ティースプレイ




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カゲさん女子に甘い?同性にはキツく異性は黙って守りつつ同性と喧嘩するタイプ?と思ったネタ
サドとマゾと痛いのと苦しそうなの注意







扉の開く音と、細身の彼が部屋に踏み込む音が聞こえた。
「おかえり、雅人くん」
「おう。」
そのあとに、ただいまと続けようと思ったのだろう。
私がいるのに何故か暗い部屋に電気をつけた音がした。
安物の手錠と目隠しをしてベッドに仰向けに寝転がる私を見て、驚きもせずに吐き捨てる。
「なまえ、いつからその格好してんだ。」
「30分前から」
暗い目元で、鋭すぎる眼差しと目立つ歯を想像する。
外から帰ってきたのなら、汗の一つは流したはず。
暑かったのか寒かったのか聞きもしないで置物になりかけている私に、また吐き捨てた。
「新しいスタイルで掃除のババアびびらせてんのかと思った。」
「清掃の人は夕方に来ないよ」
ガサガサとビニール袋を弄る音を聞いて、帰りに何か調達したのだろうと思った。
外の匂いがする雅人くんが泊まった部屋を急遽出ることになったのは、いつも通り突然の作戦会議の為。
それ自体はよくあることなので、致し方ない。
遠くまで来ていないこともあって、断らせなかったのは私。
隊の収集に借り出されて一時間半。
時間が余計にかかっているのかそうじゃないかなんて、分からない。
かつての同級生の名を出し、世間話を持ちかけた。
「光ちゃん、なんだって?」
ビニール袋が物と擦れる音の合間に、雅人くんが喋る。
「ランク戦がどうのって話と、ゾエが食い尽くしても良い量の土産買って来いだってよ。」
同級生の顔を思い出す。
アタシに内緒でなまえと遊んでるんじゃねーよ、全員連れてけ!と、元気そうにそう言う彼女が浮かぶ。
市から離れたところに遊びに行きたいと言い出して、それならホテルにでも泊まるかと言われ、了承すればいつの間にか日程が決まっていた。
明日行く、荷物持って来い。
言われたのはそれだけだし、どこに行くかも分かってはいた。
お金を出そうとしたら断られ、ソファで寝ると言えばベッドに寝かされ、ありがとうと言えば目を逸らされる。
そういう人だと分かっているから、何でも受け入れられた。
雅人くんも、それは同じのはず。
「遠まわしに連れて行って欲しかったってことじゃないの」
光ちゃんの明るい声を思い出してそう言うと、ビニール袋の中身を仕舞う音が聞こえた。
安物とはいえ、アイマスクをしていれば視線が刺さることはない。
幾分何も感じない世界で他人と会話する時間を与えても、性格故の言葉遣いが伺える。
「知るか、アホ。」
携帯を掴んで、画面を見るためにスイッチボタンを押す僅かな音がした。
ロックを外すような音がしても、画面を触る音がしない。
たぶん、何かしら連絡がきてないか確認している。
携帯を元の場所に置いた音がして、すぐに視界がぱっと明るくなったと思えば安物のアイマスクを取り上げられた。
額と眼球周辺から異物感が取り除かれ、頭の後ろが枕につく。
吐き捨てるように何かを言いかける雅人くんの顔が見えた。
自らを罰し期待している私を放置し、その場を離れる。
アイマスクが椅子の上にあるソファにダイビングするように置かれ、雅人くんが上着を脱いで、黒い服のチャックを下ろす。
戦っているところが想像しにくい程の細身と薄い腕が、電球の淡い光の下で動いた。
「女くせえな、この部屋。」
「ほんと?」
「なまえの匂いが詰まったような感じがする。」
