瓶の誘惑







東方司令部との合同演習は5日間に渡って行われ、1日かけて東方司令部は帰っていく。
今日は2日目。
主に演習訓練で実戦部隊の訓練をするらしいけど詳しいことは知らない。
カフェで耳にするだけなら、気合の入った訓練であることは伺えた。
戦場でいかに一撃で相手を動けなくするか、それなら詳しいけど、軍ではお門違い。
狙撃訓練が終わり、歩兵訓練に移ったのだろう。
目つきが妙に逞しい人がカフェに増えて、コーヒーを頼んでいく。
頼まれたコーヒーを運びながら、東方司令部の人を観察する。
狙撃手なだけあり、眼鏡をかけている人は一人もいない。
目がいい、それは身体的要素の中でも生き残る確率が高いもののひとつ。
たとえばカフェをざっと見渡しても、顔が確認できる。
カフェの入り口に気配があれば、すぐに目をやれる。
ガンマンをしていた時に目を悪くしないでよかった、視力は大事だ、と頭の中で反復すれば見覚えのある鳶色の瞳と目が合った。
金髪に生真面目な鳶色の瞳をした目元のリザが、口元に微笑みを浮かべてカフェにやってくる。
「なまえ!」
名前を呼んでくれた嬉しさに、メニューを抱えたままリザさんに走り寄った。
「リザさん!」
頬が赤いのを見るに、狙撃訓練で外にいたんだろう。
近くのテーブルに案内し、メニューを渡す。
ウェイトレス姿の私を見ながら、注文をする。
「コーヒーひとつ。」
「かしこまりました」
去り際に他のテーブルを確認し、数名が席を立ったことを確認した。
奥へ引っ込み、コーヒーを淹れる。
あとで片付けるにしても、リザさんが来てくれた嬉しさに心が躍った。
また、話せる。
嬉しくて、ついお菓子の箱を開けて蜂蜜のクッキーを取り出す。
更に一枚置いてから、先にコーヒーを届けた。
コーヒーを受け取るリザさんの目元に疲れが浮かんでいて、少しだけ心配になった。
空いたカップを片手に奥へ引っ込んで、流し台にカップを置いてから洗うのも忘れてクッキーを一枚乗せた皿を持つ。
ゆったりとコーヒーを飲むリザさんに、クッキーを渡した。
「これは?」
「サービス」
リザさんの席について、嬉しくて笑顔になる。
「なまえが作ってるのかしら。」
「そうだよ、でもみんなにあげてるわけじゃないの。だから特別」
そう言うと、リザさんは嬉しそうな顔を一瞬だけ見せた。
できることが少ないウェイトレスで、何ができるか考えた結果の行動。
「ねえ、リザさんは軍に何年いるの?」
「歳がバレちゃう。」
明るい返事に笑うと、リザさんは涼しい顔でコーヒーを飲んだ。
見ただけでは普通の女性なのに、どうして軍にいるんだろう。
「軍って大変じゃない?ここにコーヒー飲みに来る山岳警備兵の人には頭が下がるわ」
「慣れてしまえば、普通よ。」
コーヒーカップを置いたリザさんが、物珍しいものを見る顔をした。
次に来る質問が分かって、砕けた空気のまま受け入れる。
「なまえはどうしてここに?」
「ダブリスにいた時の同僚の叔父さんがブリッグズに勤めてて、その紹介」
「アメストリスは慣れた?」
クッキーを手にしたリザさんが、一口食べる。
薄い唇がクッキーを食み、小さく欠けた。
ぽりぽり齧るリザさんを見ながら、会話を続けた。
「そこそこ」
「東方司令部との合同演習は不定期でやってるの、来年も会えるかしら。」
毎年やっているのなら、既にリザさんに会っているはず。
情勢も関係して毎年できないのだろう、と自己完結しリザさんに微笑む。
「きっと会えるわ」
クッキーをまた一口食べるリザさんが、優しい目で私を見つめる。
「ねえ、なまえって呼んでるし、リザって呼んで。」
「リザ…ね」
お互いに、名前を呼び合う。
「うれしい」
素直に気持ちを伝えれば、リザは微笑んでくれた。
嬉しくて、つい顔の筋肉が緩む。
リザの肌は健康的な色で、陽の光が少ないブリッグズでは小麦色に見える。
視界に入る自分の日焼けしていない肌を見て、ここはダブリスではないと思う。
「リザはアメストリスの育ちよね、西のほう行ったことある?」
「あるわよ。」
「いってみたいんだけど、どんなとこか分からなくて」
