舌上の支配






性的コンプレックスが爆破に向かっていたのでは?っていう考察





ベッドランプだけが、この部屋の明かり。
白で統一されたゾルフの部屋に、バスローブを着たままベッド脇の椅子に座り込んでいる。
こんな夜遅くまで彼の部屋にいるのは初めてだし、バスルームに踏み入れたのも初めて。
入念に身体を洗ったし、あとはゾルフを待つだけ。
夜を迎えるのは遅くなってしまったけど、知識はあるのだ。
なにも恥ずかしくなんかない、でも相手は大好きな人。
斜め前にいるゾルフを見れない。
顔から火が出そうな私、平然と身体を拭くゾルフ。
バスルームから出て来たゾルフが濡れた肌を拭き終わり、バスローブを着てから私に近寄る。
「なまえ。」
見慣れた顔、でも青い目に鈍い光が宿っている。
ゾルフの手が私の首筋から肩口に移動して、バスローブの胸元だけが開けた。
綺麗な指が、鎖骨の間を這う。
ああ、見られてしまった。
何度も手を繋いだはずなのに、ドキドキする。
「始めますよ。」
声が体の奥に響く。
暗い部屋にいるせいか、服装のせいか、状況のせいか分からない。
指が私の身体を撫でるように這っていくたび、声が漏れた。
我慢しても漏れてしまう、短い喘ぎ。
はしたない声なんて、ほんとは出したくない。
触れられるところ、全部がくすぐったいけど気持ちよくて。
一人の夜のたび触れている性器の内側から、愛液が溢れ出すのを感じた。
バスローブを全て脱がされ、ゾルフの手でベッドに押し倒される。
私の身体を舐める舌の熱に腰が震え、反射的に脚を閉じれば片腕で簡単に脚を押えられ、開かされた。
粘液の溢れるそこを反射的に隠そうと手を伸ばせば、腕を掴まれる。
ゾルフの腰が足の間に割って入り、手を頭の上に置かされた。
「隠さなくていいです。」
そっと、手が離れる。
本当は隠したくてたまらない、恥ずかしいところまで見られている。
なのに、なのに。
ゾルフと夜を迎える、それだけで嬉しくてたまらない。
指が性器に触れた瞬間、堪えられない声が出た。
恥ずかしくて目を瞑って性器を弄る指に耐える。
快感の手触りが私の身体中を巡り、私の陰核と膣内を弄る指から水音がする。
膣内に埋められた指が、私の理性を壊そうと動く。
息を切らしながら目を開ければ、ゾルフが私を見下ろしていた。
今にも泣きそうな顔をした私を見ながら、何を思っているんだろう。
シーツを握りながら、快感に耐える。
身体を許している事実に、股の間にある手。
刺青が愛液に濡れているのを見てしまい、目を瞑って喘ぐ。
膣壁を行き来する指は、私の指とは違って長く、私一人では届かない位置まで届いてしまう。
指で脳の奥底にある欲望を引き出されそうになり、声を詰まらせる。
明らかに耐えきれてない私を見かねたのか、ゾルフは優しくキスをした。
歯列を何度も舌でなぞられ、口を開く。
薄く長めの舌が私の口腔内を蹂躙している間も、性器を責める指は止まらない。
ぐちぐちぐち、ぬち、と音がする。
私の口を溶かすようなキス。
何度もしてきたはずなのに、性行為の手前でするキスがこんなに感じるなんて。
脚が自然と閉じてしまい、ゾルフの腕を締め付ける。
強張った太ももとゾルフの腕の体温の差を感じながら、止まらない指を感じた。
私の唇から離れた愛しい舌は、首筋と乳房の先端を愛撫する。
「あなた、これでいいんですか。」
突如問いかけられ、胸元にいるゾルフを見る。
「え、あ?」
「これでいいのか、と聞いているんです。」
「それって」
これでいいのか、とは、どういう意味だろう。
指の動きが止まり、膣からゆっくりと指が抜かれる。
ん、と声を漏らしてからゾルフを見た。
顔色に変化はないものの、私を怪訝そうに見始めた。
ゾルフのベッドで、ゾルフに迫られ、恥ずかしいところを触られて感じている。
「安心感があるけど…」
異常なまでに恥ずかしいけど、とは言わなかった。
「はあ…。」
溜息をついたゾルフが、愛液まみれの手をべろべろと舐め始めた。
決して美味しくない粘液を舐める舌は、糸を引きながら口の中へ消えていく。
「ねだりそうな顔をしているのに。」
