丹さんに構いたくて仕方ない。
口を開けようともしない都丹さんに、駄々をこねた。
「うーしーやーまーさーん!!都丹さんが食べてくれないー!」
「都丹、食べてやれよ。」
牛山さんの大人な返答に、都丹さんが渋々といった様子で口を開けてくれた。
何度も口づけあった唇の隙間に鴨肉を放り込み、咀嚼されるのを黙って見る。
私の視線に気付いたのか、門倉さんが面白そうにした。

「なまえと都丹、親子みてーだな。」
私と都丹さんを見て、第一に思うことはそれだろう。
目の見えない都丹さんが知る私たちの姿は、年齢差を隠せない。
それでも、見た目を感じなくさせたい。
「親子じゃないよー!」
都丹さんに抱き着いて、白髪頭に頬ずりした。
「い〜や〜!とにさんに襲われる〜」
絡みつく私を見た門倉さんは笑っているし、牛山さんは眠そうに目を細めた。
傷のある額に頬を寄せ、酒で熱くなった額を味わう。
「どっちかっていうと都丹が襲われてるな。」
ビールをまたひとつ空にした門倉さんが、改めて鴨鍋をよそう。
私に抱き着かれた都丹さんは、ビール瓶を置いてから私を引きはがした。
「やめろやめろ、虐待だ。」
「とにさーん!親子じゃないもんねー!」
抱き覚えのある身体に抱き着いて、声をあげて笑う。
いつもなら撫でてくれるけど、人前では決して抱きしめ返してくれない。
「オレにこんなデカいガキいねえよ。」
そう言った都丹さんの耳が、真っ赤。
人前では決して愛を囁かないことをわかって甘えるのは、心地が良かった。
土方さんが茶漬けを食べながら、お酒の勢いに飲まれた私を見て微笑む。
「仲のいいことだ。」
笑顔の土方さんなんて、あまり見ないかも。
土方さんの後ろから見える影が蠢く、ああ、あれはキラウシさんだ。
よろよろと立ち上がったキラウシさんが脇目も振らず門倉さんに飛び掛かって、蹴り玉みたく門倉さんが転がる。
アイヌ語で何かを笑いながら叫ぶキラウシさんが門倉さんに襲い掛かるのを見た牛山さんが大笑いして、都丹さんが耳を塞いだ。
「うるせえ。」
「んー、いまねえ、キラウシさんが門倉さんを襲った」
門倉さんの楽しそうな悲鳴、牛山さんの笑い声、キラウシさんの楽しそうなアイヌ語。
ねえ都丹さん、私も楽しいの。
わかる?都丹さん。
酔っぱらった私を剥いて遊んでもいいのに、そんなことしない。
絶対に人前で恥ずかしいことをしない貴方が好きよ。
耳を塞いでいる手をどけて、都丹さんの耳元でしか聞こえない声量で囁いた。

「庵士さん」
「あっ…。」

真っ赤になった都丹さんが、急に猫背になった。
肩が震えだし、ビール瓶を握る手に力が入るのが見てわかる。
近くにあった都丹さんの手が私の後頭部に伸びて、うなじに触れてから背中をわしゃわしゃと撫でた。
キラウシさんの笑い声が一際大きくなったのを切欠に、都丹さんが不意に立ち上がる。
「うるせえな、耳が痛え。」
「えー、都丹さんもう飲まないのー」
「こんな騒がしい中で飲めるかっての。」
座敷の戸を開けた都丹さんが、いつもいる部屋とは逆の方向へ歩き出す。
都丹さんの指が私のうなじに触れるのは、『ついてこい』の合図。
こっちを気にしたのは、土方さんだけ。
土方さんと目が合ってから、合図を思い出す。
都丹さんを足音で追って、座敷から出た。
土方さんが「仲のいいことは美しいものだな。」と言う声がした気がしたけど、気のせいだと思うことにした。


