肉欲の清適


最新刊ネタバレあります







ソファ型の大きな椅子に座り、項垂れるライナーの隣に座る。
大きな肩、腕、足、どれもが全て素敵なのだけれど、横顔はもっと素敵。
雄の目つきと鼻と顎に影を作る横顔が、どれだけ性的なのか男性は知らない。
帰還して間もないライナーは、私に対してだけは「あっちいけ、近寄るな。」とは言わないから、それをいいことにライナーに触れる。
筋肉で覆われた腕に触れ、ライナーの瞳を見つめる。
ぬる、と動いた瞳は私を捉えてから瞳孔を開かせ、微笑んでくれる。
大きな腕で抱きしめられ、ライナーの腕の中へ招き入れられた。
私にだけ、こうしてくれる。
ライナーは、私にだけ甘えてくれた。
この前連れて来た「ユミル」という女性は「おまえなんか絶対モテない!」と何度も悪態をつき、その旨を手紙にするとか言ってた気がする。
その「ユミル」はどうなったか、戦士じゃない私は知らない。
けれど、辛いことがいつも起きていることだけは分かる。
ライナーの顔の皮膚の下、その下の筋肉が変化していっていることだけは、私にも分かっていた。
戦士とは、細かく言えば何をしているのか、特にライナーのやっていることは苦難と困難が付きまとうだろう。
ライナーの厚い胸板の下にある心臓が締め付けられない世界に連れて行くことが出来たら、と何度も思えど、夢想にすぎない。
「どうだったの、って聞いて詳しく聞きたいけど、やめとく」
腕の中で言えば、すぐに逞しい声が囁いた。
「知りたがりなのに、聞いたりしない。なまえの良い所だ。」
頭を撫でられ、目を細める。
でも、したいのはこういうことじゃない。
ゆっくりと腕の中から抜けて、ライナーの頭を抱きしめる。
つむじにキスをして、息を吐き出す。
大きな手が私の首から下を這い始めて、胸元にいくつもキスマークを作る音がする。
欲情した吐息や声は不思議と聞こえなくて、耳に触れるのは如何わしい音のみ。
性よりも欲するものを、ライナーが求めているのなら、私は答えたい。
「私の前だけでは、戦士のこと忘れてほしいの。」
「でも知りたいんだろ、俺が具体的に何してやってきてるか。」
ちゅ、と音がしてから身体をゆっくり離され向き合う。
頬こそ赤くても、目元に欲情の欠片も浮かべないライナーを見て、胸が締め付けられる。
一体どんな思いをして戦士をしているのか。
戦士をして、どんな思いをしたのか。
なにをしてきて、なにをやったのか。
世には、正義と悪のふたつがあると思いがちだ。
正義の反対は別の正義、悪の反対は別の悪。
しかし、それらが逆になってしまえば人は簡単に壊れる。
理不尽に耐えられる人なんて、いない。
寂しさを薄めた感情を浮かべたライナーが、平気な顔をして私を抱き寄せようとする。
「あっちにいる間、なまえが夢に出るのなんのって・・・朝起きてパンツべたべたってことが何回もあった。」
「やだ」
笑って、身体をわざとらしく捩れば抱き寄せられる。
「コーヒーもねえし、飯なんて固いパンと不味いスープだけ、訓練なんかお遊戯会みてえなもんだ、アニなんかサボってたし、くだらねえよ。あっちで群れるうちに・・・俺は・・・。」
「ライナー」
名前を呼んで、引き戻す。
瞳は歪んでおらず、はっとした様子だ。
何度かこういうことがあるけど、戦士の宿命。
全て受け入れると思いを誓った日から、私はライナーの味方だ。
大きな手が、私の服の間に入り込む。
いつもなら受け入れるけど、問題がひとつだけあった。
今は昼間、みんな起きてる時間。
私の喘ぎ声が高いから夜だけにしようと約束したものの、いとも簡単になかったことにされてしまう。
嫌ではないけど、私の喘ぎがライナー以外に聞かれると思うと少しだけ気が引ける。
「危ないって、だめ」
拒否の言葉を口にした私をお構いなしに、大きくて熱い手が、私の下着の中へと潜り込む。
臍の下とライナーの手首が密着し、熱が擦れるだけで、肌から快感が痺れあがる。
ライナーの太い指が下着の中の肉壷をなぞった。
「ってもよぉ、なまえもこんなんじゃねえか。」
ぬる、と撫でられ逃げ場がなくなる。
ライナーが手を動かし、音を立てて愛液の滑りに任せて性器を撫でてくれるたびに、子宮が疼いて腰が跳ねる。
だめ、だめ、と言っても動く腰に、顔が真っ赤になった。
ライナーが私の手を掴んで、自らの昂ぶりに触れさせてくれる。
熱く、大きいそれ。
ズボンの下ではち切れんばかりに規律した男根に触れてしまえば、逃れることのできない興奮に覆われてしまうような身体。
私は、もう女なんだ。
「俺も、すげえし。な?」
「な?じゃないわよ!」
口ではそう言えど、お腹の中が締められるような感覚がして気持ちいい。
ライナーと出来るんだ、と期待に渦巻く身体を憎いと思ったことはない、この身体がある限り、人であれる。
身を任せよう、そう思った時「静かに。」とライナーが囁いた。


