嫌いなものは使わない







馨さんリクエスト
拍動の裏で綻ぶの続き
二人の初夜







台所で汚れた皿を洗う慎次さんの背中。
だいぶ片付いたとはいえ、数時間前までは誰かがいたであろう部屋の雰囲気は落ち着かなかった。
ソファの崩れ具合とクッションの位置からして、男数人が飲みながら遊んだ感じがする。
それだけで、まだ脚が竦む。
怖くないのに、襲ってこないのに、何も怖いことなんてなかったのに、自分が弱いまま傷だけ負って傷跡になっただけなのに。
どうしても、駄目だ。
家にいる猫が縁を結んでくれなければ、慎次さんと付き合うこともなかった。
それくらい、怖い。
幽霊が怖いとか怖い話が嫌いとか暴力的な人が嫌いとか、そういう感覚的な部分と同じ怖さ。
本能的なものを一度刺激されると止まらないことは、自分の軽い男性恐怖で痛いほど分かっていた。
子猫を拾い、小さな命を助けたいばかりに慎次さんに頼って、それから付き合ったけど、これといった進展はない。
心の底で、慎次さんをどう思いたいのか何度も考えた。
誰かの助けは待たない、誰も助けないから。
助かっても生き返らない、最初から死んでるから。
なんで死んだのか、私にも分からない。
昔のトラウマというのは、軽いものであって笑い話にできる領域になるまで遠くなっても必ず傷を残していく。
それがこんな形になると思いもしなかっただけで、勝手に一人になるには十分すぎた私に寄り添ってくれた慎次さんは大切な人に変わりは無い。
散らかっていた部屋が戻りつつある時間帯に、足を踏み込んだ。
「ったく、あいつら飲み抜いていきやがって。」
呻きつつ洗い物をする慎次さんの後ろを通り、鞄をソファの下に置く。
コートを脱いでカーテン近くにあるコートハンガーにかけて、テーブルの上を見た。
拭かれてから時間が経っていないようで、きらきらと光っている。
慎次さんは自分のスペースは綺麗にする性格で、冬島隊の作戦会議室がどれだけ酷い散らかり方をしていても自分の部屋じゃなければいいらしい。
整えられた家具、丁寧に敷かれたベットカバー、綺麗なカーテンと窓。
「皆飲み散らかしたの?」
ぼそりと呟くと、横目で私を見た慎次さんが窪みかけの目元で私を見る。
本当はこういう目つきは苦手なはずなのに、慎次さんだけは平気。
どういうわけか、この人だけ平気なのだ。
「お?まあ飲む時は飲むくらいだ、この前ボーダーの面倒ごと終わったしなあ、肩の力抜くときは抜こうや。」
「慎次さんは?」
「今日は飲んでない、一人未成年いたから見張ってた。」
そう、と呟いて酒のボトルがいくつも並んだ棚に近寄り、並ぶものをひとつひとつ見つめた。
酒と見せかけたジュース、いつのものか分からないトロフィー、誰かからの土産もの、レゴで作ったマトリョーシカなど、色々なものがある。
その中に「冬島さんダイスキアイシテル凸(>v<)凸 アツシくんより」と書かれたメモが貼り付けられたマシュマロがあった。
マシュマロの横にはレゴ入りのチョコレート食玩、餅と食べかけの黄な粉。
よくわからないものばかりあるけれど、マシュマロは慎次さんの元に来ていた未成年が置いていったものだと思いたい。
お菓子があるなら食べたいと思い、食玩を手に取ると後ろに煙草のケースがあった。
慎次さんが煙草を吸うことは滅多にないので、誰かの忘れ物だろう。
煙草を吸う人が煙草を置き忘れるなんて、どういうドジを踏んだのか。
「なんでこれ」
煙草のケースを手に慎次さんに寄ると、私を見て、私の手元を見て手の動きを止めた。
「あっ。」
声からして、誰の忘れ物なのか察したのだろう。
届けないのかと思い慎次さんを見ていると、気まずそうに目を逸らされた。
どういうことだ、と煙草ケースを見る。
ふと裏側を見て煙草の成分を見れば、中身はポリウレタン製と書かれていてケースの中身を察した。
