気怠い足





お題 唯我を足コキする





寝ている間に何を見ていたのか、思い出せない。
苦なく起きてしまえば直前の脳内のことを覚えているけど、目を開け感覚を目覚めさせると重さを感じて、その方向を見る。
私の太ももあたりを枕にして、尊くんが寝ていた。
柔らかい頬とさらさらの髪の毛が太ももに触れて、くすぐったい。
暫し見つめていると尊くんの片目が開き、にやりと笑う。
こんなときでも偉そうに笑うことを忘れない尊くんは、やっぱり尊くん。
「なまえさんの足、気持ちいいです。」
寝なおすように私の足を枕にする尊くんを横目で見ながら寝なおすと、尊くんも同じように寝る。
「だからって枕にしない」
「ボクは見る目がありますからね、枕にしないわけにはいきません!」
「私は枕じゃない」
寝言のように漏らすと、尊くんの偉そうな顔が浮かぶような声が聞こえた。
「柔らかいけどハリがあって温かくて、なまえさんの匂いもして気分よく眠れるし、フランス製の安眠枕よりも寝心地がいいんです。」
「なんでフランスなの」
「使っているものより数段柔らかいんですよ、足の付け根の下が一番いいと思います。」
「まったくわからない」
「固すぎず柔らかすぎない感触が首に優しいです。」
フランス製と比べられ、勝ったようだ。
起きたばかりで眠気が取れず、いつものように弄り倒す妄想だけして目を閉じた。
偉そうな笑顔を困らせて涙目にさせて、猫のように甘やかす。
やめてくださいと言いつつも私の腕の中から去らない様子は何度見たか分からない。
太ももに頭を乗せている尊くんは、年齢を考えると甘えるのは珍しくなる年頃。
重さが消えないのを感じて、手を伸ばして尊くんの頭を撫でる。
甘えちゃって、と頭を撫でると男の子の顔をした。
「ボクだって甘えてるばっかりじゃないんですよ。」
「じゃあ離れて」
「嫌です。」
足の間に手を突っ込まれたので寝返りを打つと、這ってきた尊くんに抱きつかれた気がした。
視界を広げて確認する気力も眠気に押され、構ってほしいのを見越して何も反応しないでいると、肩に顎を乗せられ腕をぽんぽんと触られる。
「来週は予約したレストランに二人で行く約束じゃないですか!」
「うん、行くね」
「何色のドレスを着るんですか?」
「赤」
おお、と歓喜の声をあげた尊くんが何を考えてるのかは知らない。
赤いドレスは家にあって、正直なところ尊くんが予約するクラスのレストランというと、ドレスを買いなおしたほうがいいような気がする。
尊くんと違って無駄遣いはできないので、あのドレスに合わせるものだけ買っていこう。
家にある赤いドレスに、ブランド物のネックレスとクラッチバッグを身につけるかと脳内でおさらいをした。
おさらいも眠くて上手くいかない。
眠気が飛ぶまで考えるのをやめるべく、腕で顔を隠した。
背中を伸ばして太ももにいる尊くんを落とせば、頭が起きるかもしれない。