耳に神経を集中させれば、人の声がした。
ライナーの聴覚が私より敏感だったおかげで、間一髪大きな椅子に寝るような耐性を取られる。
私の性器にはライナーの手、私の頭の下にはライナーの胸板。
そしてすぐに、ガチャリとドアが開いた。
ドアから椅子までの距離はある。
まだ致していないので、匂いで気づくこともないだろう。
冷や汗が熱い頬を伝い心臓が冷える。
幸い靴は履いたままなので靴があるのを見られて、ということはなさそうだ。
いねえのか、と呟いた誰かが、部屋の引き出しを調べる音がした。
「この棚なんだけど・・・あ、これ?かも。」と独り言を撒く声がするので、すぐに危機的状況は終わりそうだ。
安心した、その瞬間。
ライナーが中指の腹で、優しくクリトリスを触り始めた。
触れるか触れないかの力で、男性器と同じように勃起するそこを触る。
最中に触られようものならすぐに達するか潮を噴くので、あまり触らないでと言っている場所。
目の前に火花が散るような感覚が一瞬してから、目をきつく閉じた。
声を出しちゃいけないと耐えると、中指はクリトリスを虐めるように擦り始める。
顔が見えぬ来訪者が棚を漁り「あ、これか、ライナーに先に聞けばよかったじゃん・・・中身確認しよ。」と独り言が聞こえているのに跳ねる腰を止められず、頭の中がめちゃくちゃになった。
弱いと知ってるからこそ、今の状況で触りだしたのだろう。
ああ、やめて、と声も出せずにいると、正直な部分はすぐに硬くなり始めた。
コリコリして小さいそれは、責められたら大変。
恥ずかしい、ほんとはこういう風に触られたくない。
けど、相手はライナー。
嫌じゃない、けど、これはどうにも快感の行き着く先がわからなくて困る。
鼻から息を吐き出す音が大きくなりそうになるのを押さえ、黙って弄られる私の耳を、ライナーが食む。
ぞくりとしても、一番の性感帯を独り占めされてることのほうが大きすぎて刺激には及ばない。
腰が何度跳ねても見えないくらい大きな椅子だったことが救いだ。
指の腹で撫で、軽く扱き、つつく。
細かい動きをライナーの太くて大きな指にされているだけで、雌の部分に火がつく。
子宮が涎を出しているのかというくらい濡れ始めたそこが、下着の中で愛液の溜まりを作っているのを皮膚で感じた。
下着を脱げば、愛液が零れるんだろう。
めちゃくちゃにしてと理性なく叫びたくなるのを押さえ、快感に埋まる。
硬くなってきたクリトリスから指を離し、すぐしたの肉壷の入り口あたりに指を沈められた。
液体のようになっている性器から愛液を指につけ、ぬるぬるした大きな指先が私のクリトリスを蹂躙する。
ぬめりで弄りやすくなったのか、服の下にあるライナーの手は小刻みに動いているし、何より目の前がくらくらする程の快感が身体を離さない。
つるつると撫でられるだけで勃起したそこに被る包皮を慣れた手つきで剥かれ、腰が跳ねる。
剥きだしになった敏感なそこを、滑る指の腹で撫でられた。
声が漏れそうになり、歯を食いしばる。
太もものあたりに硬いものが当たっているけど、それどころじゃない。
大きな腕が身体にかかっているから、動いたって無駄だ。
外ではまだ誰か話していて、気が遠くなる。
鼻息荒い私を気遣ったのかライナーが手を止め、性器から手を離した。
熱が篭り、そこだけ燃えているよう。
冷たい酸素を求めて何度か呼吸すれば、ライナーがこちらに顔を寄せキスをしてくれた。
乾いた唇の中にある舌は唾液まみれで、私の唇まで濡れる。
歯列を割って入るライナーの舌に応じていると、手は再び下着の中に潜り込んだ。
下半身が溶けそうなのに、これ以上ないくらい気持ちよかった。
来訪者はお目当てのものを見つけたようで、棚を閉める音がする。
安心したのもつかの間、ライナーの大きな指がクリトリスを潰すように撫でた。
声が出そうになり、全身が震えだす。
快感により意識が飛びかけた、その時だ。
「ライナー、そこで探し物に来た俺を無視して狸寝入りしてるくらいならさあ、俺のこと手伝ってくれたっていいじゃん。」
それだけ言って、来訪者は去る。
ドアが閉まる音と同時に、私は達して潮を噴いた。
がくがくと痙攣する身体の下にはライナーがいるのに、止まらない。
耳元でライナーの興奮した吐息が聞こえ、それに反応してまた達する。
決壊したような性器のある腰は震え、液体を噴出させた。
何度も腰が跳ね、服から潮が滴り落ちる。
ぼたぼたと潮が椅子に落ちる微かな音がしてもなお。指先どころか爪先でいじるような手つきで弱い刺激を与え続けられて、小さく悲鳴をあげた。
「あぁああぁ、もう」
やっと出た声は、自分でも驚くくらい厭らしい声だった。
