混じる倫理の下





混血のところは考察です
傷に関わるマイルズに対し、リン・フーと関わるバッカニア
つまりこういうことか?と行きついただけ






ラッシュバレーの晴天の下。
賑わう人の10人に1人は機械鎧を身に着け、人々は行き交う。
ここは機械鎧の聖地。
肢体のどこかが欠損した人が自ら機械化する文化。
機械鎧の腕なんて、自ら弱点を晒しているようなものだと思う。
「半年前に来た時、いろいろ見たのよ」
テーブルの上でミートパイを広げ、黙々と食べるバッカニアを見る。
機械鎧の聖地、ラッシュバレー。
セントラルから脚を伸ばし、ここに来て珍しい銃のパーツを調達し、アエルゴの銃を再現したものをブリッグズの解析に回す。
解析班はアエルゴ式の銃をアメストリス式に組みなおすことに着手することを考えているらしく、今回の目的は武器の調達。
当然武器はアームストロング少将の元へ向かう。
引き渡した私の銃は、ブリッグズの開発の一部になっている。
「この時期だと、ラッシュバレーへの汽車が多く出てるの。三日もあれば余裕」
終始笑顔のバッカニアを同伴することが出来て、よかったと思う。
土地勘がないだろう、というアームストロング少将の気遣いでラッシュバレーへの「偵察」はバッカニア大尉同伴。
本当のところ、アメストリスの土地勘はダブリスしかない。
ノースシティも完全に制覇したとは言い難く、同伴とはいえアメストリスの人が傍にいるのは有難いことだ。
口へ運んでは消えるミートパイをまじまじと見つめ、自分でも一切れ手に取る。
香辛料よりも肉の量が圧倒的に多いこのミートパイを作ったのは男性だろう。
暑い厨房で、味に自信があると言わんばかりの顔で焼いているのが頭に浮かぶ。
「ところでこのミートパイはどこで手に入れたの?」
ミートパイを一口。
「機械鎧の腕相撲で優勝したら貰った。」
肉量の多い口腔内で、味を噛みしめる。
アメストリスは、肉料理が美味しい。
コショウと油が染み出し、パイの生地が肉汁を吸い込んで味を調える。
手軽に買える肉料理がこれだけ美味しいのも、珍しいことだ。
「私さっき自分のためにピーチパイ買って、ハニーのためにミルクケーキ買ったわ」
「食べ物尽くしだな。」
「これで明後日の朝くらいまで持つでしょ?」
ね?と微笑むと、頬を染めたバッカニアが私を見た後、おうと返事をして微笑む。
もう一年半は交際相手として一緒にいるのに、まだ慣れない。
一緒にいるとドキドキする、二人きりになれると嬉しい、抱きしめられるとそれだけで生きてる証に思える。
変わり映えのしない毎日もバッカニアに会えるだけで、愛しさが増す。
ミートパイを飲み込み、手元にあるジュースを飲む。
底をついたジュースを見て、右腕を機械鎧にした店員がグラスを下げていった。
なんとなく目で追ってしまう。
「アメストリスの機械鎧の発達と発展はすごいわ」
腕がないなら、作ればいい。
機械の腕と脚を。
その発想はあっても、実行して世間一般に浸透させるには時世も関係してくる。
やはり先の戦争だろう。
大人から子供まで、機械鎧の手足がいる。
路地の道化師が錬金術で子供におもちゃを作る光景を横目に、アメストリスの平和に浸った。
「それに機械鎧、錬金術。アエルゴは機械ばっかり支配してて何かを補うには機械って発想しかないわ。アエルゴじゃ錬金術の存在すら知らない人が殆どよ」
「こちらもアエルゴがどういう国か分からない。なまえの意見は貴重だ。」
ミートパイを食べる大きな口を観察した。
歯並びがよく、唇が薄い。
顔の骨格は間違いなくアメストリス人なのだけど、容姿は時に引き寄せる。
黒色の不思議な髪型と髭に反するような、深い青の目。
光に溶けることのない、白とも褐色とも言えない、少しだけ黄味ががった肌。
アエルゴでは滅多に見ない青い目を見せてもらった時に、聞くべきだった。