「そうね…アメストリスらしさが残る田舎が多いわ、東部になると田舎すぎるから。」
「私、なにもない自然が好きだよ」
「自然…それならリゼンブールなんてどうかしら。」
「どこそこ」
「東のほう、なにもないところだけど、景色がとてもいいわ。」
クッキーを食べてくれるリザを見つめながら、嬉しくなる。
メディカルルームの皆とは違う雰囲気を纏うリザ。
あの時、ガンショップで顔を合わせていなければ話すことはなかったのだ。
運に感謝していると、リザはコーヒーを一口。
「アエルゴ人とこうやって知り合うのは初めてだわ。見かけるアエルゴ人って、もっとこう…派手というか。」
「うん、陽気な人は多いよ」
基本的に考えがあまりない人が多いし、陰気を隠すために陽気を取り繕う人も多い。
人当たりは良い人が多いかもしれないと思っている私を追撃するように、リザはコーヒーカップを置いた。
「バッカニア大尉と付き合ってるの?」
隠しもしない、質問。
「…うん」
素直に答えてから、顔が熱くなるのを感じた。
どうやってもいずれはバレる、それが想像より早かっただけ。
「バッカニア大尉、東方司令部との合同演習だと厳しすぎて鬼とか熊とか散々な言われようなのよ。」
「そう…」
「笑ってるとこなんて一度も見たことないし、アームストロング少将の部下だから隙もなくて。」
「そうね」
「血も涙もなさそうじゃない、バッカニア大尉。」
「そう…ね…」
顔を赤くした私を真顔で見つめるリザに、どんどん追い詰められる。
「バレた?」
「そりゃあ…あの時、大尉をハニーって。」
「あああああああ」
恥ずかしさで叫ぶ私をよそに、リザが上着の内側のポケットから香水の瓶を取り出した。
「それでなのよ、コレ。」
目の前に置き、コレと言う。
香水の瓶にしては飾り気がないものの、小細工が施された瓶をまじまじと見る。
「これなに?」
香水の瓶には、透明な液体が満たされ輝いていた。
ぱっと見て粘液なのが見てとれて、見入る。
生真面目な目元のまま、リザは説明し始めた。
「レベッカ…あ、いや、レベッカは友達の名前なんだけどね。レベッカがクレタ国境に家族の用事で行って、そこで買い物したときに貰ったものよ。
冗談も兼ねたお土産で私にくれたんだけど、私はどうにも使いそうにないからなまえに渡すわ。」
「…なにかわからないけど、なんでこれをブリッグズにまで持ってきたの?」
「雪の上に捨てようかと思った。」
捨てようと思うようなものを押し付けられても困る、と顔に出たのか、リザが真顔で瓶の中身を告げる。
「媚薬だって。」
リザの言葉を、脳内で反復した。
この生真面目な目元をしたリザの口から出るには相応しい単語ではない。
軍服姿の女性が媚薬を持つ、なんとも淫猥な状況。
言葉を失っていると、リザが媚薬を説明しはじめる。
「そこまで強いものではないけど、効果は確からしいわ。一日5滴を一週間飲ませ続けると、ドーン。」
生真面目な目元をしたリザから出る、ドーンという言葉。
らしくないけど、反面可愛らしさを感じた。
リザから貰った媚薬の瓶を見て、中身に思いを馳せる。
「一週間飲ませ続ける媚薬…なにそれ」
「私もわからない。」
リザは試しておらず、友人のレベッカという人が試したんだろう。
どうするか、と媚薬を手に取り光に翳す。
中身は水のよう、すこしだけ粘り気があるように見える。
瓶は綺麗なデザインで、使い終われば香水を入れなおして使えるだろう。
カフェの空間に似合わない、綺麗な瓶。
ふと出入口の扉をみると、こちらを見る人影ふたつ。
先日顔を合わせたマスタングさんと、くすんだ金髪を刈りあげた男。
どちらも軍人男性だ。
金髪を刈り上げた男が「へえ、あの人が中尉が言ってた…。」と唇が動く。
そこから先は読み取れず、隣にいたマスタングさんの唇が「アエルゴ人らしい。」と動いた。
アメストリスの人の口の動きは、どうにも早くて唇が読めない。
「ねえリザ、入り口にいる二人はどちらも上司?」
「どんな人かしら。」
「マスタングさんと金髪刈り上げ」
ああ、と小さく声を零してから、コーヒーを全て飲む。