真っ赤になる私を見て、慎次さんが苦しそうに話す。
「いやーその・・・貰った、貰ったんだよ!!今日のメンバーに!!!あいつら麻雀景品にロクなもん持ってこねえの!!」
麻雀してたの?と言う気にもならず、コンドームを元の場所に戻す。
一体、誰が、どれくらいの人が私と慎次さんの交際を知っているのだろう。
あんまり広まっていないはずだし、私のことを気にする人はいない、
でも慎次さんは違う。
目立つし、実力はあるし、モテると思う。
そういう意味でコンドームを渡してきたのだろうけど、渡されるということは、まあ、そういうこと。
慎次さんは経験していてもおかしくない。
だって大人で、異性に興味があって、私のように異性が怖い人でもない限り縁があれば関係は生まれる。
変なのは、私。
慎次さんが洗い物を辞める音がして、ソファに座った。
気まずい感覚を帳消しにする為、どうでもいい話題をすればいいのに私の口からは恐怖を覆そうとする言葉が漏れる。
「使うの?」
あれ、とコンドームを指差すと慎次さんが照れくさそうにして、それから真顔になった。
普通の反応、これが普通。
なんてことはない大人の対応で、私も大人。
これに怖がっていては、私一人がまた助からなくなる。
だからといって許してはいけない。
結局は自分の問題なのに、こうして誰かに枷をかけないと私は怖くて怖くて堪らない。
慎次さんが私を見て、いつものにやついた目元で見る。
「使いたい、かな。」
「誰と?」
「なまえしかいないのに分かってて俺に言わせるってか。」
息を吐き出して笑う慎次さんを見て、真っ赤になる。
コンドームの実物なんて手にしたこともないし見たこともない。
形状は知っているけれど、使うことなんて無いと思っていた、そう、今この瞬間までは。
私の顔色に気づいた慎次さんが優しくキスをして、耳元で囁く。
「真っ赤になってる、服脱げば?」
そっと肩に手をかけられ、反射的に体が強ばる。
「や」
嫌じゃないのに怖い。
キスをするまでにも時間が掛かった私を、慎次さんが抱きしめてから後頭部を優しく撫でてくれる。
とろんとした気持ちになって、ごめんねと呟く。
「そんな怯えないでくれよ、無理矢理しないって。」
頷けば、慎次さんが私を撫でながらにやついた目元で可愛がってきた。
頭と首のあたりを撫でられて目を細めれば、慎次さんが優しい声で愛でてくれる。
「俺も怖い。」
「なんで」
ゆっくり抱きかかえられ、立つように促される。
膝の裏側が冷える感じに耐えつつ立ち上がって見上げれば、慎次さんのにやついた目元に真剣な瞳孔がくっついていた。
真面目そうな顔のまま、私の背中を撫でる。
「好きな人の前で裸になることの意味を考えるのが、女だけだと思うか。」
しばらく考えて、そうなの?と呟く。
消え入りそうな声で「そうだよ。」と返され、そっと抱きかかえられたままベッドのある部屋に連れて行かれた。
首のあたりを嗅いで、慎次さんの匂いに安心する。
ああ、これ、流れってやつだ。
ベッドの上に降ろされ、慎次さんが何度も私にキスをした。
洗い物をして冷たくなった大きな手が私の体の上を這い回り、服が少しずつ脱げていくのに今までのキスとは少し違う、全身を貪っていくようなキスが体中にされる。
ふう、ふう、と慎次さんの息が肌に当たり始めた頃、私の膝が震え始めた。
追い討ちをかけるように、慎次さんが私を見て、据わった目をして呻く。
「見栄と、性欲と、金玉に振り回されてタラシこんで云々なんて時期はもう終わったんだよ。」
下品な言葉が聞こえて、逃げるなら今しかないと恐怖の部分が叫ぶ。
でも、逃げたくない。
好きだから、好きだとこういうことを皆している。
私だけが出来ないままだと、この先どうなるんだろう。
体を簡単に許す女だと思われて、大好きな慎次さんに飽きられて、その先はどうなるんだろう。
「慎次さん」
呼んでも返事が無い。
