我慢



土方さんは、私を抱く。
誰かに言えば、とうとう頭がおかしくなったかと思われそうな話なので、誰にも言わない。
土方さんも誰かにしゃべることはなく、静かに間柄は睦まじくなる。
もしかしたら永倉さんには気づかれているかもしれないけど、知っていますか?と聞くことはない。
ふとした時に二人きりになると、土方さんの顔色は変わる。

「ふむ、美味い。」
淹れたてのお茶を飲んだ土方さんが、満足そうに喉を鳴らす。
仕草ひとつひとつに影がなくて、見ていて心地いい。
「なまえも飲め。」
湯呑みを差し出され、そっと受け取る。
一口だけ飲むと仄かな甘みと渋みが広がり、温まった。
「どうだ?」
「美味しいです」
土方さんは、穏やか。
元より、私を誘う時も壊れ物を扱うかのように大事にしてくれる。
お茶を飲んだ私の唇と、土方さんの唇が重なった。
「温かいな。」
何度も口吸いをされ、舌が絡まり、気づけば腰を抱かれていた。
この手に、逆らえるわけもない。
「土方さん…」
だって、この人の誘惑が何よりも卑猥だから。
「恥ずかしい…」
「どうして照れくさいのだ。」
「お昼なのに…」
土方さんが、私の着物を捲る。
腰巻の奥から垂れる愛液に触れ、私の欲しい言葉をくれた。
「なまえが夜まで辛抱できたら、続きをしよう。」



「土方さん…失礼します」
夜になり、土方さんの部屋の襖を開けた。
外も部屋も薄暗いし、部屋には布団が敷いてある。
「どうだった。」
そう言う土方さんの浴衣は着崩されてて、私の期待は膨れる。
私の性器は濡れて、今にも着物に滲みそうなくらい溢れている。
「我慢しました」
「なにを、どう我慢できたか言えるか。」
顔に熱が集まって、耐えがたい羞恥に襲われた。
恥ずかしくて叫びだしたいのを堪えて、目を輝かせている土方さんと視線を交わす。

この人は、私の恥ずかしがる顔が好きだと言う。
「土方さんの…身体を想いながら、一人で…自慰行為をするのを…」
言葉で、感情で、性欲で辱められる私が何よりも好きだと言う土方さんに、私は応える。
「気持ち良くなるのを我慢して、私の中に熱いものが挿入るのを…妄想して、期待して、我慢しました」
私が恥ずかしくなればなるほど土方さんは昂っていく。
互いの欲望が現れる前に、土方さんの手が私の下半身に伸びる。
「いい子だ。」
着物の隙間から、皺の際立つ腕が入り込む。
第二関節で折り曲げられた指が愛液の溢れる肉壺に当てられ、呼吸が詰まった。
「いいところに当ててみろ。」
土方さんの手の上で腰を動かし、血管の浮いた腕に陰核を擦り付けながら、腰を振った。
股座から卑猥な音がする。
腰を下ろせば、肉壺の中に指が埋まった。
目の前にいる土方さんの両肩を掴んで、快感だけを求める。

「とし、ぞ、さん…」

名前を呼ぶと、歳三さんは私を見る目に色情の色を灯した。
老いていても、男。
肉欲に貪欲な歳三さんの腕と手を濡らしながら、腰を何度も動かした。
土方さんの顔には「他の誰にも渡さない、私はなまえの男であり、なまえは私の女だ。」と書いてある。
それが嬉しくて、私は身体を開く。
水音がする下半身がどうなっているか、なんとなく分かる。
目の前にいる歳三さんを雄として受け入れようとする私の身体は、氷をぶちまけても治りはしないだろう。

手を引っ張られ、勃起した陰茎に導かれた。
真っ白な陰毛にそぐわないほど大きくなった陰茎が、私の片手に収まる。
「なまえのことを想っていたら、こうなった。」
「嬉しい…歳三さん……」
口吸いをしながら、歳三さんの大きくなった陰茎を手で扱く。
胸で挟んでもいいし、口で愛撫してもいい。
けど、今は欲しい。
「ゆっくり…中に、ぬぷぬぷって…」
ふしだらな願いを口に、脚を開いた。
恥ずかしくて震える太ももと胸を見た歳三さんは浴衣を脱ぎ、裸になった。
脚を開いた私の間に土方さんの腰が近づいてきて、目の前で怒張した陰茎を扱く。
待ちきれなくて、腰を浮かしてねだる。
膣口に陰茎が当てられ、待ち望んだものが挿入された。
「はあああぁっ」
肉壁が割られるたびに、快感が弾ける。
陰茎がお腹の裏側を擦るたびに、視界が霞んでは呼吸が乱れた。
「や、ああっ、はぁんっ」
恥ずかしくて顔を覆うと、歳三さんは手を退けた。
顔を見せろ、ということだ。
だらしない顔を見せながら、歳三さんを感じる。
「なまえ、どうしてほしい?」
「恥ずかしっ…言えないっ」
「素直になってくれ、なまえが悦んでいる姿が…俺は一番興奮する。」

挿入され、抱きしめ合う。
動かないで抱き合い、私が歳三さんに何をしてほしいか言うまで待ってくれている。

「歳三さんの、子種を…くださいっ…!」
卑猥で、下品で、耳を覆いたくなるような願望。
私の性が、土方さんを求める。
愛の結晶を孕んでもいいと求める子宮と、歳三さんを愛してしまった私から導かれる性。
ふしだらでも、はしたなくても、私にはこれしかない。
「よく言えたな。」
歳三さんが、私の頭を撫でる。
その顔は、支配欲と優越感に塗れていて、官能的。
うれしい、だいすき、歳三さん。
刺青のある背中を抱きしめていると、膣内にある陰茎が数度脈打つ。
短く息を吐いた歳三さんが、私のお尻を掴みながら腰を押し付ける。
「私、なんてはしたないことを…」
「積極的な女は大好きだ。」
精液と子宮頸部の粘液が混じり合い、結合部の最奥から熱が溢れる感覚がして、呼吸は静かに混ざり合った。
歳三さんの熱、私の欲。
この愛は、睦まじく閨に育っていくのだろう。
刺青のある身体を抱きしめ、身体の感覚に浸った。



2022.06.10



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