「ねえなまえさん、ボク思うんですけど。」
そう言って尊くんが起き上がり、寝起きで鈍く動く私に話しかける。
腕が伸びてきて、私が何も見ずに身体を動かしたせいで尊くんの腕が私の胸に当たった。
手首が、ちょうど胸の先に。
「あんっ」と漏れた声を聞いて、何か言おうとしていた尊くんは固まってしまった。
すこし恥ずかしくなって、身体を動かすのをやめる。
聞こうとしてきた内容も確認しないまま、何もなかったようにしていると尊くんの赤い顔が視界の隅に入った。
霞んでいく視界を閉じて、胸を隠す。
赤面した尊くんを張り倒さない選択をして、寝た。
考えるのをやめて寝なおそうと動かずにいる私の髪の毛先を触る尊くんが、私の頬をつつく。
無視していても何度もつつかれるので仕方なく片目を開けて見ると、赤い顔が問いかけてきた。
「ボク、まだ何もしてませんよ。」
「うん」
「そうですよね、ボクは何もしてないです。」
「何もしてないよ」
肩の上にある顎が、僅かに動く。
「女の人って、皆おっぱいが気持ち良いんですか?」
眠くて動かないのをいいことに、好きにしようという魂胆が見える。
声帯も起きないまま寝返りを打って、赤い顔をした健全な男の子をからかった。
「尊くんも慣らしたら気持ちよくなれるよ」
手をにゅるっと伸ばし、尊くんの胸を弄る。
突然のおさわりに胸を押さえた尊くんが、またかと言いたくなるほど見ているお決まりの涙目になった。
「ボクが!?そんな卑猥なことをボクに仕込んで、日常生活の隙間に快感を与える気ですね!シャツが着れなくなるじゃないですか!」
「どこまで想像したかは聞かないであげる」
「隙を見ればボクを虐めるなんて、どこまで酷いんですか。」
口では拒否しつつも、私の手の届く範囲から逃げない尊くんを撫でなおす。
「好きな人に触られたら、どこでも気持ちいいよ」
撫でるたびに目を細める尊くんを構うと、生意気な表情が薄れていく。
「そうですね。」
甘やかされることに嫌悪を向けないところは、まだ普通の男の子だ。
「なまえさんに触ってもらうのが大好きです。」
尊くんの髪を通り過ぎ、顎を触り、首の下を掻くように撫でる。
「どう?」
「くすぐったい、です。」
顎の下から首に移動して、うなじに軽く触れた。
乾いたシャツの隙間に指が挟まり、体温が伝わる。
指をそろそろと這わせ鎖骨の下から腋に手を移動させると、反射的に身体を反らされた。
「そこはやめて、やめっ、ははは!」
「弱いのはどこだー」
「分かってるんでしょう、やめてください!やめっ、やめ、はははは!くすぐったい!」
しつこく腋をくすぐっても、本気で逃げず叫んではシーツの上を転がる。
逃がさず、またくすぐる。
次第に一番重い眠気が遠のき、意識が定着し始めた。
腋から10cm下、そこから腰の方向の斜め下を撫でてから距離を詰める。
転がって笑う尊くんを追い詰めるように腰骨の下を揉むと、声を荒げた。
「んっ!」
我慢するような声を聞いて、感覚を追撃する。
両手で腰骨を撫で、細い腰のラインを描くように撫でると、肩を縮ませた。
「ん、なまえさんっ、そこは。」
「そこは?」
「やめて、あのあの、あの、きょっ、拒否しますう!!」
暴れたことで緩んだシャツの隙間から指を忍ばせ、どこかの痴漢のように触る。
悪戯のように肌を撫でては反応を見ているうちに眠気は少しずつ飛んだ。
背筋を指の腹で撫でながら、尾てい骨に向かって撫でる。
段々と気づいてきたのか、尊くんが目を潤ませて跳ね退こうとシーツの上をまた移動した。
逃がすわけもなく胴体を捉えると、尊くんが首を振る。
「やっぱりなまえさんはえっちだ!ボクを同じようにえっちな奴にしたいんだ!」
「その通りですって言ったらどうする」
「変態です!なまえさんは好事家の変態です!誰が何と言おうと変態です!!」
毛布に突っ込み呻く尊くんの耳元で囁き、お腹を撫でた。
「私の前ならエロでもアホでもなんでもいいわよ」
「アホってなんですか、アホって!」
皮膚の下に浮かぶ歳相応の腹筋を指で確かめたあと、シャツのボタンを外す。
うなじと首筋に何度もキスをしていると、暴れていた尊くんの動きが止まった。
顔を毛布に埋め、うつ伏せのまま後ろから伸びる私の手に脱がされていくうちに恥ずかしくなったようで、荒い息を隠そうと必死だ。
「ん、ふ、なまえさんだめだめだめ、だめ。」
「エロいことするよ」
「なんでこんなボクが間抜けみたいなことに。」
いやいやと首を振りながら可愛いことを言う尊くんを、ひたすら弄る。
ベルトを外そうと手を伸ばすと、ご丁寧に腰を浮かせた。
細い腰の隙間からベルトを取り外し、ズボンを緩める。
毛布と一体化しそうな顔を伺うべく耳にキスをすると、背中を反らした。
「あっ!や、あああ。」
埋まりかけている尊くんの肩を動かすと、案外簡単に動いてくれた。
力の入った腕で顔を隠して、事に耐えようとしている。
「あっ、やめてやめて、恥ずかしいです。」
はだけたシャツから見える細めの体を触ると、薄い色をした皮膚の下から熱が沸く。
じゃれあいの延長を放棄せず、下着はそのままでズボンの隙間に手を入れた。
跳ねた腰を押さえつけ、ひたすらに触る。
撫でるたびに反応する尊くんが腕の力を緩めて、今にも鼻水を垂らしそうな顔で私を見た。