唇の端っこまで愛液でぬとぬとにしたゾルフが、手のひらについた愛液を舐めながら私を見る。
どれだけ濡れていたか嫌でも分かって、顔が真っ赤になるのを感じた。

「男性経験はありますか。」
愛液を一通り舐め終わったゾルフが、私の身体について聞いてきた。
「ないです」
正直に言うと、ゾルフは舌なめずりをした。
私はこの合図を知っている。
合図というよりは、知っている癖。
欲情して、抱きしめたくてたまらなくなった時にこの仕草をして私に合図をする。
私に覆いかぶさり、結んだ髪の毛先を肩から垂らしながら寝転がったまま抱きしめてきた。
同じボディーソープの匂いがする。
耳元で、低く囁かれた。
「そうだ、あなたこそ私の伴侶だ。」
私の耳の側で動く唇から熱い吐息を感じて、背筋が震える。
逃がすまいと私を捉える腕が胴体を撫で、指が胸を揉む。
首筋に熱い舌が這ってから、ゾルフの顔が目の前に見えた。
「男を知っている女は、こうなるとモノを欲しがるんですよ。はやくいれて、もうだめきて、とか物欲しそうな声で。」
覆いかぶさり、バスローブが完全に開けたゾルフの目つきが変わる。
この目つきは知っていた。
モノを爆破させる時の心底楽しそうな顔。
「そう言われると私はもう堪りません、色ボケした喉を両手で絞めて目覚めさせてあげるんです。そんなに欲しいなら野良犬のモノでも突っ込んでなさい、ってね。」
全裸のまま、とんでもない事実を受け入れる。
ふと気になって、身体の下のほうに目をやった。
私は全裸、ゾルフもバスローブが開けているので当然全裸。
実物を見るのが初めての男性器は、勃起していなかった。
「ようやく私を受け入れてくれた。」
初めて見る、欲情したゾルフの笑顔。
目には性欲が浮かび、頬が赤い。
キスしてくれるときも、抱きしめてくれるときも、ここまで興奮した顔はしたことがないはず。
「なまえは気持ちよくしてあげますよ。」
それだけ言うと、ゾルフは私の下半身に移動した。
私が動く前に腰を掴まれ、熱くて薄い舌が私の性器を舐める。
「んっ!!!」
指と違う、生暖かい感触。
陰核に吸い付いたのは、唇と舌だろうか。
ぬるぬる動く何かが、私の秘部を唾液まみれにしていく。
「いいですよ、その反応。今まで指でしかここを暴いたことがないんでしょう。」
「あ、あ、それ、やめ」
息も絶え絶えに訴えても無駄ということは、わかっている。
身体を覆い始めた快感に、脳が沈んで理性が飛んでいく。
「やめません。」
舐め始める前にゾルフが言っていたことを考える。
興奮した顔、反応していない男性器。
男性は興奮すると簡単に勃起するということは知っている。
今こうして全裸になって、ゾルフの前で身体を許して感じて喘いで快感に導かれて。
幸せなこと極まりなくても、気になるのはゾルフの下半身。
私の理性も何もかも飛ばす勢いで快感を引き出し溺れさせるために、股に顔を埋めるゾルフの舌使い。
自分の指とは比べものにならないくらい、気持ちがいい。
食い尽くすように舐めるゾルフの舌から吐かれた「色ボケした喉を両手で絞めて目覚めさせてあげるんです。」という言葉。
男を知っている女性と寝ては幾度となく馬鹿にされたのでは。
事実を後から聞けば、私の首が絞めあげられる。
そんな気がした。
ゾルフに掴まれて逃げられない腰の中にある子宮が、愛撫に震える。
舌と皮膚の間に漏れてくる愛液、舐めとる唾液の音。
吸い付いては舐める舌の感覚で何度も擦られる陰核。
膣から溢れる愛液と唾液が交わっては快感に変わっていく。
「あ、あ、ゾルフ、あ、そこ、も」
それしか言えなかった。
男性の力からは逃げられないし、快感から逃げる気もなかった。
腰が跳ね、背中が反る。
自分以外の手によって引き出された絶頂に、出たこともないような嬌声が漏れた。
頭が真っ白になっても、腰の疼きは止まらない。
何度か身体が快感に痺れたあと、吸い付いていたゾルフの口が私の性器から離れる。
「なんですかね、この光景は。」
重い瞼をなんとか開いて、私の下半身を支配するゾルフを見る。
見慣れた自分の股の間に愛しい人。
