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発掘しました2016.04.11








いつもエルヴィンさんが使っている机の下や引き出しを漁っていた。
引き出しは書類やなにやらでびっしり。
すこし黴臭い。
随分と前から掃除もせず使い続けているのだろう。
黴臭い中に手をつっこんで、紙束の間や、まとまった書類の間に手を突っ込んでいく。
重要機密を盗もうとか、そんなんじゃない。
「ないなあ」
黴臭さを鼻に残したまま、机から体を引いた。
こういうところに無い、となると。
視線を本棚に向けた。
本棚の本の背表紙を、ひとつひとつ凝視していく。
どれもこれも真面目そうな本で、古びている。
古書の類も、少しはあるのだろう。
ふと、通り過ぎようとした一つの本棚に、新しい背表紙の分厚い本があった。
背表紙と、にらめっこする。
私の勘がこれだと言っている。
勘を信じて、そっと本を取った。
見た目は普通の大きな本だったけれど、大きな本は、本の形をしたケースだった。
空洞の中に、何かが入っている。
開くと、お目当てのものが出てきた。
「へえ、随分いやらしいの持ち込んでるじゃん」
本の題名からしてもうアレな、卑猥なものがいくつも収められている。
中身は官能小説が主だった。
床に座り込み、ケースから取り出した一冊を適当に開いて読んでみる。
「あー、ねちっこい」
思わず感想を呟いた。
描写に出てくる女性が全て胸が大きい気がするけど、趣味なのか、そういうものなのか。
「ああこういうの、好きそうね」
小説内の描写を見て、納得してしまった。
ぱらぱらと読み、官能小説の描写に感心しては、また別のものを読む。
なんとなく感じが掴めたあと、本をそっと閉じた。
「なんだよ、エロ親父じゃないの」
エルヴィンさんに対する率直な感想を述べた。
本を元の場所に戻し、中にあった本を手にとる。
私は、にんまりと笑った。

