ゾエさんがイチゴみるくをくれる





ラブホテルの天井は派手。
鏡がついていたり、照明が妙だったり。
三門市内のラブホテルはどこもそうだと聞いてから、気乗りしなかった。
行きたいと思ったスイーツバイキングつきのスイーツモチーフのラブホテルは予約でいっぱい。
三門市から離れた場所まで、尋くんとバイクで走る。
顔見知りなんていない場所のラブホテルへ入れば、その先は二人だけの世界。
今日も二人だけの世界に浸って、事の終わりはいつも同じ。
「足いったい」
「大丈夫?揉もうか?」
シャワーから出てきた尋くんが、私の顔を覗き込む。
尋くんより先にシャワーを浴びてバスローブを着て、ベッドの上で大の字になっていても脚の裏側の痛みは取れない。
鈍い、鈍い痛み。
色んな体位で何回もすると、全身汗まみれになる。
「へーき、しばらくしたら治るから」
四つん這いになって後ろから責められると、お尻から太ももにかけてが痛くなる。
「ゴム持ってきてて良かったね、もう箱半分ないよ」
「今回も使ったねー、ゾエさん驚き。」
尋くんは四つん這いになった私の肩を掴んで、力を逃がさないようにして腰で責め立ててくる。
どっちがどっちを求めてるか分からないまま快感に溺れていく。
相変わらず起きる気がしない私を見た尋くんが、私の髪を撫でながら額にキスしてくれた。
「なまえって綺麗な脚してるよね。」
さらりと褒めるところが、尋くんの意外なところ。
顔が熱くなるのを感じて顔を背けると、優しい笑い声がした。
「恥ずかしがらないで、ほんとだよ。」
丸まっていると、頬に冷たいものを押し当てられた。
「なまえ、はい。」
顔をあげれば、尋くんの大きな手にイチゴみるくのジュース。
「ありがと〜、喉からっから」
「ゾエさんも。」
尋くんはペットボトルの水を飲み、私はイチゴみるく。
イチゴが好きな尋くんが好んで飲むものだけど、今日は私が飲んでいる。
甘い、甘いイチゴみるくを一気に半分ほど飲んで喉を潤す。
蓋を閉めて、ゴムの袋が散らばる枕元に置く。

「尋くん、気持ちよかったよ〜」
「あはは、ゾエさんもだよ。なまえ、頑張ったね。えらいえらい。」
「えらくないよ、尋くんとだもん」
「そっか、なまえが可愛いと思うとつい思い切りしちゃうから…疲れてるかと思った。」
「全然疲れてない」
脚は確かに痛いけど、気になるほどではない。
イチゴみるくの味で流してしまった唾液の味、精液と愛液にまみれた味。
私を組み敷く優しくて力強い尋くん。
「優しいんだもん…えっち、好きになっちゃう」
「したくなったら、俺に言うんだよ?」
尋くんは、本当に気が抜けた時だけ「ゾエさん」から「俺」に変わる。
そこもたまらなく好き。
「えー、じゃあ今したい」
「飲み終わったらにしようか。」
寝転がったままイチゴみるくを手にすると、手首のあたりにコンドームの空袋が当たる。
ぱっと見て6個くらい転がってるけど、たぶんもっとやってるはず。
イチゴみるくを飲みながら、何回したか思い出す。
正常位、対面座位で三回、後位で二回、騎乗位、抱えられたままの正常位、シックスナイン、思い出せるだけで9回。
「はい!飲み終わった!」
空になったイチゴみるくのペットボトルを差し出し、胃の中を冷やす。
「早っ!」
あははと笑う尋くんに寄り、キスをして尋くんのおっぱいを揉む。
全身もちもちしてる尋くんにも、多少の膨らみはある。
「なまえのえっち。」
「しょうがないでしょ」
「おっぱいはなまえのほうが大きいでしょ。」
大きな手が、私の胸を優しく揉む。
何回されても、胸を揉まれるだけで子宮が疼く。
「ふとももは俺のほうが太いけど…ほら、足の形とか長さとか、なまえは綺麗。」
きれい、と平気で言える尋くん。
「なまえくらい脚あるとバイク乗っても簡単に足つくよ。」
「つかない人いるの?」
「背の低い人はつかないみたいだね。」
「尋くんのバイクの後ろに乗ってるから気にしたことなかった」
水のペットボトルの蓋を閉めた尋くんが、私にゆっくりキスをする。
ぬる、と唇の裏側と口の中で蠢く尋くんの舌が大好きで、両手で尋くんの頭を抱きしめた。
そのまま後ろに引っ張り、また二人で寝転がる。
私は何度も何度も尋くんに抱きつく。
ここに来るまでも、バイクの後ろに乗って尋くんのお腹に手を回して来た。
運転中は、背中に身を任せている。
いまも、同じ。
「このいちごみるく美味しいね、今度買おう。」
キスの味。
口の中にある舌を動かし、唾液の味がまだイチゴみるくだったことに気づき、あれと声を漏らす。
「え、まだ飲んでなかったの?」
「うん、買ったけどなまえに先に飲んでほしくて。」
「なんで?」
「なんでってそれは…俺が好きなものはなまえにも味わってほしいというか。」
尋くんの、こういうところ。
「帰りに同じの買っていこ」
愛してるって言うところも好き、柔らかいところも、一緒にいて落ち着くところも。
優しくて安心感を与えてくれるところが大好き。
「そうだね、なまえの言うとおり。」
尋くんがキスをして、私にまたキスをする。
余ったコンドームの回数だけして、イチゴみるくを買って三門市へ帰ろう。





2019.10.05







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