大きな手が私の体を這い、臍の下に触れた時に声が出た。
「う」
嫌悪からくる声だとすぐに分かってくれて、慎次さんが私を見る。
「やっぱり怖い?」
黙って頷くと、慎次さんは優しく笑った。
私の頬を撫でて、熱い頬が冷たい手に覆われる。
「そうだよな、無理しないで。なまえ、でも俺はなまえの感じてる顔が見たい。それは駄目?」
「なにするの」
「何を・・・って具体的に言う?」
顔をぶんぶん横に振ると、慎次さんがにやっと笑った。
いつもの笑顔だけど、余裕はなさそうだ。
ベッドに座ったままの私の足もとにしゃがみこんで、私を見つめたまま脚を何度も撫でた。

見えるのは、慎次さんの顔から肩だけ。
私からの返事を待つような手つきと目に、震える手で下を脱ぐ。
そっと脱いでいくたび、鼓動と肺が震える。
目の奥もぞくぞくして今にも叫びたくて堪らない。
パンツが見えたとき、大きな手がずるっと一気に脱がして足元まで服が落ちる。
恥ずかしがる間もなく慎次さんが私の股に顔を近づけたのを見て、顔から火が出そうになった。
「俺の相手はしなくていい。」
そう言った口から伸びてきた舌で、性器を舐められる。
息が詰まり、脚が強ばった。
犬のように性器を舐め始めた慎次さんを見て、何が起こったのか理解するために止まりかけの脳みそで考える。
じゅぱ、じゅぷ、と汚い音を出して私の性器が舐められ、その度に変な刺激がした。
自慰行為とはまったく違う刺激に、子宮が疼く。
こういう時って事前に風呂に入るんじゃないのか、女性が先に男性のを舐めるんじゃないのか、私の知ることと少し違う行為を始めた慎次さんを見ているうちに、頭の裏で火花が飛ぶ。
べろべろと舐められ、陰唇に慎次さんの髭が当たって腰が跳ねた。
逃がすかと慎次さんの大きな手に腰を捕まれ、音を立てられながら舐められる。
今にも叫びたくて堪らない気持ちが膨れあがると同時に、慎次さんが吸い付いては舐める肉芽も膨れていく。
恥ずかしくて堪らないのに、気持ち良い。
きつく目を閉じて耐えれば、慎次さんがわざとらしく吸い付いて性器を舐めあげた。
膣口付近にある愛液が舌で運ばれ、肉芽を覆う。
「んっ、ううう、ああぁあぁ」
叫び声が漏れ、背中が反ってから首筋が熱くなって、体の力が抜けていく。
ぼふ、と音を立ててベッドに倒れこんだ私に、慎次さんが股の間から声をかける。
「なまえ、エロい。」
声が体に響いてるのに、慎次さんは気にせず私の腰を掴んで脚をベッドに乗せて、私をベッドに横たえてから覆いかぶさった。
大きな手で性器を弄られ、また叫ぶ。
「声、可愛い。」
止まらない叫びがなんていうのか、知ってる。
けど、叫びには違いない。
太い指が性器を蹂躙して、私の指だけじゃ届かなかったところまで擦り上げるのが気持ちよくてたまらない。
大好きな人の手で体を快感に溺れさせ、大好きな人を見つめながら秘部から生まれる快感に縋る。
自慰行為じゃこうはならない、この感覚。
喘ぐ私を見て、慎次さんがにやけた目元で体を見下ろした。
「クリ好きなんだ、オナニーする時ナカ使う?」
「つかわ、あ、なあ、い」
「指入れたいんだけど。」
「あ、う・・・」
腰の力を抜いて、全身の力を抜いてから頷くと、慎次さんの指が体内に挿入された。
濡れたそこを指が行き来すると、ぐちぐちという音と共にずるずると膣壁が擦られていく感覚がする。
気持ちいいとは言いにくい感覚だけど、指の腹で膀胱側を押されると妙な感覚がした。
変な感覚に付きまとわれ、少しだけ頭が落ち着く。
気持ちいいのから変な感覚に慣れずに視線だけ動かすと、ズボンの上からでも分かるくらい勃起したものが目に入った。
慎次さんも同じなんだ、と安心する。
手を伸ばして、慎次さんの服の下にある肌を撫でた。
胸板にある突起を撫でて、もう片方の手で下腹部を撫でると慎次さんがいきなり焦り出す。
「え、いいって、なまえ、いいって。」