「…ハニー、目の色…不思議よね」
「む?」
あの時聞けなかったことをラッシュバレーの晴天の下で、引き出す。
「どことの混血なの?」
ミートパイを片手に、バッカニアが答える。
「シンだ。」
予想していた答え、そして続く生い立ち。
「母親が砂漠超えのアメストリス人、父親はシン人。」
砂漠超え、それが何を意味するかは分かっている。
アメストリスから砂漠を超えるという苦行を伴う旅をわざわざする人は、全員訳アリ。
当然仲には好奇心が元で行く人もいる。
文明の発達したアメストリスから何のためにシンに行くか。
そう考えると薄暗い何かまで見えそうになる。
「その生い立ちもあって、訳アリ育ちの兵士の育成と、アームストロング少将の下でシンとの外交を任されている。」
「そうだったの?」
「といっても、シン自体謎が多い国だからな。最近王が倒れるか倒れないかとかで、向こうの外交は疎かだ。俺の出番はあまりない。」
ミートパイ一切れを、丁寧に何回かに分けて食べるバッカニア。
本人が「謎が多い」と父の国を言葉で葬り去る。
聞かないほうがいい何かも、知らない何かも、知り得ない事実も、その一言に隠されてしまった。
暴く勇気は、ない。
「むしろ無いほうがいい、ここは戦争ばかりしてる国だからな。」
そう言ってにかっと笑う顔から滲む人の良さ。
顔こそ怖いものの、中身は普通の男性。
「さて!ラッシュバレー観光する?」
私の提案に、唸るような返事をしてから笑いかけてくれる。
「ニールの頼まれごとも済んだしな。」
脇にある鞄に詰め込まれた、機械鎧に関するあれこれ。
私に機械鎧の細かいことは分からないけど、銃と同じで仕組みは複雑で目的は単純。
通じるものがあるふたつを嫌いにはなれない。

鞄を持ち、椅子からゆっくりと立ち上がったバッカニアの上着の裾を、褐色の細い腕が横切る。
反射的に動き、細い腕を掴んで大きな声を出す。
「ちょっと!なにあなた!」
細い腕の主は、黒髪で褐色の肌をした細身の少女。
何人かの視線がこちらに突き刺さり、少女は動きを止めて一瞬だけ睨みつけた。
細い、細い腕。
筋肉があるかどうかも分からない腕と骨格から、少女と断定するには幼すぎる顔つきから子供だとすぐに分かる。
「あ、ねえ!ごめんって!離してよ!!」
幼い声が、私に刺さる。
声の主は手にした財布を渡すまいと、身体の影に手を隠す。
「返して」
手を差し出し、バッカニアの財布を出せと圧力をかける。
少女の手首を掴む力を入れながら、身を観察した。
汚れていないものの、身なりは綺麗とは言い難く少女のわりに飾り気がなさすぎる。
おそらく、スリを生業にする者。
アエルゴには山ほどいたが、アメストリスでは初めて遭う。
それに細い腕、身のこなし。
産まれ持った性質でもあるのだろうけど、許すわけにはいかない。
「返して!」
財布を返せ、と迫るうちに少女の足がわずかに動く。
たしかにこの少女は身軽だ。
細く、無駄な肉がついていない。
当然体重も軽いだろう。
それにしては足音が無機質すぎる。
耳の勘を頼りに、少女に問いただした。
「あなたの脚、機械鎧?」
少女は私を見ながら、険しい顔をする。
あどけなさの残る顔に、罪悪感と焦りがどんどん浮かんでいく。
「なんでわかるの?」
「足音」
静かな声で指摘すると、少女の顔見知りと思われる女性が声をかけた。
「ほらほらパニーニャ、もうやめなさい」
女性と私を交互に見たパニーニャは、困り始めた。
困っているのはこちらだというのにと言いたい気持ちを抑え、無言で睨みつける。
「ごめんって、ねえ。」
行動、身なりから裕福な子でないことは察しがついた。
大柄なバッカニアから財布を盗もうと思うあたり、手練。
睨みつけている間も、パニーニャは次の策を練るように脚をそっと動かした。
「なんだあ、パニーニャ。ついに捕まるか?」