腰は大きな手で捕まれ、足はゾルフの背の向こうにある。
口と顎の周りが、叱るべき液体でベタベタだった。
「処女の絶頂、最高の光景です。」
指が膣内に侵入し、長い指が何度も私の中を行き来する。
細長い指先が膣内を押し上げては優しく撫でていく。
刺青のある手のひらに愛液がついて、皮膚に触れるたびにぬちぬちと音がする。
ゾルフが、ある一点を膣内で責め始めた。
恥骨のすぐ真下あたりだろうか、そこを指が行き来している。
「熱いですね、指が溶けそうです。」
私の顔を見ながら膣内を探っては、反応を見ている。
座った目つき、試すような視線。
指に探られるたび、腰から足にかけてぞわぞわと感じたことのない感覚が襲った。
困惑する私に気づいたのか、ゾルフが臍下に軽いキスをする。
「平気ですよ、気分が悪くなったらすぐに言ってください。」
行き来する指は私の性器にあるのに、全身がおかしくなる。
何が何だか分からない感覚と快感を混ぜた気分、指が行き来する場所になにがあるのか。
まったくわからないけど、今はゾルフに任せてみようと思えた。
気持ちいい、と言えば絞め殺そうとするというのに。
彼の猟奇性も含めて好きになったから、この在り方は正しい。
指が押した恥骨の真下から、絶頂を薄めたような感覚がした。
私の反応を見逃さなかった彼が、また性器に吸い付く。
陰核を吸われ、指が何かの快感を呼び出す。
脚がぴんと伸びて、だらしない声が漏れる。
舌と指に耐えかね嬌声を漏らして、シーツを握りしめた。
絶頂と同時に何か知らない感覚がして、性器が熱く燃え上がる。
お尻を伝って、シーツにポタポタと何か落ちる感覚がして、性器を舐めるゾルフを見た。
絶頂と同時に来たのは、いけない種類の解放感。
まずいと思い脚を動かせば、ゾルフが口を離してくれた。
「ふう、良い味ですね。」
「えっ」
「処女の潮吹きですもの、飲まない手はありません。」
何を言うんだ、と唖然としていればゾルフが丁寧に性器を舐める。
先ほどまでとは違う舌使い。
敏感な部分に触れずに這った舌は臍下まで延び、リップ音を出す。
「シャワーに入りますか。」
口元が濡れたゾルフが、笑顔で言う。
腰を掴む手が離れ、足を引っ込める。
恥ずかしい、けど、これまでにないくらい気持ちよかった。
一人でする時とは違う、じわじわと焼きあがるような快感。
どうすればいいか分からず丸まっていると、ゾルフが枕元にきて私の頬を指で軽く撫でた。
「可愛い声でした、満足です。」
「…そう?」
「ええ、また聞かせてください。」
笑顔で言うゾルフの口元は私の液体でびしゃびしゃになっていて、腰を落ち着けているうちに冷静になってくる。
とっくにバスローブが開け見えている男性器。
初めて見るとはいえ、私だけ何もしないのはどうだろうか。
「…あの…」
私が声を出せば、子供でも見るかのように首を傾げた。
汗まみれの上半身を起こして、ゾルフの腰を撫でる。
「私はお構いなく。」
手を掴まれ、触れてほしくないもののように腰から手を離される。
「でも、気分だけでも」
「いいです。」
「たくさんしてもらったし」
その先は、言い返されなかった。
恐る恐る手を伸ばして男性器に触ると、柔らかかった。
ここが大きくなって挿入可能になるのは知っていても、いざするとなると求めることは出来なかった。
未経験故の、無知。
ゾルフは無知を求めていたわけでないだろうし、私が男を知っていたらどうしていたんだろう。
殺されずとも、全裸のまま路地裏に放置されていたに違いない。
柔らかい男性器を感触を確かめるように揉む。
「あ、え、なまえ…。」
やめてください、と続かず、指先で弄ってみる。
形は医学で知るものと同じでも、目にしてみると違う気持ちが襲ってきた。
中に骨はなく、弱い力で揉んでみる。
こんなものをつけたまま歩くなんて、男性は不便そうだ。
その程度の感想しか出ないまま、ゾルフを見上げた。
男性器を揉む私を見下ろす目には冷静さしかなくて、逆に安堵する。
さっきしてもらったように、柔らかい性器を口に含む。
ゾルフは、どうやって私のものを舐めていたっけ。