「やめてえ・・・。」
まだ眠い目をした私に何を思ったのか、柔らかすぎる否定をする。
起き上がって座り込み、足を尊くんに伸ばす。
足先でズボンの裾を掴んで下ろしても、手は飛んでこなかった。
革のベルトは皺も寄らずに放置され、金具とシーツが触れる音がする。
足の裏で下着の中にある盛り上がった部分を撫でると、尊くんの目線が一瞬留まった。
手の平とは違う場所で揉むと、腰に力が入ったあと足がまっすぐに伸びる。
膝上で引っかかったズボンから見える足が動いて、言う事をきく。
下着に触れずに挑発すると、ようやくこちらに手が伸びてくる。
足を叩かれるかと思えば、自ら下着を下ろした。
露になったことが相当恥ずかしいのか、早くも目に涙が浮かぶのを見て早速虐める。
熱の塊を足の裏で挟み、軽く扱く。
土踏まずの間に滑りを感じてから、足首を動かすと尊くんが熱に支配されたようで、目が潤む。
ずっと続けていれば足首の筋肉痛は確実な運動に僻しても、煽られるような可愛い顔を見ればどうでもよくなる。
足の指で揉むようにペニスを扱くと、涙目の尊くんが喘ぐ。
「なまえさん、すき・・・。」
嫌だの駄目だの言っていた口が、蕩け始める。
気を良くして気持ちがいいように扱けば、足首を鈍く疲れが覆った。
軽く挟んだまま足が疲れそうな動きをすればするほど、尊くんの目元が潤んでいくのを見て、つい期待に応える。
苦しそうに動く胸を見つめて、日焼けもしなさそうな肌を見た。
真っ白ではなくても、不健康な色はしていない。
白い首が赤くなっていくうちに、喘ぎが聞こえる頻度が多くなっていく。
足先から感じる性的興奮で子宮を疼かせるよりも先に、喘がれる。
毛布の匂いよりも性的な匂いが強くなれば強くなるほど、尊くんの顔が茹でられた。
「きもちいですう、なまえさん、きもちいっ、ボクばっかりこんなっ。」
蕩けた顔を近くで見るべくペニスから足を離し、尊くんの膝を舐めた。
汗の味もしない清潔な足に舌を這わせれば、正気になったような目つきをされる。
反応する足を掴んで膝からその裏側までを舌で嬲り、何も掴んでない手で尊くんの胸に手を伸ばす。
「っあ・・・う・・・。」
「尊くんも、おっぱいはすこし感じるでしょ?」
してみる?と目で合図して硬くなった乳首を指でつつくと、尊くんはいやいやと首を振った。
「やだっ・・・ちんちんがいいっ・・・!」
上気する頬と額にかかる髪。
鷲鼻のおかげで顔に影が出来たときの目元が好き。
加虐心を煽るような顔と、表情が、私に乞う。
言う事をそのままきいてあげて足でペニスを扱くと、足の裏に粘液が垂れた。
拭かないと後々残念なことになるのに、自分の足の裏が熱いように思えて、それからペニスが動く。
僅かに跳ね、尊くんの焦点が合ってない目に涙が浮かんだ。
「ボクばっかりじゃやだ、やだっ、きもちいっ、ごめんなさいっ。」
「なんで謝るの」
「かけちゃっ、うう、ごめんなさいっ。」
尊くんの手が私の足を掴んだあと、手の平で自らの精液を受け止めた。
手の平から垂れた分が、私の足に垂れる。
瞬時にべとべとになった足を見て、どこかに拭くものはなかったかと部屋の中を回想した。
枕元付近にウェットティッシュを用意しようと思うも、遅い。
足は精液で汚れ、シーツを汚していないか後で確認しないといけないような状態になった。
ベッドの近くのティッシュで軽く拭いてから、バスルームに行くしかない。
冷静な頭で所々に白いものがついた足を股の間からどけて、垂れないように足を上に向ける。
足の薬指の間の窪みに垂れる精液が落ちる前にどうにかしようと尊くんを見ると、涙目のまま息を切らしていた。
精液まみれの足を差し出すと、尊くんが上目遣いで私を見たあと、赤面した熱の塊のような頬と唇を近づけ舐める。
白濁の液体が薄い唇の中に誘い込まれ、舌の上で溶けていく。
苦いとも不味いとも言い出さず、興奮に頭を垂れる尊くんが愛しい。
「尊くん、いい子」
足を舐めてくれる尊くんの頭を撫で、下着を履かせたあと額にキスをした。
悔しいのか恥ずかしいのか、眉を下げて泣きそうになっている尊くんが今だ眠そうな目をした私を見る。
「へ、へっ。」
「ん?」
「なまえさんはやっぱり変態です、いじわるです・・・。」
これほどまでに、心に響かない罵りがあるだろうか。
泣きそうな顔で精一杯の現状位置抵抗をした尊くんを、追い詰める。
「その意地悪変態の足でアンアン言ってたのだーれだ」
追い詰められた尊くんが耳まで真っ赤になり、ズボンを上げながら突っ伏したのを見て足をひっこめた。
「ねえ、さっき何を言おうとしたの」
「ああ、ドレスのことです。」
「なに?」
毛布から顔を動かして、片目だけで見られる。
頬の赤みは取れていないものの、涙が消えた目をしていた。
「行き着けの店があるので、そこで気に入ったのを買ってくださいって言おうとしただけです。」
「その話、恥ずかしいの終わったら聴いていい?」
首に汗をかいた尊くんが毛布の中に頭だけ入れたのを見て、思わず笑う。
添い寝のように寝転がり尊くんを抱きしめると、僅かな力で抱きしめ返された。






2015.09.30





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