リザの目元がさらに真面目になり、仕事に切り替わる。
「大佐と少尉ね、なまえは無視していい。」
テーブルから離れるリザの後ろを歩き、ウェイトレスらしく見送った。
振り向いたリザは、優しい顔をしてくれている。
優しいリザと、また話したい。
「そろそろ戻るわ、また会った時に話してね。」
「リザ、またね」
今までの事を軽く思い出す。
正直、媚薬はいらないくらいだし満足もしている。
けど、もしだ。
薬によって何か違うものが引き出されたら、どうなるのだろうか。
それにこれは「冗談も兼ねたお土産」なのだ。
効果があるかどうか、分からない。
リザの飲んだコーヒーを片付け、裏に引っ込む。
時間は午後二時、もうすぐバッカニアが来る頃だろう。
「ハニーは体が大きいし、倍の量にしよ」
媚薬の蓋を開ける。
香りはなく、水のような液体だ。
バッカニアのコーヒーカップを取り出し、10滴垂らした。







合同演習が終わり、打ち上げとまで行かない程度の宴の酒が提供され、若い衆は皆食堂で延々と食べている。
本来なら宴の席にバッカニアがいて、これでもかと酒を飲んでいてもいい。
合同演習の間、休憩にくるバッカニアがの飲むコーヒーにずっと媚薬を混ぜ続けた。
今日まで何事もなく来たが、いつもなら酒を浴びている彼が宴を切り上げて私を選ぶ時点で悟る。
バッカニアの部屋に連れ込まれ、扉を閉めてすぐに抱きしめられた。
そこから先は、いつも通り。
半信半疑ではあったが、媚薬の効果は出た。
抱きしめ合いながら、服を脱ぐ。
お互い下着姿になる頃には、すっかり熱に浮かされた。
下着のまま、絡み合う。
熱い体に這う機械鎧の腕は、ひんやりしてて気持ちいい。
ベッドに寝かされ、みつあみをひっぱりながら抱きつく。
逞しい筋肉に甘えつつも引き寄せ、快感を手繰り寄せるべくバッカニアを抱きしめる。
ふと、視界が柔らかさのある布で遮られた。
結び目が頭の後ろにくる感覚がして、いちゃついてた手を止める。
「ハニー、どうしたの?」
突然目隠しをされ、バッカニアに問うも返事はない。
肌触りと、柔らかい香りからしてタオルだろうか。
遮られた視界、かわりに敏感になる耳と鼻。
「なに、見えない」
視界は暗闇のまま、シーツに纏わりついたバッカニアの匂いと自分の匂い、覆い被さるバッカニアの気配を身体で感じる。
バッカニアに覆い被さられてしまえば、身体はバッカニアの下。
シーツを背に、目隠しされたままの私の首から胸にかけて指が這う。
温かい生身の指、機械鎧の手が私の下着を丁寧に脱がし、取り払われていく。
「ねえ、なに?どうしたの?これ」
返事はなく、ふう、と興奮したバッカニアの吐息が私の首元にかかってから、唇が触れ合った。
舌を絡ませ合う音が耳に触り、ぞくぞくする。
何も見えないようにしたのは何か考えがあるのかどうか、分からない。
生身の指が私の性器を弄り、期待に子宮が疼く。
「んっんん、あ」
十分に濡れているのは、感覚でわかる。
バッカニアの手のひらまで愛液で濡らし、彼の指がぬるぬるになっているのが想像つく。
「はぁ、あ、んっ」
「なまえ、いつもより赤いぞ。」
低い声。
私もバッカニアも、セックスしたくてたまらない。
充血して大きくなったペニスが、挿入したくてカウパーを垂らしているのを想像した。
我慢できないペニスが私に向けられている。
じわじわ湧き上がる快感と、遮られる視界。
腰が動き、だんだんと快感を手繰り寄せる糸が濃くなる。
愛撫だけで達してしまうことは、今まで何度もあった。
気持ちいいのは大歓迎。
腰の力を抜いて、快感に馴染んできた脚をリラックスさせる。
力が抜けた身体を、バッカニアの指から与えられる快感に沈ませた。
太く長い指が、私の性器を支配して暴く。
呼吸しながら声を僅かに吐き出し、快感に震えた。
目隠しされていて音と感覚でしか分からない。
明らかになっているのは、物凄く気持ちがいいということ。
ぐちぐちと音が鳴るくらい濡らしたそこを何度も指で暴かれ、もう気持ち良くなってしまう。
まさにその時だ。
手が離れ、愛撫も快感も止まる。
「えっ…なんで…」