初老の男性が、面白そうな声で野次を飛ばす。
ついに、と聞くにパニーニャは常習犯。
じりじりと逃げようとしても、手を離さない私にパニーニャはあからさまに困り始める。
「ねえ、ごめんって、もうしないから。」
彼女の足が、じりじりと動いている。
いざとなったら、私の腕を蹴り上げて逃げるつもりだろう。
パニーニャと呼ばれた彼女の足は機械鎧、私の腕は生身。
肉体的な勝利要因は、圧倒的に彼女にある。
無理矢理財布をパニーニャの手からもぎとり、バッカニアに返す。
その間も、パニーニャの手は離さなかった。
この少女のような子供は、アエルゴで嫌というほど見た。
あの時は自分にしか目がなかったから、こういう子供がどういう思いでスリをしているか考えたこともなかったことに気づく。
溜息をつき、パニーニャの手を掴む力を緩めることなく、買っておいたピーチパイを一切れ差し出す。
「はい、これひとつあげる。スリはもうやめなさいよ」
パニーニャは私を丸い目で見つめてから、ピーチパイと私を交互に見る。
ピーチパイを受け取り、一口齧る前にパニーニャは笑顔で走り去った。
ありがとう、の一言を言う前に走り去る彼女を見て、生い立ちを察する。
「見逃すのか。」
背後からしたバッカニアの声で、自分の中の倫理を漏らす。
「あの子、たぶん身よりも家も無いんだと思う」
「何故そう思うんだ。」
「年頃のわりには、妙に飾り気がないから…身近におしゃれを教える人すらいないんだと思う」
一切れなくなり、残り四つになったピーチパイ。
ひとつを手に取り、食べる。
桃の甘い匂いと味で幸せな気分になり、その場でぴょんと跳ねた。
「あ、これ美味しい!はいハニー、あーん!」
「そ、それはなまえのものだろう?」
「はい、あーん」
数秒黙ったバッカニアが、口をあけてピーチパイを招く。
口の中に入る瞬間、指先がバッカニアの唇の内側にすこしだけ触れた。
ぞくり、と覚えのある感覚の手触りがする。
「美味しい?」
「美味い。」
鞄を持ったバッカニアが、歩き出す。
テーブルにお代を置き、何事もなかったかのように進むバッカニアに歩幅を合わせた。
「あの子供を許すのか。」
私に合わせて少しだけ小股で歩くバッカニアの横で倫理を説く。
「許さないよ、でも、いつかあの子も、何かしらと共存していくんだから。恨まれるようなことはしたくないよね」
恨まれないように生きるのは、得意。
言葉ひとつで首が飛ぶ環境で培った考えは、ここでも通用するんだろうか。
空を見上げて、眩しさに浸る。
「アームストロング少将のおかげで、こうしてハニーと二人で出かけられるの」
瞳孔が太陽光で締まり、眩しさを眼窩で感じる。
まぶしい、と思ってバッカニアの腕に抱き着く。
機械鎧の腕の冷たさに頬ずりしていると、果物売りの初老の女性が声をかけてくれた。
「あらあら、そこの二人!熱いねえ!ほらお姉さんと、そこの旦那さん!これどうだい?」
女性は果物を切り、二人分渡してくれた。
レモン色を濃くしたような果肉と、白い皮。
果肉を齧ると、甘い果汁が溢れ出した。
口の中が甘さで包まれ、ほころぶ。
美味しさに微笑んでいると、女性が嬉しそうにしてくれた。
「新婚かい?それ持っていっていいよ、二人で食べな!」
女性が二人分の果実を袋に詰め、渡す。
機械鎧の手で受け取ったバッカニアがお礼を言い、また歩き出す。
ホテルに戻ったら、また食べてみよう。
「旦那さんだって」
「ぬう…。」
言われたことを、反復する。
「新婚旅行でラッシュバレーねえ、ハニーの腕だとそれも不思議じゃないわね」
「そう…だな。」
「ほら、こうしてても変な風に見られないよ、気づいてる?」
バッカニアの腕に抱き着き、密着して歩く。
行き交う人はこちらを物珍しく見ることもなく、ラッシュバレーの街と私達が一体化する。
私達は、なんら珍しくないのだ。