都丹さんがいつもいる部屋の方向へ向かおうとすると、誰もいない部屋から手が伸びてきて、すぐに抱き留められる。
暗い部屋が月明かりで照らされ、焦点の合わない目と視線が交わう。
穴が開くほど見た都丹さんの顔。
耳は真っ赤で、悔しそうに笑っている。
「なまえ、おい、煽りやがったなコラ。」
強い力で抱きしめられ、大きな手で脇腹をくすぐられた。
「や〜だ〜!きゃはははは」
「きゃははじゃねえぞ、このっ。」
服が乱れない程度にくすぐられてから、部屋の様子を確認する。
暗がりで目をこらし、仏像が目に入った。
仄かに香る蝋燭の煙の匂いが、舌の上に残った酒を消していく。
皆の寝る部屋と厠と逆方向に位置する仏間だとわかった。
都丹さんが汗ばんだ首筋を隠そうともしないのを見て、待てをする。
「ええ、ここで?」
お構いなしに首筋と鎖骨を舐めてくる都丹さんの肩を抱くと、私の身体をまさぐりはじめた。
傷のある額を押さえても、肌を撫でる手は止まらない。
「全員…酔っててわかんねえよ。」
酔った私、煽られて治まりがつかなくなった都丹さん、酒の匂い。
いつもなら何か言い返してるけど、そんな気もしなかった。
私を嗅いだ都丹さんが「風呂入ったのか。」と耳元で囁く。
太ももに手が伸びてきて、そっと脚を開いた。
乾いた指が濡れた性器に触れた瞬間、都丹さんが動きを止める。


「え、なまえ…あれ?」
指で探れば卑猥な水音がする性器と、愛液の間。
生えているはずの毛を探る動きをした指に触れる。
糸を引く茂みに慣れた都丹さんの指が、毛のない肉唇に触れて触り心地を確かめた。

「さっき風呂入った時にね、時間があったから下の毛ぜんぶ剃ってみたの」
指が動くたびに生まれる音は、いつもよりもハッキリと聞こえた。
肉と皮膚が粘液で擦れる感覚と音で、触感に驚く都丹さんの顔を見ながら誘惑する。
「けっこう違うでしょ」
「おわ……すげえな、これ…。」
愛液に塗れた陰唇が太い指を咥える。
溢れるように濡れるのは分かりきったことだけど、茂みがないと少し違う。
少し、というのは私の感覚であって、視覚以外で情報を得る都丹さんには大きく違うのだろう。
「これは…やべえな…。」
都丹さんの身体はだんだん下に移動しながら、私の股座を覗き込む姿勢になった。
触感を楽しみながら指を動かしては、他の感覚で毛のない性器を愛撫している。
「毛あるときは分からなかったけど…ここも柔らかいんだな。」
「そうよ、全部ほっぺみたいに柔らかいの」
「なんで剃ろうと思ったんだ。」
真っ赤な顔をして、欲情の色を隠しもしない笑みを浮かべる都丹さんを見て、合図を言っていないことを思い出す。
庵士さん、と呼んだ瞬間に彼は抑えられなくなる。
座敷で囁いたとき、彼以外に聴こえただろうか?きっと聴こえてない。
今も耳をすませばキラウシさんの大きな声が聞こえる。