原因は察しがつくものの、その匂いを女くさいとしか表現できないところに惹かれる。
雅人くんのこと考えてたら沢山しちゃった、とは言わずに明るい視界を眺めた。
ここに泊まって、明日は二人で適当に遊んで、また泊まって、帰る。
それだけ聞けば普通の、健全極まりないカップルのデートプラン。
安物の手錠を外すために、雅人くんが私の上に跨る。
血管が浮いた薄い手の甲が動いて、力任せに手錠を外した。
壊れるような音がして外れた手錠は枕元にあったポーチに追突事故を起こすかのように戻され、雅人くんが私の上からいなくなる。
今は、その気分ではないのだろう。
大人しくベッドから立ち上がり背伸びすると、陽が落ちかけて窓から見える景色に影が落ちかけていた。

「お風呂入ろっか」
外の匂いが脱いだ上着からするのを嗅いで、シャワーだけでなくお湯の必要性を感じる。
見える景色だけでは、湿気も気温も分からない。
頷いた雅人くんに笑いかけ、バスルームの扉を開ける。
大きなバスタオルがふたつかけてあるのを見て、泊まりに来たんだと実感した。
ひとつを手に取り雅人くんに渡すと、タオルなんかそっちのけで追突事故を起こしたほうを見つめ、呟く。
「あれ持ってきてたのかよ。」
「だめ?」
ポーチから顔を出す手錠と、鋭い目をした雅人くんを交互に見る。
「駄目じゃねえけど、警備員に見つかったらアイツらの有り余る時間の中で尋問されるぞ。」
バスルームの明かりをつけて、手錠と目隠し、その他諸々を取調室の机の上に置かれ怒られる自分を想像してみた。
この上なく惨めで痛々しいほどに恥ずかしいけれど、それはそれで有りだ。
でも、大事な時間を知らない大人に奪われていくのは好きではない。
「怖い大人は苦手だから、それは嫌だな」
「じゃあ隠しておけ。」
シャツとスカートを脱いで、ストッキングを籠に入れる。
下着のままバスルームのカーテンを引っ張ると、大きめの湯船がお目見えした。
「お風呂もすごーい!みて、ひろーい!」
「いちいちうるせーな、ガキか。」
感激する私を鎮めるような声が飛んできて、甘えさせようとした。
「頭洗ってあげる」
「お節介焼くな、クソ。」
悪態をつく雅人くんに、右上にあったボトルを手に取り確認する。
「シャンプーこれでいい?」
「おう。」
なんだかんだで返事をしてくれる雅人くんがズボンのベルトを外し始めたのを見て、大きめの湯船にお湯を落とし湯気を見た。
10分もあれば、お湯が溜まりそうだ。
シャワーを取り、後ろにいる雅人くん目掛けてお湯をかけようとすると視線を感じ取られ逃げられた。

扉の向こうに雅人くんが消えてから下着を脱いで、早めにシャワーを浴びる。
バスルームの光はオレンジ色で、目が落ち着く。
痺れかけた腕にお湯をかけていると、ボクサーパンツ一枚の雅人くんが戻ってきた。
「2人で入れちゃうお風呂なんて、ね」
声をかけてから、乾きかけの肌全体にお湯をかけた。
噛み痕の残る足首に雫が滴る私の側で、ブラシとタオルを手に洗面所に置く音がする。
「こういうとこに来ないのか。」
「うん、親と遊びに来ても日帰りだし」
足首、腕、背中、腰の付け根に残る噛み痕と真新しい歯型にシャワーをかけた。
痛みもなく、肌を撫でる傷跡のへこみにお湯が溜まることもない。
色素が沈着しただけの、刺青のような痕。
傷跡というには軽いそれを見つめて、背中を温める。
「男の子と泊まるとか無いよ、私には雅人くん以外考えられない」
わざとらしくそう言って、出しっぱなしのシャワーを雅人くんに向ける。
細身の身体にお湯がかかって濡れていくけれど、本人は気にする素振りも見せない。