突然愛撫をやめられ、腰がもぞもぞと動く。
もうお互いのことを知っているのに、こういう時に言葉がいらないのに。
どうしてと思い目を覆うタオルを取ろうとすると、機械鎧の冷たい大きな手が私の手を掴んだ。
「取るな。」
低い声が私を静止する。
「え…」
疼き熱を持った下半身には、なにも触れていない。
もの足りなくて、性欲に浸かった頭で求める。
「終わり?」
「不満なのか。」
「だって…今…」
目を覆うタオルを外してしまおう、そう思ってもすぐに腕を掴まれ身動きが取れなくなる。
今日のバッカニアは、意地悪だ。
いままで意地悪なことはしなかっただけに、驚きながらも応えることにした。
「どうしてほしいか言ってみろ。」
責めるような口調。
普段のバッカニアなら絶対しない言い方に、媚薬で引き出されたものを知る。
まったく違う方法でするのも、悪くない。
「言えないくらい恥ずかしいのか?なら行動で示せ。」
私を責めるような口調。
ゆっくりと腕が離され、タオルで目を覆われたまま腕を下半身へやる。
片手で性器、片手で乳房。
利き手の薬指と人差し指で肉唇を開き、中指でクリトリスを撫でた。
指が溶けてしまうのではないかというくらい濡れている。
「は…ああ…」
自慰行為だけじゃ濡れないくらい、ぬるぬるの性器。
「ほう、そうされたいのか。続けてみせろ。」
どうされたいか、見せてあげた。
「んっ…あああ…」
慣れた手つきで、自慰行為を見せる。
物凄く恥ずかしいのに、指が止まらない。
クリトリスを擦りながら、胸を揉み、乳房の先にある突起を指で刺激する。
自分だけで気持ち良くなるときにする行為。
それを、愛する人の目の前でする。
「はず…かしい…よ…」
絶え絶えに漏れた私の声は、いつもと違う声。
喘ぎの中に懇願が混じった哀れな声で、私は先を求める。
目隠しがあってバッカニアの顔は分からないけど、きっと自慰行為をする私を見降ろしているんだろう。
どんな顔をして、私を見降ろしているのか。
想像するだけで焼けるような興奮が私を襲った。
愛撫する指が止まらなくなる。
夜に一人で、目を閉じて妄想を引き出しながらする行為。
絶対に他人に見られちゃいけないのに。
自慰を続けると、バッカニアが笑いを含んだ声色で低く囁いた。
「ははっ、指が生き物みたく蠢いてるな。そんなにここが気持ちいいのか。」
バッカニアが私の指ごと押し上げるようにクリトリスを触り、強い刺激が襲う。
「あっ!!」
「大きい声を出すな、バレるぞ。」
あまりに大きな声を出すと、他に聞こえる。
壁が厚いわけではないこのブリッグズの個室で行為に及ぶのは、声を出してはいけないと了解してするもの。
だから普段絡み合うときは、ゆっくりとする。
なのに、なのに。
「やあ…バッカニア…や…」
「指の動きが早くなったな、いきそうなのか?赤く腫れて、濡れ過ぎてなまえの指の間で糸引いてやがる。」
気持ちよさに勝てなくて、責めに似た愛撫にも勝てなくて、自分にも勝てなかった。
快感に勝つ気なんて、最初から無い。
「ほーう、そこがいいのか。」
「う…」
「濡らしすぎた、シーツが使い物にならなくなる。」
「や…きもちいから…」
「なまえは気持ちいいことが好きなんだろう。」
「あ…うう…う…きもちいよ、ああっ、やあ、きもちい、やあ……」
引き寄せた快感は、私のもの。
「やめるか?」
頭を振れば、額にキスをされた。
無理矢理いじめてるわけではない、それは伝わる。
やめると言えば、もうおしまいになるだろう。
状況が状況、やめたくない。
やめると言わずにいると体勢を変えられる感覚がした。
バッカニアが移動し、寝転がる私の上半身を起こしてから抱きしめてくれる。
頭はバッカニアの胸板に。
背中のあたりに、バッカニアの腹筋。
声が篭る体勢のまま、バッカニアが私に詰問を始めた。
「なまえと過ごし始めてから、一人でする回数は減っちまった。この指を見る限り、なまえのほうは減ってなさそうだな。」
「そんなこと、ない」
「本当か?今だってチンポほしくて指が止まらねえんじゃねえのか。」
私の手の上から、機械鎧の手が重なる。