息を吸って、吐き出しながら名前を呼ぶ。
「そこ、いっぱい舐める庵士さんが見たいから」
名前を呼ばれてから、庵士さんの頭が股の間に忍び込んだ。
熱い舌が性器を這ったあと、一際大きな水音がする。
「んあっ…!」
毛のない性器の割れ目を上から下まで舐め回され、刺激が伝う。
舌が肉壺の形を描くように唾液を垂らし、じゅるじゅると味わうような音がする。
美味しそうに舐める庵士さんの頭を撫でながら、快感を享受した。
「きもちい…。」
お尻のあたりに、庵士さんの髭があたる。
顎の皮膚が触れるところが滑っていて、どこを触られても気持ちいい。
「匂ってくるのも好きだったんだが…。」
「えっ、そんなにおってた?」
「臭くはねえよ、なまえのやらしい匂いが好きなんだ。」
熱い舌が陰核を舐めて、大きな手が胸に伸びてくる。
私を気持ちよくする大きな手、太い指、肌に熱を与える動き。
肉を確かめるように揉まれ、胸の頂が硬くなる。
脚の間にいる庵士さんが、私を味わう。
「舐めても舐めても溢れてきやがる。」
「ほんとに舐めてばっかり」
「あったりめえよ、楽しくて仕方ねえ。」
音を鳴らし、肉を食みながら飴玉のように舐められる。
舌で翻弄されながら、息だけで喘ぐ。
遠くで、キラウシさんと門倉さんの楽しそうな声がする。
不意に「だから門倉は財布もオソマなんだ!」というキラウシさんの声がして、牛山さんの大きな笑い声がした。

「あは、キラウシさん楽しそう」
「他の男のこと考える余裕あんのかよ。」
舌が止まる。
下半身に目をやると、庵士さんが口元を粘液がぐちゃぐちゃに濡らしたまま私を見ていた。
「ない…」
「どこが気持ちいいか言ってみろ、舐めるのやめるぞ。」
顎髭は濡れて糸を引いているし、鼻先も濡れている。
白濁の瞳を見つめながら、性技を強請った。
「庵士さんに舐められるとこ全部気持ちいいの、でもここが一番気持ちいい」
「ここってどこだ、見えねえから分かんねえな。」
「ここ…だってば」
自分の指で陰核を撫で、庵士さんの舌が中指と人差し指ごと舐める。
「オレが舐めやすいように、そこ開いてろ。」
指で開いた肉の間を舐めずられ、熱い陰核が唇で覆われる。
冷たい空気を吸いながら、暗闇に慣れた目で仏間を見た。
ここは音がこもる。
夜ということもあって、わざわざ仏間を通る人はいない。
酔ってても部屋選びは間違えない庵士さんに、さすがだなと思う。
キラウシさんの声が聞こえて、それから考える間も与えられないほどの快感が襲ってくる。
「あっ…はぁ、ああっ」
「いい声だ。」
息を飲んで腰を浮かせ、脚の筋肉が強張った。
腰の中にある内臓が煮えるほどの熱、背筋から頭に響いていく快感。
酒の匂いも気配も、快感で飛んでいく。
「庵士さん…きもちい…」
「オレは今…なにを舐めてんだ?」
「私の……まんこ…」
「オレが舐めやすくするために毛剃ったパイパンまんこ、だろ?」
「な…めやすい、毛剃った…!ああっ!ふしっ…だら、な、ああっ」
気持ちいい、気持ちいい。
物欲しく腰を揺らしてから「いれて」と囁く。
座敷から聞こえる笑い声に掻き消されそうな声でも、庵士さんは聞き逃さない。
上半身を起こして、褌から顔を出した男性器を優しく掴む。
硬度を保つそれを手にすると、私の中から蜜が溢れた。
「ちんちん案内するね」
「急にシゴいたりするんじゃねえぞ…。」
出そうなの?と言いかけて口を噤む。
熱に浮かされた顔の庵士さんが、上着を脱いだ。
刺青が見える肌の上に、びっしょりと汗をかいている。
庵士さんのほうが、私の身体とこの状況に興奮していると分かって息を吐きだした。
「声でそうになったら、私の首を噛んでいいから」
噛んでいい、と言われた庵士さんの顔が赤くなった。
破廉恥を目の当たりにした庵士さんの頬を両手で包んで、微笑む。
「んなことできるか。」
勃起した男性器を膣口まで導くと、褌とズボンを緩めた庵士さんが私の上に乗って身体の中に入ってきた。
ズボンが膝下までずり落ちて、逞しい太ももが月明かりで影を作る。
密着する性器に、庵士さんが感嘆の声を優しく囁く。
「うっわ…すげえ…。」
「ぬるぬるして気持ちいいね」
「入ってるとこ、いつもより分かる…。」
背中に感じる畳の感触。
股を開ききって、仰向けのまま受け入れる体位なんて、遊郭でもしない。
でも、庵士さんとはこれじゃなきゃ駄目なの。
「庵士さんも毛剃ろうよ」
庵士さんにしか見せられない淫猥な姿で、愛欲を誘う。
「オレが剃っても意味ねえだろ。」
「私が庵士さんのちんぽ舐めやすくなるよ」
息を吸いながら、庵士さんの肩に腕を回す。
私の背中を抱く大きな手、耳元で「噛んじまうぞ。」と囁かれる。
噛んで、と甘えると、耳朶を軽く噛まれた。
低い声で子宮を刺激されると鼓動が乱れることを、庵士さんは分かっている。

