粋と我侭





大きい家の更に別の建物、離れとでも言えばいいのだろうか。
そこが尊くんの部屋で、無駄に大きいバスルームやリビングシアターもある。
やろうと思えば、なかなか盛大なパーティはできるだろう。
それくらい広い部屋だと、室内デートも楽しい。
リビングシアターで適当な映画をつけて、一緒に見る。
冷房は効いているし、くっつく必要もないけれど、座った私の足の間に尊くんが座ったのだ。
甘えられているのか、生来のくっつき癖でもあるのか、落ち着くからなのか、どれかは分からないけれど腕の中に尊くんがいる。
主人公が元々いた研究所を爆破するシーンを見ながら、ふと目の前にいる尊くんを見た。
清潔感のある項と、男の子にしては長めの髪。
真剣に見ている尊くんの手に触れる。
特に反応はなく、黙って映画を見ていた。
映画に視線を渡しながら、尊くんの手を触って、腕へと指を伸ばす。
荒れひとつない肌を、撫でる。
日焼けもしなさそうな肌は、指の滑りがいい。
映画の主人公が研究所の自動消去装置という名の爆弾スイッチを押して、アクションシーンを交えつつ逃げていた。
出てくる人間が、皆いい筋肉をしている。
俳優の胸筋が映ったので、尊くんの胸元を触ってみた。
映画を見ていないわけではない、手が空いているだけ。
見ながら触っていると、感触に気づく。
鎖骨の窪みのあたりの肌の滑りとか、腕の内側のさらさら具合とか、うなじの清潔感とか。
子供くささもなければ男くささもない、かといって少年というには大きい年齢の肌。
指ざわりがよくて、つい触ってしまう。
気を使っているのか、髪も綺麗だ。
いいシャンプーやボディソープを使っているに違いない。
映画のシーンが、図書館から街中に変わった。
主人公が車に乗り、スパイがいるビルへ向かう。
図書館のシーンより前から触っていたから、軽く20分も静かなシーンで時間を使っていた。
つまり、20分は無心で触り続けている。
好きな子を弄るのは、飽きなくていい。
主人公は本の間から暗号の切れ端も銃も拾ったし、静かながら面白い流れだった。
車が走るシーンを過ぎ、内容は盛り上がる。
映画を見ている時は無言を貫くはずの尊くんが、口を開いた。
「なまえさん、あの・・・。」
「なに」
さらさらの髪が揺れて、ほんのりと赤い頬をした尊くんが私をちらりと見た。
「・・・触って、ください・・・。」
随分と可愛いおねだりだ。
じわじわと、ちょっかいを出したい気持ちが熱くなる。
鳩尾のあたりを触りながら、尊くんの肩に顎を乗せた。
「え?触ってるじゃない」
「な!?」
「なに、不感症とか?」
首と耳をしっかりと触りながら、胸の辺りを触る。
「肌すべすべだよね、尊くんのお腹触ると気持ちいいもん」
胸からお腹へ指を滑らせ、服の上にあった指を裾からそっと忍ばせた。
すべすべの肌で覆われたお腹を撫でて、柔らかいのに押すとハリと弾力のある肌を楽しむ。
「ほら、腕の内側、つるつる」
半袖から見える白い腕の内側を、指先で撫でる。
一番触り心地のいい場所を堪能していると、赤い頬の尊くんがまた喋った。
「なまえさん、あの、なまえさん・・・。」
非常に、何か言いたそうな顔をしている。
何を言いたいかはわかるけど、誘ってるのではなく只のちょっかいだ。
素直に言う事を聞いてあげるつもりは、ない。
首筋から鎖骨の筋、腕の内側を触ったり、指で撫でたり、手の平で感触を楽しむたびに、尊くんが足を僅かに動かす。
映画の主人公がスパイと対峙するものの、スパイは自分の恋人だった、なんて一番いいシーンで、尊くんがついに折れた。
「なまえさん、触ってください・・・。」
困ったような上目遣いで、私を見てきた。
当然、すぐに言う事を聞いてあげるわけではない。
「どこを?」
そう言うと、顔を真っ赤にして後ずさる。
いい反応をした尊くんが、映画なんかもう気にしていられないような態度で叫ぶ。
「言わせる気ですか!?卑猥なことを言わせて貶めるつもりでしょう、こんなにボクを辱めて、何がしたいんですか!」