「そう見えるみたい」
そう言った私を見るバッカニアの顔は、真っ赤だった。







「もう、がっついて、熊じゃないんだから」
安ホテルの一室で、熱が産まれる。
入り口に荷物が置かれ、貰った果物はテーブルに置いたまま。
モノが置き去りになったまま、絡み合う。
ズボンを簡単に脱がされ、今にもシャツを脱がされそうになった私。
「ブリッグズの熊さん」
そう言って煽ると、丁寧に抱えられてからベッドに寝かされる。
跪いたバッカニアが私の股の間に座り、顔を近づけようとしたところで遮った。
「悪い熊さんには、お仕置きよ」
バッカニアの鼻を指でちょんっとつついて、待てをする。
抜け出すように立ち上がり、クローゼットの中にある服を手に取った。
「明日この服着たいの、だからキスマークつけちゃダメ」
ピンクのシャツと、ショートパンツ。
それを見せてから自分で脱いで、バッカニアの目の前で下着姿だけになる。
明日の服を着ながら、バッカニアを観察した。
座った目、筋骨隆々の身体、ズボンはまだ脱いでいないにしても勃起しているとすぐに分かるくらい盛った性器。
赤い顔のまま、着替える私を食い入るように見ている。
「似合う?」
軽くポーズをとってみると、バッカニアが囁く。
「とても可愛い…。」
「嬉しい、明日これ着てラッシュバレー巡りしましょう」
服を脱いで、下着姿になる。
わざと色っぽい恰好で服を脱いで、バッカニアを刺激した。
おっぱいも、おしりも、もう全部知ってるのに。
それでも目の前にすると求めてしまうバッカニアの気持ちは、わからなくもない。
こうして挑発するのが、楽しいのだから。
明日着る服を畳んで鏡の前にあるテーブルに置く。
これで明日起きたら着替えられる、その準備ができたところでバッカニアが抱き着いてきた。
たまらない、そんな顔をしながら私を抱きしめる。
「ほら、我慢できない熊さんはお仕置きよ」
バッカニアの唇を人差し指で抑え、うふふと笑う。
腕の中で軽く身をよじり、みつあみを掴んで引っ張る。
「どんなお仕置きをしてくれるんだ?」
悪そうな顔で微笑むバッカニアが私の身体を触って、煽っていく。
沸き上がる性欲は止まることがなく、互いに熱を許し合う。
シャツを脱いで、ズボンのベルトを緩めるバッカニアをベッドに押し倒してから馬乗りになる。
自ら脱いでくれたおかげで、下着は簡単におろせた。
大きくなったペニスを手で扱き、亀頭の裏側を指で擦る。
パンツを脱いでから跨り、大きいペニスを掴む。
勃起した熱いそれは簡単に挿入できない。
太い亀頭を膣口に挿入し、大きさを肉壺に滲ませる。
慎重に膣口に亀頭部分を挿入すれば痛みはない、と何度もして学んだ。
この瞬間だけは、特に気を遣う。
間違えると出血するし痛みが残る。
愛液を垂らす膣口に亀頭を擦り付け、ぬるぬるにしてから亀頭だけを招く。
力を抜いて、ゆっくりと腰を落とした。
濡れたそこに、何度も挿入したペニスを迎える。
といっても、大きさに圧迫されることは変わらず膣周辺の筋肉が内側から押されて、何度か息を短く吐く。
腰を落とし、ペニスの半分が膣内に挿入される。
「私がいいっていうまで、出しちゃダメ」
微笑んで、髪の毛が頬に張り付いたままのだらしない顔でお仕置き内容を告げる。
ゆっくり、ゆっくりと腰を落としてはペニスを膣内で擦る。
粘液と肉壁に包まれたペニスは、咥え込まれて嬉しそうに硬度を保ち続ける。
何度か腰を下ろし、半分より少し多く挿入されたと感じたところでバッカニアの胸板に手をつく。
腰を振り、ペニスの大きさと長さを生かし膣の奥から浅い部分まで挿入による圧迫感と肉感を楽しむ。
肉がぶつかる音が激しく、お尻でも叩かれているような音がする。
私のおしりと、バッカニアのふとももがぶつかる音。
たまに粘液の音、私の吐息、バッカニアの喘ぎ。
短く喘ぐバッカニアを見て、支配欲が私を渦巻かせる。