「何をオカズにしてる、言え。」
耳元で責められる。
視界が遮られているぶん、聴覚で感じ取った。
「あ…あなたとの…とか…」
重なった機械鎧の手が、私の濡れた指を撫でる。
「俺とのなんだ?」
自分を慰める指が、機械鎧の指で優しくつつかれた。
「セックス……とか、声とか思い出して…」
愛を囁かれ、抱きしめ合って、キスしあって。
膣内を刺激され続けている時に両肩をがっしりと掴まれ力の逃げ場がない状態で腰を振られること。
覆い被さられ、背中に腹筋、耳元に吐息、下半身はまるごと覆われるような感覚。
「そうか、思い出してみろ。」
重なっていた手が潜り込み、性器を大きな機械鎧の手が愛撫する。
私の身体を支配するように、腕が伸びて性器を弄り始めた。
「あ、ああ!!」
「声が大きいぞ、我慢しろ。」
生身の手が私の胸をゆっくりと揉み始め、腰が浮いてくる。
思い出してみろ、そう言われて思い出す。
行為の最中の吐息、みつあみをひっぱってキスをせがんで、舌を絡ませ合う。
唾液が垂れても、汗に飲まれて何の体液かわからない。
膣内をゆっくり責められ、喘ぎが漏れるあの感覚。
「あ、あ、やあ、中に指いれて、それから弄って」
蘇っては身体を支配していく快感を、浅ましく強請る。
バッカニアの手が動くたびに、ぬちぬちと音がした。
「よほど良いものを思い出しているのか?自分から腰を振って強請って、思い出しただけでいきそうか。」
意地悪な言い方。
それでも興奮する私を、バッカニアはどう思っているんだろうか。
「言ってみろ。何を思い出した。」
「…前に、ラッシュバレーで、したときの…」
自分の指では届かないところまで指で刺激されると、愛液が溢れ出していく。
「あの時か、気持ちよさそうに叫んでたな。」
責めるように言われ、快感に後ろ暗さが宿る。
今ここで、気持ちいいからって大声を出してはいけない。
「はあ、ああ、ああっ、ああ、ああ、あ、あ」
腕を掴んで、股の間にある手に感じる。
冷たい機械鎧の腕。
私の身体の気持ちのいいところを蹂躙して快感を引き出してくる。
「あ、はああっ、あ、あっ」
言葉にならない喘ぎも、引き出される快感も、熱と化す。
性器から手が離れ、バッカニアの声が至近距離でする。
ぬちゃ、と粘液の音が耳元でした。
「わかるか?拭かないと手でしたのがニールと先生にバレる。」
口を開けば、機械鎧の指が突っ込まれる。
愛液の味がする指を舐めて、歯が当たる音が鈍く脳に響いた。
下品な音を立てて機械鎧の指を舐め、舌の上に愛液の味が広がる。
「も…バッカニア、ね、もう」
「なんだ?」
「しよ?ね、しよ?」
目を覆うタオルを外し、バッカニアの顔を掴む。
タオルは私の胸元に落ちて、ちょうど胸が隠れた。
私の背にいる、厳めしい顔の男を見る。

いつも通りの特徴的な髪型と髭、深い青の瞳。
バッカニアは、見たことがないくらい熱に浮かされ性欲にまみれた情けない顔をしていた。
泣き出しそうな目元、額にも汗、目は切なそうに座っている。
きつく結ばれた口元。
何かを我慢するような顔を見て、私の中の優越感が燃え上がった。
「外すなと言っただろう。」
怖い顔も、低い声も、全部説得力がなくなるくらい情けない顔色。
真っ赤な顔に、性欲に溢れた目。
額に汗をかいて、今にも破裂しそうな顔をしている。
「どうしたのその顔…真っ赤じゃない。隠したかったの?これも」
トランクスの下にある大きいペニスを撫でると、バッカニアは目を伏せた。
「むう…」
言い返さないのを見て、トランクスを取り払う。
大きくなったペニスを撫でながら、赤い顔をしたバッカニアを弄り倒す。
「いつもより大きくない?」
髭を指先でくるくると弄りながら、額に何度もキスをした。
私の唇が冷たく感じるくらい熱い額。
頬にキスをすれば、もっと熱かった。
「や、やめろ。」
「なんで?私の時は目隠しをやめなかったじゃない」
「うう…。」
困ったような、苦しそうな顔。
何も言えずに私の言うことをきいては黙る姿に、一種の可愛らしさを感じた。
大男には似合わない、恥ずかしがった顔。