にやけた目元が、一気に歪んだ。
快感で頭が溶けたのかもしれないけど、面白くなった私は撫でる手を止めずに慎次さんがしたように体を撫でてみせた。
「嫌なら突き飛ばして抵抗してよ」
その言葉に、慎次さんが私の性器から手を離して服を脱ぎ捨てる。
脱ぎ捨てる動作をしている間に、疼く性器を抱えた体で裸の慎次さんに迫った。
驚いた顔をした慎次さんを押し倒し、勃起してるそれを間近で見る。
どういう形状なのかは知っていたけど、見てみるとまた違う。
きのこと比喩されるのも分かる気がする形の先は少し赤黒くて、真ん中が太い。
私の手よりは長いし、これが私の中に挿入されてどうなるか分からないし、これが慎次さんの恥ずかしい部分なんだと思うと楽しくなってきた。
「なまえ、そんな見られても困るんだけど。」
「見たら駄目なの?」
「駄目じゃないけどさあ・・・なまえ、ほら、腰こっち向けろや。」
え、と戸惑う私に慎次さんがにやけた目を向ける。
ベッドで寝転がったまま互いに腰だけを見る、そんな体勢になるけど、それはありなんだろうか。
多分ありなんだろう、と思いつつも渋っていると慎次さんが私の腰をそっと引き寄せた。
「あ、慎次さ、ね、ねえっ」
私の声に反応する間もなく、慎次さんが私の性器に吸い付いた。
熱い舌が先ほどよりも激しく動き、慎次さんの髭が臍下に当たり、荒い鼻息が性器に思い切り当たる。
「えあっ!」
変な声が出て、腰が震える。
大きな手が支えているおかげで崩れ落ちることはなく、慎次さんの口元を愛液で汚していくのが分かった。
太ももの間が濡れて、液体を下品に舐める音がする。
腰が震えるたび、慎次さんの髭が肌に当たってしまい余計に敏感になっていく。
「ああぁああぁあ、あっ、ああっ」
叫びは甘くなり、完全に喘ぎと呼べるものになった。
目の前にある男性器も、特に怖くは無い。
慎次さんと同じように口に含んでみれば、変な味がした。
自慰行為後に指を舐めた時の味と似たような味だけど、何かが決定的に違う味。
舌で先をぐるりと舐めまわした後、なにかのアダルトビデオで見たように咥え込んでみた。
喉がおえっとする、と思い歯が当たらないように舐めていると、性器の先からぬるぬるした何かが出ている気がして唇を離す。
透明な粘液が糸を引いただけで、精液ではない。
手で扱きながら形を見る余裕を与えないように、慎次さんが私の性器を舐めながら指で膣内を刺激してくる。
快感と変な感覚が同時に来て、息をすれば同時に声が漏れていく。
「あァ、ああっ」
「なまえ、クリすっげえ腫れてる。」
「だって、あ、あ、あ」
自分の声が恥ずかしくて、口に男性器を含む。
舐めてもしゃぶっても、下半身から伝わる快感に抗えない。
腰と脚の筋肉がピンと伸びたのを慎次さんが感じ取って、頭ごと私の太ももに挟まってくれた。
伸びた脚の間に、気持ちいいことをしてくれる舌がある。
「んんぅうう」
視界がぼやけそうになって、目をきつく閉じる。
もうイキそう、ああ、イク、一人でしてるときみたくイクのに、慎次さんがいるのに。
「うぅぅぅっ、んーっ!」
ああもうだめ、と男性器を口から離して、シーツを握り締めた。
慎次さんの手に支えられた腰が激しく痙攣して達して、焦がれ慣れた感覚が全身を襲う。
「ああァァあぁああっああ、あぁぁああぁ、あああ」
自慰行為だけでは絶対に出ない声が喉から溢れ出して、涙が出る。
熱を持った下半身を放り投げることなんてできずにグラグラした頭のまま何度も腰を振った。
敏感な性器に舌と髭が触れるたびに腰が跳ねる。
「あ、や」
掠れた声で呻けば、慎次さんが顔を太ももから離した。
動けない私に覆いかぶさって、はあはあと息を切らしている。
重い瞼の中にある眼球で慎次さんを見ると、口元が愛液でべたべただった。
「すっげぇキスしたい、キスしていい?」
頷くと、今までされたことがないくらい荒々しいキスをされた。