どちらかといえば甚振るのが好きそうな見た目をしたバッカニアも、快感には勝てない。
「お、おい…なまえ…。」
「なに?」
激しく腰を振りながら、肉壺の中を刺激する。
「それじゃ、すぐ…。」
「駄目」
後ろ手で睾丸を優しく掴み、出しちゃだめと性器を支配する。
撫でるように揉み、上に上がってきた睾丸を掴んで軽く揺らす。
「ぐ、うう…。」
顔を赤くしたバッカニアが呻いて、機械鎧の手で私の腰を掴んだ。
「うわーパンパンになってる、中にいっぱい精子溜めてね」
睾丸から手を離し、両手をまたバッカニアの胸板につける。
腰を振りながら、快感を手繰り寄せた。
腰を後ろに、恥骨を下に、お尻は上下に。
「はあ、ん」
膣内だけで快感を全て手繰り寄せることはできない。
擦り上げてから腰を引くたび、膣壁の奥底が疼く。
それでも、慣れてきた今は前よりも気持ちいい。
「なまえ、もう痛くないのか。」
「もう、あれから何回したと思ってるの」
腰を振りながら、微笑む。
きっと淫猥な顔をしているんだろう。
「こうやって、ハニーの恥ずかしい顔見ながらハニーのちんちん虐めるの好きになっちゃったの」
私を見たバッカニアは真っ赤な顔をしていて、そっと伸ばした両手を私の身体に這わせる。
機械鎧の手で胸を揉まれ、生身の手は性器へ。
膨らんだクリトリスを大きな指先で撫でられ、腰が震える。
「はあ、ああああ」
快感がじわじわと子宮のまわりを支配する感覚がして、腰を前後に動かす。
手繰り寄せた絶頂を逃がすまいと、深く腰を落とし膣の奥までペニスを咥え込む。
濡れた太ももの付け根とお尻でぬるぬるになった結合部が、愛液で糸を引くのを感じる。
これが好き。
繋がっているだけで幸せな、この時間が。
腰を前後に動かし、覆う快感のために小刻みに腰を振る。
何度もクリトリスと肌を擦りつけながら腰を振っていけば、絶頂が身体を支配した。
背中が反り、声をあげる。
だらしない声を出した私の腰を支え、絶頂により何度も震えている体を倒れないようにしてくれた。
びくびくと動くからだが落ち着いてから、バッカニアに微笑みかける。
「はぁ、あ、すごくよかったわ、バッカニア」
「余裕だな、なまえ。」
起き上がったバッカニアが私を抱きしめた後、そっと押し倒す。
挿入されたまま、四つん這いになり腰だけ高く上げた私の後ろからバッカニアが覆いかぶさる体勢になり、はっとする。
「あっ!ねえ、だめよ」
「お仕置きはもう十分だろう、なまえ、息が荒くなっている。」
やめて、と口では言いつつも本気で抵抗しない。
この体勢だと、何度も声をあげてしまう。
「いまっ、いまいったばかりなの、ね、敏感だからっ」
バッカニアが私に覆いかぶさり、両手でしっかりと私の肩を掴む。
耳元に吐息を感じ、背中に逞しい腹筋を感じながら責められた。
シーツを握りしめて、膣の奥から子宮に鈍く響く腰使いに支配された。
「あぁぁあぁ、あああああああ!!!!!!」
「ははっ…なまえ、声が大きい。」
「あああああああっだめえぇえぇぇえぇ、これ弱いのぉおぉおお」
お尻をあげて、後ろから突かれる。
一番最初の七日間で分かった、私の大好きな体位。
「声でちゃう、だめえぇえぇ」
「なまえの可愛い声が聴きたかった…あそこじゃ、これを我慢してたぞ。」
声をあげずに、ブリッグズにいても何度も絡み合った。
その時とは比べ物にならない快感が、私を襲う。
「だって、あそこ、大きい声は漏れちゃう…」
「だからだ、ずっとこの声を聴きたかった。」
耳をべろりと舐められ、快感に眩暈がする。
覆いかぶさったバッカニアが私の頭を撫で、耳元で呼吸をした。
荒い息、私の身体の中で快感を貪る吐息。
快感で背筋に火花が散っては燃え広がるような感覚がして、喘ぎ声が止まらない。
「駄目ぇ、だめ、気持ちいいの好きぃ」