舌を波のように動かしながら舐めていたはず、と思い出しながら舐めてみる。
特段匂いも味もなく、拍子抜けしながら口腔内で舐めまわしていると頭上からゾルフの静かな声がした。
「…そのまま…。」
遮られない、それをいいことに舌を動かし頭を動かす。
耳年増で得た知識を元にしゃぶりながら、空いた手で睾丸を触ってみた。
体温と変わらない温度、そして思っていたより柔らかい。
舌を使って弄りながらゾルフの下腹部で呼吸する。
だんだん体臭に似た何かがしてきたけど、気にはならない。
「…どういう、ことでしょうね…。」
何がだろう。
聞き返す気にもならず、ずっとゾルフの下半身を相手していたかのように舐める。
舌の上で転がす肉塊が熱を持つまで、まるで同化してしまうかのようにしゃぶっていれば、唾液以外の味がした。
舐め続ける舌が熱くなり、自分の呼吸まで熱くなる。
唾液が喉に下りそうになって、咽るのを我慢して頬の内側をぐるりと舐めまわすように舌を動かした。
生理反応がしたのか、ゾルフが足を少しだけ動かす。
私にしたのと同じように、腰を掴んで舐めてみる。
「なまえ…口を離しなさい。」
ようやくゾルフらしい言葉が出た。
男性器から唇を離すと、目の前にあるそれが僅かに硬度を持っているのが分かる。
弄り始めた時よりも大きくなり、形も少しだけ違う。
「…なんで、これ…。」
ゾルフを見れば、驚きと興奮が混ざった複雑な顔をしていた。
上半身を起こしてから性器に手を触れようとすれば、肩を掴まれ押し倒される。
「なまえ、なまえッ…!!」
シーツに再び押し倒され、脚の間にゾルフが挟まった。
私の上には、息を切らして興奮しきったゾルフ。
あ、と思った時にはもう遅かった。
腰が私の間に迫り、膣口に何かが当てられた数秒後、鈍い痛みが走る。
「いっ」
痛い。
繋がってる場所が、痛い。
猛烈な痛みではないので耐えられるものの、ゾルフの腕を握りしめたまま爪を立てる。
ふっ、ふっ、と熱い息が私にかかった。
泣きそうな顔をしたゾルフが、私の中で膨らむ。
先ほどより硬度がある気がするそれが、快感を求めて動き始める。
「や、あっ、痛っ!」
「腰、止まりません、すみまっ…せ…!」
痛みに顔を顰めながらも覆いかぶさる性欲の主を見上げれば、はあ、はあ、と息をしている。
膣口が痛いし、先ほどの愛撫で充分感じていたから酷い違和感はない。
違和感は、ゾルフのほう。
普段の潔癖さの欠片もない姿からは想像もつかない乱れ方をしたゾルフが、私の上で快感を貪る。
「ごめんなさ、ごめんなさい…っ!!」
謝ったゾルフが、私を力いっぱい抱きしめた。
ぶるぶると震えた腰が何度か私の中に行きついていくように打ち付けられ、何かが中で出されるのが分かる。
「あぁっ!」
悲鳴に似た声。
ゾルフが私を抱きしめたまま息を切らし、私との結合部は痛みと違和感と快感の手触りで埋め尽くされる。
私はというと、驚きと痛みで声も出せずにゾルフを抱きしめることしか出来ずにいた。
密着した身体と熱。
息を落ち着かせるゾルフを抱きしめながら、背中に爪を立てた。
痛い、痛いのだ。
私の様子に気づいたゾルフが私を見て、はっとしたように下腹部に目をやる。
「ああ、血が…。」
ゆっくりと引き抜かれた。
ずる、と膣内を移動するものに痛みを感じながらも、子宮は疼いている。
奇妙な感覚に浸る前に、ゾルフが性器に唇を当ててきた。
欲が吐き出されたそこを、薄い舌が舐める。
「なんて美味しいんでしょう。」
破瓜の味を舐めとるゾルフに、背筋が興奮で包まれた。
「痛かったでしょう、もうこんな思いはさせません。」
「でも、うれしい」
「なぜ?」
「ゾルフと繋がれたから」
そう言えば、私の股座からゾルフが顔をあげた。
「なんて可愛らしい顔でしょう、私が一生を捧げて可愛がってあげましょうね。」
ごめんなさい、ごめんなさいと言いながら射精した彼を思い出し、ぞくりとする。
唇に血をつけたゾルフが、私の太ももにキスをした。





2019.10.23








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