いつの間にか全裸になっていた雅人くんを煽れば、すぐに機嫌が悪くなった。
シャワーを止めて見れば、籠の中にあるスカートの横に雅人くんのズボンがある。
わざと、イライラしそうな物言いで言った甲斐もあったものだと思いたい気持ちのまま、雅人くんを見た。
お湯で温かくなりかけた身体が、火照りだす。
「俺がいつ、男と泊まらないのかどうかって聞いたんだよ。」
「こういうとこって、ねえ、そういうことでしょ」
冷め切った目が視線で殺す勢いで突き立ててくる。
イライラすると、すぐに乱暴な物言いをして刃物のような視線を常にしていれば、相手からは刺されないと覚えたらしい。
感情が痛く刺さることに苦悩し、乱暴な言動で身を包み粗暴に振舞う。
その能力を持ち、その態度を日常的に取るという、どれだけ周りに平常な人間が多かったかを示す事実。
感情受信体質のことは全て理解できていない。
目から全てを見透かす彼に嘘は通用せず、当然私のこともすぐに見透かした。
お湯が溜まる音だけ、妙に耳に触れる。
「やきもち?」
「黙れ。」
「いかがわしい妄想、みたいな?」
「うるせえクソ女、答えろ、なんでそっちに直結した。」
私の体がじわじわと火照れば、視線でそれを感じ取ってくれる。
「やきもちかなって思って」
雅人くんは、視線だけで何でもわかる。
滴ったお湯が足元に流れ、お湯の音は溜まる湯船の中に消えた。
「来い。」
静かにそう言う雅人くんに濡れた身体のまま近寄ると、骨っぽい指が顎を掴んだ。
鋭い目が、私に突き刺さる。
眼差しだけの会話が続いたあと、黙って唇を開き舌を出す。
雅人くんが籠から自分のベルトを取り、私の首に巻きつけた。
軽く絞められ、使い慣らした金具の音が顎の下で鳴る。
「喋るな。」
舌を出したまま頷き、ベルトが締まる。
首に圧迫感が加わるか加わらないかの瀬戸際でベルトの動きが止まり、指が伸びてきて金具を留めた。
首輪代わりのベルトは窒息死の心配は無さそうな程度に絞まっただけで、革と金具越しに伝わる力の加減は伝わる。
喉が絞って、反射的に瞼が閉じそうになるのを抑えた。
「俺の質問にだけ答えろ、それ以外では喋るな。」
頷いてから、興奮で満たされ笑うと頬を軽く叩かれる。
頬の内側が歯に触れて、頭の中身が揺れた。
内臓が震動するたび増幅していく快感と、その期待。
「俺がいつ男と泊まるのかどうかって聞いたんだよ、そこまで聞いてねえ。」
「なんでそれで引き止めるの」
「ああ?口に気をつけろっつってんのがわかんねえか。」
「わかんなかった」
「アホ貫き通すなら、上手くやれ。」
「来ないのかどうかって聞かれたから、聞かれないうちに答えた」
イライラする答えばかり繰り出して、雅人くんの目が鋭くなっていくのを楽しむ。
「いらないことまで答えるんじゃねえ。」
「私には雅人くんだけだよ」
「誰がそんなこと聞いたんだよ、オイ。」
待ち焦がれていた力が、首に加わる。
ベルトを引っ張られ、太ももを大きな足が軽く踏みつけて押さえた。
分断されるべく構えるような体勢になった身体が、また火照る。
持ち上げられた頭部ごと叩く勢いで手が往復に行き来し、頬と耳を何度も叩いた。
左右に行き来する首と共に、髪の毛先が振り乱される。
腫れないように、バスルームを出る時には頬を冷やしておこうと快感に浸る頭に念じた。
濡れた身体に毛先がくっついて、肌の上だけで不快を感じる。
音が鳴るような叩き方と、音が響くバスルームの性質上、叩かれるたびに音が響く。
下半身に熱が集まりだして、足に力が入る。
この音を聞いた誰かが、警備員に伝えないことを祈った。