「も、おわり?」
「いや、まだなまえが足りない。」
ライナーが私を起こし、だるくなった足に触れる。
「なまえのこのエロい匂い、これが何回夢に出たと思ってんだ、濡れまくってるここも夢に出たぞ。」
「やだもお、ライナーえろい、やだ」
快感で耐えられない腰を震わせたまま喘ぐと、ライナーが私の頭を撫でたまま見つめる。
「本当に嫌だった?」
ちがう、と首を振ってから「やりすぎ」と掠れた声で囁いた。
ライナーが、ようやく欲情した瞳になる。
私もライナーも昼間だというのに服を脱ぎ散らかし全裸になった。
熱い身体は服を脱いだくらいじゃ、どうにもならない。
ライナーの指が、大きくなったクリトリスに触れた。
クリトリスの付け根に触れられ、ライナーのペニスで擦られる。
擦られるたびに、下品な喘ぎが漏れてしまう。
「ほらよ、なまえのちっせえちんこと俺のちんこがキスしてる、見えるだろ?おい。」
「もおおぉ無理っ、むりっ、ひぃっ、っくぅ」
いやいやとしてから、自分から股を開く。
「も、いい、もいいよ、ちんちんちょうだい」
「おう、いいぞ。」
ライナーが征服欲を感じて微笑み、私の性器を見る。
異物感が、じわじわと挿入されていく。
半分ほど挿入されたあたりで、ライナーは私の顔を見る体位を取った。
挿入されたペニスに感じて、腰が跳ねる。
まだ動かされてもいないのに、気持ちいい。
「ライナー、きもちっいいっ好きぃ!!あそこ、いいっ、良い良い良い良い!!」
「俺も、なまえ、好きっ。」
ぱくぱく動く口元を塞ぐようにキスされて、ライナーの首を抱きしめる。
震える腰の中にあるライナーのペニスを溶かしそうなくらい愛液の溢れるそこから、汚い音がした。
膣に力を入れれば、水がだらしなく噴き出る音がする。
尻を伝う液体が何なのか気にもならない。
性が繋がる音、におい、感覚、温度、感情。
それらが全て愛しい。
感じればすぐに潮を噴出す性器からは水の音もするし、相当なことになっているだろう。
ライナーが苦しそうな顔で何度も腰を打ちつけ、肉のぶつかる音がする。
ぬちゃ、ぱちゅ、ぱん、ぱん、聞けば何の音が子供じゃない限り分かる音。
揺れる胸に尻は、本能のまま。
ライナーの顔は快感に歪み、呻きながら私の膣内を蹂躙した。
短く喘ぎながら私を貪るライナーが愛しくて、何度も喘ぐ。
達しすぎて膣内がどうなってるのか、男性のライナーのみが知る。
「っあぁあぁ、なまえの中、やべえっ。」
揺れる腰の中の肉壷で、何度も何度もライナーのペニスが行き来する。
ライナーが快感に顔を火照らせ、僅かに喘ぐ。
この顔が、とても好き。
私の体を食いつくすようにピストンするライナーは犬のようで、動物のようで、私に甘えているようで、可愛い。
もし、ライナーを性と愛で可愛がることが罪と言われようと、絶対にやめない。
荒い吐息が、私なのかライナーなのか分からなくなってきた。
私の身体の奥を目指すライナーのペニスに子宮を突かれるたびに臓器が揺れ、心地いい。
腰の動きが早くなって、かくかくと動き始めたらすぐに達した。
私を強く抱きしめ、ペニスを根元まで挿入してくる。
「あああっ、なまえ、すき、あああ、おおっ!」
大きな身体が私に縋り、射精する。
液体の中に射精された感覚がして、殆ど分からない。
私に抱きつき射精の快感に甘えるライナーを抱きしめ撫でるたびに、幸せが募る。
種は運がよければ赤子になって、もしそうなったら誰になんと言われようとライナーが生きた証を産む。
そういう思いでしているけど、ライナーは戦士。
いつ死んで、消えてしまうか分からない存在。
尊く、勇ましく、要となる戦士が生きた証を女は産める。
だからこれでいいと考えていると腰が揺れるのが収まり、呼吸も落ち着き始めた。
尻は熱いし、首の辺りは汗まみれ。
安息の肉欲に浸る私とライナーは抱き合ったまま、体温で温まりあう。
逞しい背中は、私一人じゃ全部抱きしめられない。
だから、私は女として産まれライナーに巡り合った。
はぁはぁと息をするライナーを撫でてからキスをすれば、舌が絡まりあう。
唾液の交換にも等しい行為を、こんなにも愛しいと感じるこのひと時のために、生きている。
でも、思うことがあった。
「さっきの人、戦士長さん?」
「ああ・・・そうだ・・・。」
掠れた声のライナーを抱きしめ、繋がった性器と密着する体温を感じ取り、冷たい空気を求め顔を逸らす。
昼の日差しが、部屋の中に射しこんでいた。







2017.04.10







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