はっきり言って不味い味だけど、慎次さんの唾液が混じっているなら自分の愛液くらいなんてことない。
まだ勃起したままの慎次さんのそれに気づいて、唇を離して胸を寄せた。
わざとらしく胸を寄せたのに気づいた慎次さんが、私を見る。
「慎次さん、腰こっち、ここ」
男らしい慎次さんの腰をつついてから自分の胸の谷間を指差して、ここで、と目で訴えた。
「いいのかよ。」
うん、と頷けば目の前に腰が迫ってきた。
慎次さんが私の両胸を掴んで寄せてから、自分の唾液で濡れた男性器が胸の間に挟まって、慎次さんが腰を動かす。
胸の間が擦れて熱いけど、なんてことはない。
達してだるかった下半身が少しだけ落ち着いてきて、慎次さんの顔を眺める余裕が出てきた。
私のおっぱいの間で気持ちよくなっているのか、いつものにやけた目は消えうせて据わった色気のある目になっている。
いつもの慎次さんじゃないみたいで、可愛く思えた。
慎次さんが肩を震わせ、小刻みに腰を動かす。
首を少しだけ前に動かして舌を出してみれば、先っぽが触れた。
ぬるぬるしたものが糸を引いては先だけぶつかる光景に興奮したのか、吐息交じりに慎次さんが喘ぐ。
低い声で喘いで腰を振っている慎次さんを見つめながら自分の性器に手をやれば、すごく濡れていた。
性器に指を埋めれば、腫れた肉芽に当たる。
色っぽい顔をした慎次さんを見つめて、舌をひっこめて笑った。
「あは、慎次さん凄い顔」
心臓の上で擦られる男性器は形はよく分からないし、歯を当てずに舐めるのは難しい気がする。
この体勢だと慎次さんの顔が沢山見れるし、自分の両手が自由。
性器を自分で撫でて僅かな快感を得ながら慎次さんを見て、煽った。
「ね、私のおっぱい気持ちいい?ほんとにこれ気持ちいいんだ、あっついよ」
慎次さんが、喘ぎながら答える。
「どっち、かって、いうとっ、なまえ、顔、エロすぎっ・・・。」
ああぁぁ、と呻いた慎次さんが腰をかくかくと振って、胸から腰を離したと思えばすぐに乳房の先に精液をかけた。
「アッ!」
短い叫びを上げた慎次さんが息を吸いながら喘いで、男性器から何度かぴゅ、ぴゅと精液を出す。
少しの量を何度も出す光景に、釘付けになる。
一度に出るわけではないんだ、とまじまじと見ていれば、片方の胸が精液まみれになった。
思っていたより精液はぬるぬるしていて、胸を伝って脇の下に流れる。
見たことないくらい赤い顔で私の胸に精液をかけ終わった慎次さんが一息ついて、私の両手の位置に気づいて微笑む。
「なになまえ、俺の顔オカズにしたの?」
「うん」
片手を自由にして、精液に触れる。
ぬとぬとして変なもの、としか形容できない。
「精液初めて見た」
それだけ言えば、慎次さんが真顔になってから私を撫でた。
汗で湿った髪と額を撫でて、キスをしてくれる。
「そっか、そうだよな・・・。」
「ねえ、挿れなくてよかったの?」
「まあ・・・本音を言えば突っ込みたかったけど、なんか・・・なまえが怖がる顔はまだ見たくない。」
コンドームを使わないまま終えても、互いに達した後。
満足感があったのか、慎次さんは私に寄り添い、汗のあとを指で撫でた。
裸だけど、決定的なことはしていない。
でも、一応した。
精神的には体を許したものの、女性としての一線を越えてはいない状態はなんなのだろう。
それに名づける前に、慎次さんがぽつりと零した。
「セックスするの結婚してからにしない?俺ゴム嫌いだし。」
驚いて真顔になって、それから涙目になると慎次さんはいつものにやけた目元に戻った。
「なにその顔、オカズになりそう。」
私の知っている慎次さんがにやけた目元のまま、突然の言葉に驚く私にキスをした。






2018.02.06








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