夜になると、エルヴィンさんは三時間ほど寝てからシャワーに行く。
業務のあれこれにすこしだけ手をつけて、また朝まで寝る。
その業務のあれこれを手につけたあとに、大体構ってくれる。
私もその時間帯を狙って、部屋に行く。
すぐ抱き合ってしまうし、たまに疲れたエルヴィンさんを抱きしめて寝るだけということもある。
エルヴィンさんは最近キスをしながら、お腹を撫でてくる。
くすぐったくて、気持ちいい。
私のだいぶ伸びた髪も、触ったりして楽しんでいるようだ。
相変わらず背中が好きなようで、撫でられたり、舐められたりもする。
「エルヴィンさん」
私は、官能小説で読んだことをそのまま実行することにした。
首に腕を回し、舌を絡めるキスをしたあと、唇ごと吸うように舌を誘い、口腔を舐める。
慣れてきた行為に対しては、それほどまで恥ずかしくない。
首筋、胸板、腹筋とキスしていって、パンツの真ん中が盛り上がってる股間にいくと、私はそのまま体からするりと抜けて、しゃがんだ。
エルヴィンさんをベッドに座らせるようにして、足の間に体を向ける。
私がパンツに手をかけて降ろすと、早々に起立していたであろう逸物が目の前に現れた。
何度見ても、男の人のこれは未知のものとしか言えない。
女同士以外の性行為は、ぜんぶこれを使うのだから未知のものというのはおかしいのだろうけれど。
口を開けて、舌先でそれを舐めあげる。
「ん、ふう」
頬張るように咥えながら、頭ごと動かす。
非常に顎が疲れるけれど興奮する行為に、わざと音を出した。
じゅぽ、じゅぽ、とか、そんな下品な音。
口の隙間からどうやって音を出すのかは、なんとなくわかっていた。
私はエルヴィンさんの足にしがみつき、咥えて口元がドロドロになったまま、足に股を擦り付けた。
腰を動かすたび、性器に足の指が触れる。
筋肉質な足に体を擦り付けて、咥えたものを舐める。
女の私からしたら、特になんてことはない行為。
ふとエルヴィンさんを見た。
目がすこし見開かれ、その上息が荒い。
どうしよう、ものすごく興奮している。
その様子に、最早楽しくなってきた。
エルヴィンさんの足首あたりに性器を擦り付けながら、咥えてしゃぶった。
膝に胸を乗せて、わざとらしく動く。
舌を出して、そのまま舐め上げてから、ある意味未知の場所である性器の根元にある袋を舐めた。
官能小説に書いてあったことだから、正しいのかはわからない。
独特の匂いが鼻についたが、匂いがない性器なんてない。
袋を舐めたり咥えたりして感覚を楽しんでいると、エルヴィンさんがそっと私の後ろ頭を掴んだ。
「なまえさん、そのまましてくれ。」
見上げると、かなり興奮したエルヴィンさんが、見下ろしていた。
「そのまま、咥えて、こっちは、手で触ってくれ。」
言われたとおりにして、従順なふりをした。
腰を足に擦り付ける、足で自慰行為をするような動きをしたり、膝に胸を押し付けたり。
舐めることに意識を集中させていたところに突然、下半身のほうに感覚が走った。
足の指で、性器をまさぐられている。
この体位じゃ見えないところだから、当然あまり気持ちよくない。
だいぶ余裕が出てきたので、官能小説にあった台詞ひとつひとつを思い出して、良さげなものを喋ることにした。
「んあ、気持ちいいよお、もっと」
なんと自分らしくないのだろう。
それでもエルヴィンさんのほうは、それでいいらしい。
「私もっ、いい・・・」
掴まれてた後ろ頭を、ぐっと押さえられる。
私の口の中に、精液が注がれた。
唇の端から垂れないように、吸い付く。
口の中に射精されてる間、私はエルヴィンさんを見つめていた。
先端をしゃぶり、唇で最後の一滴を吸い取る。
「美味しい」
本当は地味に苦いけれど。
唇を指で拭いていると、エルヴィンさんはすぐ、私をベッドに引きずり、股を開かせた。
すぐさま、性器を舐められる。
なんでこんなに急かしているのか、よくわからない。
それほどまでに興奮しているのだろうか。
「濡れすぎじゃないか。」
私の股を舐めながら、意地悪そうに言う。
「私を誘っている間に、想像して濡らしてたのか?」
「そうだよ」
「なまえさんは、いやらしい子だったんだな、知らなかった。」
まあ官能小説参考だ、とは言わなかった。
私が濡れているのを見て、普段より余裕なく挿入してきた。
そのまま、すぐに腰を動かし始める。
本当に余裕がなさそうだ。
脊髄反射のふりをして、声をあげる。
「はあ、ああ、気持ちいいよ、ああ!」
体が揺さぶられる感覚に合わせるように、声をあげた。
「わかるか?凄い音だぞ、なまえさんの、中にっ、私のが・・・」
どれだけ興奮しているのだろう。
いつもは言わないようなことを、お互いに言い合っている。
行為自体は普通なので、問題はない。
「中に、エルヴィンさんがいっぱいだよっ」
ひとつひとつ、読んだ台詞を思い出しながら喘ぐ。
実際こんな言葉を行為中に言うと、とても恥ずかしい。
「ああ、やだあ、とまんないっ」
わざとらしさを残しながら、肉芽を触ると、私の手にエルヴィンさんが触れた。
「そこが気持ちいいのか?」
「気持ちいい、気持ちいいよっ、でもエルヴィンさんのあれが、一番気持ちいいのっ」
両手で腰を掴まれ、激しく腰を打ち付けられた。
「んああ、はっ、あ、」
圧迫感に耐え切れず、いつもの声が漏れる。
すこし前までなら、この圧迫感が痛かったけれど、今は痛くない。
体がエルヴィンさんに慣れたのだろう。
「もうエルヴィンさんじゃなきゃ、気持ちよくなれないよっ」
半分本当を混ぜたことを言うと、エルヴィンさんが反応した。
「私でしかイけないと?」
「イけないよぉ、一人でしてもエルヴィンさんのこと考えなきゃ気持ちいいのできないの」
まあ、これも本当ではある。
肌と肌が打ち付けられる間隔が多くなって、そろそろ達しそうなんだな、ということがわかる。
「なまえさんっ、君は、はあっ」
エルヴィンさんの体が屈んで、腰が短い動きをする。
「っう、なまえさんっ」
私の名前を呼びながら中に出すのは、何度かあったけれど、どれも相当興奮してた時だった。
中にじんわりと広がるものを感じたあと、エルヴィンさんが小さく喘いだ。
この人が少しだけでも喘ぐなんて、珍しい。
しばらく互いにぐったりしたあと、軽くキスをした。
「どうしたんだ、いきなり積極的になって。」
エルヴィンさんに頬を撫でられる。
私はそっと、枕の下に手を入れた。
「いやそれでこれなんだけどさ」
私は枕の下から官能小説を出した。
エルヴィンさんが固まる。
顔つきが、凍るように、石にでもなったかのように固まった。
そして、そっと笑い出した。
よかった、怒られなかった。
「うーんとさ、私は巨乳じゃないけれど、よかったの?」
内容を思い出して率直な感想を述べた。
エルヴィンさんがシーツに顔を埋めて、静かに笑っている。
その笑顔が見たくて、肩を叩いたら、笑顔が見えた。
「好きな女性にあんなことされたら、もう堪らないぞ?」
「そっか」
適当に本をめくってみたら、そっと取り上げられた。
「まあ、あの、演技だけど嘘は、言ってないから」
恥ずかしいフォローを入れると、エルヴィンさんが目を丸くした。
照れくさいので、またシーツに転がる。
なにも着ていないので、すこしだけ体が冷たくなっている。
熱が治まると、いつもこうだ。
「よし、次はなまえさんが一人でしてるところでも鑑賞しようか。」
「えっ」
突然の発言に呆気にとられていると、エルヴィンさんが私の上に覆いかぶさった。
「私は見てるからな。」
「・・・わ、わかった。」
恥ずかしさに体に火がついたけれど、エルヴィンさんの手には官能小説がある。
私もエルヴィンさんも、きっとどっちもいやらしい。





2013.08.05






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