肌と肌が打ち合う音のあと、叩かれるのが止まり、軽い金具が何度も擦れる耳障りな音がする。
数分前まで見につけていた安物の手錠を、何故か雅人くんが持っていた。
ポーチに突っ込まれていたはずのものが何故ここにあるのか、考える。
たぶんシャワーをかけようとしてバスルームから雅人くんが一度逃げた時だ。
そのときに掴んで取ってきたのだろう。
安物の手錠がまだ壊れていなかったことに感謝して、両手を差し出す。
軽々と両手首が拘束されたあと、腕ごと下げる。
痛くない位置に腕を下げている間に、髪を根元から掴まれて引き寄せられた。
ベルトの力で膝が持ち上がりそうなくらい引き上げられてから、キスをされる。
軋む金具の音を濡らすような水音がして、頭がぐらぐらした。
舌がギザギザの歯に触れて、少し痛い。
跪くのも疲れて座り込んでもなお床に触れる膝が少し痛いけれど、お湯に入ればどうにかなるだろう。
擦りむいて痛めたとしても、ストッキングで隠せる。
痛がらずに視線を常に雅人くんに向けながら唇を開いて、口の中に熱いものを受け入れた。
咽そうになりながら咥えこんで頭を動かすと、腕の付け根が痛む。
骨が軋むほどではないから痛みを無視して、反応を見る。
「んー?」
咥えたまま声を出すと、睨まれる。
「最高だ、この、クソ女っ。」
罵倒にも悪態にも、状況によっては暴力にも、蔑まれる目つきにも興奮する。
眉間の皺、ギザギザの歯から漏れるように聞こえる小さな喘ぎを伺いながら舐めると、ベルトを強く握る音が真横で聞こえた。
そういう人だと分かっているから、加減も分かってくれる。
感情受信体質なんてロクなもんじゃないと言い切る彼は、私がそういう人であると見抜いた。
雅人くんが限りない罵倒をしても、口の悪さを露呈すればするほど、私からは希望の星のような感情が飛んでくる。
悪態に対し負の感情を抱かない人間を見て、どう感じたのか。
私だって、褒められれば嬉しい。
好きな人に罵られれば嬉しいを通り越してしまう。
宇宙人以下に思われたのも間違いない、でも、好きという気持ちは確実に、現在の状況から見るに歪みなく伝わっているように思える。
頭を掴まれ咥え終わらせられると、手錠の鎖を掴まれた。
手錠の鎖を頼りに両手を引っ張られると同時に、手首の骨のあたりに痛みを感じた。
豆状骨を中心に半円を描くようなものが、痛みを刻む。
それが何なのかは分かっていて、興奮に喘ぐと強く噛まれた後に頬を叩かれた。
雅人くんの歯と私の肌の間に、私の血が滲む。
「ひ、うっ」
思わず善がると、雅人くんがベルトに力を込めて引っ張った。
「鳴くな。」
頷いて舌を出してから、目を閉じる。
ぶっ、と何か吐き出すような音がしてから、右の頬の少し下あたりに生暖かくて生臭い血の混じった唾が吐きかけられた。
唇を掠りもしないことを残念に思いながら目を開けて、また強請る。
ベルトを引っ張られ上半身が浮くと、雅人くんが屈んで私にキスをした。
血が混じった唾を吐くくらいなら、噛まなければいいのに。
そうは思っても、言えるほど私は良い女ではない。
目を閉じようかと思ったとき、手錠を無言で外され、両手が自由になった。
洗面台のほうに投げられた手錠は扉あたりに勢いよくぶつかり、床に転がり落ちる。
その音も、大きく響く。
予想よりずっと早い段階で手が自由になり、困惑して雅人くんを見上げると乱暴なのはいいから努めろという顔をしていた。
上気した頬が見えて、ときめく。
舐められるほうが気持ちいいといった顔を見て、私の胸が高鳴る。
空いた両手で、雅人くんの腰を抱きしめた。
縋るように腰を抱きしめ、性器にしゃぶりつく。