気持ちいいのは、ペニスの挿入だけじゃない。
何度も何度もキスをされ、喘ぎ叫ぶ私の身体を優しく抱きしめ、弱いところを指で暴かれていく。
「バッカニ、アあっぁぁあ、そこ、そこもっとぉ」
膣壁を男性の力で擦られ、快感の波が押し寄せる。
クリトリスを弄っている生身の指は愛液まみれになっているのか、ぐちぐちと音がした。
両手でシーツを掴み、ふとももが強張ったのを感じてくれたバッカニアが責めを少しだけ強くする。
引き寄せられた大きな快感に、叫ぶように喘ぐ。
「ひぁ、へぁあぁ」
絶頂に飲まれ、身体が何度も跳ねる。
あつい、汗まみれの身体。
腰が跳ねるたびに、ペニスが抜けないように腰を押し付けられる。
深く挿入され、膣内にあるペニスを咥えこんだまま何度も締め付けた。
咥え込んだまま絶頂を迎えるのが好きなことを、バッカニアは知っている。
私の腰が落ち着くまで待ってから、放心する私の身体を味わう。
膣内に、じわり、どくどく、と射精を感じ取る。
こういう時は放心しているのだけど、聞こえてはいるのだ。
射精が終われば、バッカニアはすぐに私にキスをしてくる。
「なまえ、愛してるぞ。」
低い声で、意識も腰も落ち着かない私に愛を囁く。
そう言ってから、ゆっくり抱きしめてくれる。
怖い顔の人がするセックスだ、と思えば思う程、見た目というのは記号にすぎないと思う。
セックスは記号を使ったコミュニケーション。
快感で茫然とする私を抱きしめるバッカニアを、そっと抱きしめ返した。
以前つけた爪痕が背中にあるのを指で感じ取ってから、バッカニアの背中にも汗をかいているのを確認する。
汗まみれ、体液まみれでする愛の行為。
じわじわと熱に溶けていく快感を感じながら、荒い吐息を落ち着かせた。



「水おいしー」
ベッドに寝転がったまま、コップの水を飲み干す。
空になったコップをベッド脇のテーブルに置いてからバッカニアの膝に頭を乗せて、水を飲むバッカニアを見た。
さっきまで私の上で腰を振っていた人とは思えないくらい、涼しくて怖い顔をしている。
「汗をかいたからな、風呂に入るぞ。」
私をあれだけ気持ちよくするバッカニアは、快感のあともけろっとしていることが多い。
どうも男性はそういう生き物だと分かっていても、いまだ快感で腰が完全には落ち着かない私は解せなかった。
バッカニアの髭は汗と愛液で濡れているし、みつあみの毛先は汗にまみれている。
観察していると、ふとこちらを見たバッカニアが私の頬を撫でた。
「なまえは可愛い。」
「なあに、もう」
「食べるぞ。」
がおーを口をあけられ、膝の上に乗せていた頭をどけてシーツの上を転がる。
笑いながら離れても、熊さんは私に襲い掛かってきた。
「食べるんなら、貰った果物にしてよ!」
「むう、なまえのほうが美味そうだ。」
「やあだ」
バッカニアが、私の顔をじっと見る。
深い青の目と目が合い、ちょうどいいと目の色を見た。
青の中でも深く、鮮やかではない。
沈んでいくような青の目を間近で見て、肉体的観察をした。
この顔立ちに、この目の色。
混血の気持ちは全てを察せなくても、苦労をしていないことはないだろう。
「ねえ、バッカニア」
「む?」
「空色の目って言われない?」
すこしだけ間を置いて、バッカニアは私の唇を撫でる。
「随分と美しいことを言うな。俺の目の色をそう言ったのはなまえが初めてだ。」
「やだ、初めてもらっちゃった」
うふふと笑えば、バッカニアに抱きしめられた。
汗が乾いたばかりの身体に、熱の手触り。
風呂に入ろうと言ったのはどちらだったか。
「ブリッグズの熊さんは食欲旺盛ね」
見事に熊さんに襲われた私は、水を飲んだ冷たい唇でキスをした。







2020.02.18











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