ケニーに煙を吐きかけられる




私の横に座ったケニーが、息の荒い私を見る。
「おう、腰落ち着いたか。」
触れられるだけで、見られるだけで、聞くだけで興奮する。
ケニーに責め立てられ、何度も気を飛ばしては気絶し、私もケニーも朽ち果てる寸前までセックスする。
荒々しくも優しいケニーに、快感が引き起こされて堪らない。
回復はケニーが早く、私はしばらくシーツの海に体を放り投げる。
「んっ…ふぅ…はあ」
言葉にならない声を漏らせば、ケニーはベッドから立ち上がった。
「頭はまだ落ち着かねえか。」
全裸のまま戸棚があるほうに移動したケニーの姿を追う気もない。
呼吸は落ち着いても、内臓が震える。
何をどうやって何度したか、思い出せない。
「良かったぜ、なまえ。金玉無くなるかと思った。」
そう言って、また私の近くに座る。
寝転がったまま放心していると、股の間から精液がどろりと溢れた。
シーツを汚してしまう前に拭こうと思い、ゆっくりと起き上がる。
ああ、でも、これだけセックスしたんだ。
シーツそのものを取り換えればいい。
起き上がって呆けてる私に、ケニーが水の入ったコップを差し出す。
「ほらよ、お姫様。」
コップを差し出したケニーは、葉巻をくわえていた。
「ケニーは?」
「俺はこれでいいんだよ。」
甘い香りのする葉巻。
これを吸うのはセックスの後だけ。
だから私との情事の次の日は、ケニーの身体から甘い匂いがする。
この匂いは、私にも染みついているんだろうか。
身体の底に染みついて取れないような気持ちのように、この甘い匂いが私の身体からもするんだろうか。
水を飲んでも、完全には内臓の震えは止まらない。
一日寝てれば治る。
でも、本能がそうさせない。
ケニーに、飲みかけの水のコップを差し出した。
葉巻をくわえたケニーの唇が何かの液体で濡れてることに気づき、ぞくりとする。
「ったく、わがままだな。そういうところがお姫様みてえなんだよ。」
煙を吐き出したケニーが、コップを受け取って一口飲んでくれた。
水で濡れた唇に視線が釘付けになってる私を、手のひらで転がすような物言いで口説く。
「あんなに乱れておかしくなっても、ちんぽ引き抜いたら可愛い顔に戻りやがる。たまんねえぜ。俺はまだまだなまえが欲しくて足りねえってのによ。」
葉巻の煙が、私の顔にかかる。
目を細めてから、煙を吐くケニーの唇にそっとキスをした。
「あ?やるか?」
煙の苦い味がする舌。
頷くと、葉巻をくわえなおしたケニーに笑われる。
「冗談だよ!それ飲んどけ。」
それ、と指さされたコップを見つめ、水を飲む。
煙の味ごと飲み込んだ水の味は、生ぬるく鼻の奥で煙のにおいがした。





2019.10.13




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