手の平で雅人くんの尾てい骨のあたりを触って、爪を確認していないから然るべきところに指を突っ込んではいけないと確認する。
茹で上がりそうな頭と目で、雅人くんの気持ち良さそうな顔を引き出すために舐めて、咥えて、咽るのを我慢するたびに出る粘液と共に愛撫した。
「まは、ふっ!」
雅人くん、と言ったのが辛うじて分かったのか、ベルトを引っ張られる。
喉の圧迫感が責め苦となって、快感に火をつけた。
性器と口と、触れてる喉の奥から汚い声と音を出すと、ベルトの金具がギリギリと音を立て、締まる。
「鳴くなって言ったのもわかんねえのか。」
喉の圧迫感で、目から涙が落ちる。
それを見た雅人くんが一瞬だけベルトを持つ手の力を緩めたけれど、首を振った。
泣きながら乞う私を見て、頭の後ろにある手の力が強くなる。
舌の筋肉が吊りそうになり、汚らしい音が喉から聞こえた。
背中が痛む寸前で動きを止めると、髪の中に雅人くんの指が埋まる。
「泣きながらイけよ、クソ、なまえ、ほらよ。」
そのまま脳みそを引っ張られてもおかしくない手に感じていると、雅人くんの右足が私の股に潜り込み、足の指が性器に触れた。
突然触れられ、腰が跳ね上がる。
逃げられない状態で責められ、肩どころか全身を震わせて悦ぶ私を抑えつけたいかのように、頭を押さえられ、再びベルトに手が掛かった。
金具がギリギリと締まる音と、粘液の音。
足の指で性器を撫でられ、肌と愛液が触れ合う音がする。
目の前が真っ白になりかけてもなお、喉を締めた。
見えないから具体的にどうなっているか分からないけれど、右足の親指で性器を扱かれている気がする。
「冗談キツいな、なまえ、足だぞ。」
喉から漏れる音が、汚い。
今にも嘔吐しそうな人が出す音を鳴らしながら、咥えこむ。
「なまえは俺ならなんでもいいのかよ、クソ。」
足で扱かれて感じてそれどころではない私の動きが止まると、ベルトを掴んだままの手も頭の後ろに加わり押さえつけた。
「イきそ、なまえ、うあっ。」
頭を押さえつけられたまま腰を振られたのをいいことに、足の指を探って自分の腰を動かした。
雅人くんであれば、足でもいい。
浅ましい身体を出来れば思い切り殴ってほしいけれど、それはしない。
そういうところが、特に好き。
腰を動かして足の甲らしき部分に触れて、何度も腰を前後に動かしては熱が破裂しそうになる。
顔の前で腰を振られ、粘液が擦れあう音に耳が支配された。
上のほうから聞こえる雅人くんの吐息にまで、興奮する。
骨っぽい感覚と、愛液が垂れるそこに皮膚ではない硬いものが触れた。
爪だと感じ取って、足の甲に性器を擦り付けているうちに膝と胸がぶつかる。
痛いと思う間も無く性器が口から引き抜かれ、喉が解放された。
「っぁぁあぁぁ、おえっ」
真っ先に出た情けない悲鳴のあと、胸のあたりにゼリーのようなべたつくものを出された。
せり上がりそうな何かを飲み込んだあと、息を吸う。
酸素ではっきりしていく頭に追い討ちをかけるように、ゆっくりとキスをされた。
汚れているせいで不味いはずなのに、音を鳴らしてキスをしてくれる。
呼吸がぶつかり合ったあと、首のベルトが緩んで、首が楽になった。
金具が肌に触れて、その冷たさに喉が驚く。
俯いて、自分の下半身を見る。
腰をあげると、愛液が糸を引いて垂れているのが分かった。

ベルトが籠の中に入る音と、真っ赤な顔で液体を流す自分の顔の酷さに気づいた時、真後ろでお湯が溢れた音がする。
垂れた涎が顎から落ちて、床を汚した。
力の入らない腰に鞭を打ってお湯を止めようと、立ち上がる。