「なまえは…口にオレの入れないで、可愛い声だけ出しててくれ。耳が落ち着くんだ。なまえが近くにいると…それだけでいい。」
庵士さんが私の胸に耳を当てながら腰を揺する。
耳で感じて、身体で感じて、声で伝えて。
見えない庵士さん、見える私。
何度重ねても終わらない熱、庵士さんに何度も嬲られたそこは、互いの液体で蕩けている。
「はっ…あっ…ああっ、あ」
「オレずっと聴いてられるわ、その声。」
私の上で腰を振る庵士さんの額にある傷に触れて、汗を指で掬う。
身体をまさぐられながら突かれるたびに、全身が暖かくなった。
結合したところから卑猥な音がして、確かにある気持ちを愛でるように身体を重ねる。
「あん、じさん、すき…」
「ん?」
「庵士さん、すき」
搾り取ろうと動く本能の肉が、熱を欲してやまない。
はしたなく突き出た舌が絡まって呼吸が交わってから、脈打つ男性器を肉で締め付ける。
「オレも好き。」
すき、すき。
見えない庵士さんと、見える私の気持ちが通じ合う瞬間が愛しい。
遠くから、誰かの笑い声がする。
閨事の帳が下りて、身体全体に力が入り達することしか考えられなくなる。
快感を享受する私の身体は、性欲を放とうと暴れる腰を受け入れていく。
身体の奥から、滲むような絶頂が這いよる直前に庵士さんの肩に噛みついた。
腰は荒っぽく進められ、最奥が快感に支配された。
天を揺らすような刺激に耐えるため、庵士さんの背中に爪を立てて必死に耐える。
庵士さんとなら、耐えて、耐えて、気持ちよくなれるの。
脚を開いたまま達した腰が激しく跳ね、膣内の男性器を締め付ける。
だらしなく開いた口を、庵士さんの唇が塞ぐ。
獣のような呼吸で身体を揺らす私を抱きしめながら、庵士さんが私を撫でる。
「上手くイケたな、いい子だ。」
褒められて、ぼうっとした頭で嬉しくなった。
いい子なの?じゃあもっとイかなきゃ。
「あったかい」
抱き合ったまま、呼吸を落ち着けた。
閨の帳は消えてきて、牛山さんの歌声が聴こえてくる。
まだまだあっちも楽しそうだ。
私を抱く庵士さんが、私の肌を舐めながら胸を揉む。
乳房を吸われ、子宮が疼く。
「気持ちいいな、なまえ。」
「………ん、そろそろ…布団、行かなきゃ」
達して、すこし頭の回る私を庵士さんが抑え込む。
「全員雑魚寝だよ、遅くなってもいいだろ。」
まあいいか、みんな酔ってるし。
挿入したまま起き上がって、庵士さんの膝の上に乗る。
尻を揺らしながら、胸に耳を当てて鼓動を聴く庵士さんを抱きしめた。
酔いはどこかにいった私と庵士さんで、月明かりの下で曝け出す。
呼ばれたって、探されたって、行ってやるものか。
声にならない声で「だいすきよ」と囁くと、ぎゅっと抱きしめられた。




2022.06.30



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