「さっきのことだけど、私とこうする前は一人でたくさんしてたの?週どれくらい?」
恥ずかしがる顔を、もっと見たい。
目隠しされていたことなんか忘れる勢いで、バッカニアのペニスを手で扱く。
いつもより熱くなり太く反り返ったものを扱きながら、おかえしをする。
「性欲強いもんね、何回してた?」
「週2回…しない時もあるが…1回に…三発くらい…。」
「うわー最低」
機械鎧の腕を軽く押さえ、ベッドの上で体勢を逆転させる。
どう見ても私より強い大男なのに、逆らってこない。
見た目に不釣り合いなくらい照れた顔をして、快感と興奮に溶けかけているバッカニア。
「オカズは?この部屋でエロ本見たことないんだけど」
バッカニアのお腹の上に座り、後ろ手で扱きながら質問を続けた。
垂れたカウパーが指に当たって、扱くたびに皮膚の上で滑る。
「…なまえが来てからは、なまえ…の置いていった服で…。」
「最低」
行き来する時に回収しているとはいえ、たまに置き忘れることはあった。
そういうときは来た時に回収し、帰る時には洗濯している。
なんとなく使われてる想像はしてたけど、触れないでおいたことだった。
口をついて出た最低、という言葉を投げた途端に扱いている手の中にあるペニスが脈打つ。
射精するかしないかの瀬戸際なのだろう。
「うわーおっきくなってる、変態だ」
煽ると、バッカニアがシーツを握りしめた。
私を抱きしめるのではなく、耐えるほうを選んでいる。
それがどういう意味か分かり、扱くのをやめて跨った。
「もう無理、ちんちん頂戴」
膣口にペニスを当て、十分に濡れたそこに迎える。
先ほどまでの愛撫もあり、大きいものを難なく受け入れた。
膣内で脈打つペニスを包み込み、私の身体の中にいるバッカニアを締め付ける。
「ふーっ、ふー…」
興奮しきった私を、生身の大きな手が撫でた。
腰を愛おしそうに掴んで、緩く下から突き上げられる。
「なまえ…っ!!!なまえっ。」
情けない声。
いつもと違うバッカニアに、私のほうがこれでもかと興奮させられる。
機械鎧の腕を持つ、筋骨隆々の大男。
酒も女も、なんでも片付けそうな顔を面構えをしたバッカニア。
見た目で判断はできないのは当たり前だとしても、とてもじゃないけど、こんな顔をする姿は想像できない。
「どういうことなのハニー、なんでたまらなさそうに喘ぐの?」
脚に力を入れ、腰を振った。
肌がぶつかり合う音が部屋の中に響き、責めるたびにバッカニアは苦悶の表情をする。
目は愛しさに塗れたまま、赤い顔をして喘ぐ。
「わからん…っ!ここのところムラムラしすぎてっ…!」
「それで?」
「顔を…見られたくなくて…っ!はあ、それでさっき…!」
目隠しの理由を知る。
リザからの思わぬプレゼントに感謝しながら、騎乗位で責め立てた。
粘液の音とお尻を打ち付ける音が、そこにいることを示すかのように大きく響く。
「さっきので私もムラムラしちゃった」
「なまえっ…!なまえ!」
荒く息をするバッカニアを見ながら、腰を振る。
深い青の目は、私を捉えた。
媚薬で熱に浮かされているとはいえ、この瞬間も私と溺れる。
それが嬉しくて、気持ちよくて。
バッカニアの愛欲に塗れた目が蕩けそうな目になった途端、膣内で何度もペニスが脈打つ。
「う、ぐう…。」
「いっぱい出てるね、ハニー」
膣内に溢れんばかりの射精を感じ取りながら、結合部の熱さに酔う。
いつのまにか溶けてひとつになってました。
そうなってもいいくらい、熱い。
脈打つペニスを身体の中に迎えたまま、また腰を振った。
「ぬ!?なまえっ…あああっ!何をする気だ!?」
射精が終わり、萎えかけたペニスを膣内で何度も擦る。
「私が満足するまで勃ててね」
追いうちのような快感に叫びかけたのか、歯を食いしばったバッカニアの両手が私の腰を掴む。
軽く払うと、目隠しした時に私の手を遮ったことを思い出してくれたのだろうか。
大人しく従い、大きな両手はシーツを握りしめたのだった。






2020.03.24







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