歩いて数歩のところで、後ろから伸びてきた細い腕が蛇口を捻りお湯を止め、何かをお湯に放り投げた。
落下した小石のようなものは、お湯に落ちた途端白い泡を吹き出し始め、香りが充満する。
桃とラベンダーを混ぜたような匂いが広がってきたあと、お湯の色が変化した。
紫ともピンクとも取れない色に変わり、不透明になる。
入浴剤なんて、いつ用意しただろうか。
呆然とする私を置いて、雅人くんが後ろでシャワーを浴びてからお湯に入る。
お湯が溢れて、勿体ない。
事に励んでいた腰が平常運転に戻るのが早くて感心していると、可愛らしいお湯に入った雅人くんが、私に呼びかけた。
「入んねえのか、オイ。」
普通は立場が逆ではなかろうかと思いつつも、良い匂いのするお湯に近づく。
「入る」
シャワーに手を伸ばすと、雅人くんが取って寄越してくれた。
朝には二人共同じような匂いを纏って起きることになりそうなお湯を見つめ、シャワーを浴びる。
汚れまくった口にお湯をかけて、洗う。
涎と精液の残骸と先走りと、特定できない滑らかな液体が口から薄まり流れ出ていった。
胸から腹にかけて落ちていく精液がゼリーのように溜まって、流れた。
力の入らない腰にお湯をかけ、最低限の汚れを落とし、お湯に入る。
私が腰まで浸かるとまたお湯が溢れ、色の洪水が床を這おうとしていっては排水溝に吸い込まれていく。
不透明で良い匂いのする液体と化した入浴剤のことを聞いた。
「これ、なに」
「帰りに買ってきた。」
「いつ取ってきたの」
「なまえにシャワーかけられそうになって逃げたついでに持ってきて、そこに置いた。」
骨っぽい指が差すのは洗面台。
そこに、包装の残骸があった。
せっかくの泊まりだから楽しもうと、雅人くんなりに画策したようだ。
いくらか考えを巡らせる。
もしかして、光ちゃんに呼ばれたのは言い訳で、実はこれを探しに行っていたのではなかろうか。
素直ではない雅人くんなら、有り得る。
入浴剤は良い匂いがして、色も可愛くて、私が喜びそうなものを探して外を歩いていたのかもしれない。
本当のところは、追求しなくていい。
温かくて良い匂いのするお湯を見つめる。
二人で泊まるのだから、と雅人くんなりに考えてくれたのに、私がしたことはなんだ。
置物になりかけ、ベッドの上で待つという畜生みたいな行動。
急に恥ずかしくなり、嬉しさで膝を抱える。
「ありがと」
かわい子ぶってそう言うと、上気した頬のままの雅人くんが悪態をついてくれた。
「うるせー。」
「あとさっきの男の子がどうのとかは嘘です、すみませんでした」
「んなこと分かってる、オイ、それはいいのか。」
それ、と指差した先は、先ほどつけられた噛み痕。
「うん」
「手首は隠せねえぞ。」
「噛んだの雅人くんだから、ここでいいよ」
「誰かにどうしたって聞かれたら、なんて答えるつもりだ。」
「愛犬と遊んでたら噛まれたって言う」
湯気に混じって素直に言えば、雅人くんが照れた。
わかりやすく頬を上気させてから目を逸らし、私にお湯をかける。
反射的に腕を構えると、笑いが零れた。
お返しにお湯をかけたら水鉄砲まで飛んできたのを見て、バスルームに笑い声を響かせる。
肌に当分は残りそうな噛み痕を残していく私と、噛み痕の主。
愛する人からの痛みと暴力が好きな私の言うことを聞いてくれる、私の大好きな人。
明日遊びに歩けば、どこから見ても普通の二人に見えることを確信して、お湯をかけあってふざけた。








2015.09.01







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