まだまだいける。
そう思わせる態度を取ってくれたので、尊くんの体から手を離す。
ソファに座りなおして、映画だけを見つめた。
「怒るんならやーめた」
え、と声を漏らす尊くんを放置して、主人公とスパイの戦闘シーンを眺めた。
スタントマンは使わずに撮影しているらしく、女優の動きが過敏だ。
「スキンシップしてるだけなのに」
もちろん、そのスキンシップで火をつけてしまったことは承知している。
意地悪でもなく、可愛いからからかってるだけ。
引き続き、映画を見る。
スパイであった恋人との戦闘を繰り広げたあと、加勢した敵にスパイが撃たれる。
裏切った味方が、更に裏切ったようだ。
なかなか白熱していて面白い、そう思って映画に食いついていたら、突如視界が遮られた。
尊くんの顔が、目の前にある。
ソファに座る私の上に、女の子のように私の上に膝立ちで跨る尊くんが、ゆっくりと足を開いた。
「なまえさん・・・さ、触って、ください・・・・・・。」
可愛さとしては合格点を突っ切って卒業レベル。
あんまりにも狙ったようなおねだりに、実は尊くんもわかってるんじゃないかと思ってしまった。
それでも、ちょっかいの姿勢は崩さない。
「だから、どこを?さっきいっぱい触ったじゃない、でもスキンシップは嫌なんでしょ?」
「う・・・。」
「言いたくないような場所を触られたいの?」
すべすべの鎖骨と首を触って、にんまりと笑う。
「おしりー、とか?」
ズボンの上から太ももを触ると、尊くんが今にも泣きそうな顔をした。
どっかの高い値段のズボンの生地は触り心地がいい。
太ももから、腰と足の付け根のラインを手の平で撫でる。
細い腰のラインが、私のものだ。
体面座位というには、すこし腰の位置が高い。
太ももを撫でていると、尊くんが掠れそうな声を出した。
「ち、がいます・・・ちんちん・・・。」
目の前には、尊くんの首元。
きゅっと一文字に結んだような口元を撫でてあげると、指先が熱い頬に触れた。
「ピンクで可愛い、ピクピク動いてる」
太ももの内側を触りながら尻を触ると、筋肉が動いて太ももの内側を撫でるたびに反応する。
「お尻動いてるよ」
太ももの内側が強張ってきて、尊くんの息が荒くなるのが聞こえた。
そんなこともお構いなしに、焦らして触る。
決して肝心なところに触らないでいると、涙目の尊くんが懇願した。
「なまえさんっお願い、もお、触ってくださいお願いします!」
ぐずりかけの尊くんの顔が歪むのを見たくて、もっと焦らす。
「なんで?」
「当然でしょう、こんなの、意地悪すぎます、なんでこんなことするんですか!」
「意地悪なんてしてないよ」
「だって、ひどいです、好きな人に触られたら勃起しますし、こんな、こと、されたら、気持ちよくなりたくなっちゃうじゃないですかあ!」
わがままな悲鳴に、あくまでも応答しない。
「自分ですれば」
「嫌です、ボクは、なまえさんと一緒に気持ちよくなりたいですっ。」
涙目で情けない顔をして、非常に頼りがなさそうなことを真剣に言う尊くんを素で見れば笑ってしまうだろう。
冗談で触っていたけれど尊くんは素直で、お世辞なんか言える子ではない。
ふざけていた自分が、急に情けなくなった。
ベルトをつんつんと触ると、尊くんが涙目になりながらベルトを緩める。
トマトのように赤くなって、ズボンを下ろした。
パサっと落ちて、冷たいベルトの金具が足に触れる。
下着の上からでもわかるくらい勃起して、腰が引けていた。
「触ってください、お願いしますっ。」
ついに目には涙が浮かび、精一杯のおねだりなのが伺えた。
キスをしたあと、尊くんをソファに座らせた。
「触ってほしいんだ」
腰を触ると、目を強く閉じ爆発寸前といった表情で歯を食いしばっていた。
触られただけでここまで興奮してしまう尊くんが、可愛くて仕方ない。
パンツを脱いで、尊くんは顔を伏せた。
興奮が爆発寸前のようだ。
涙目の尊くんの可愛いペニスは、カウパーを垂らしながら上を向いている。
映画に背を向ける形で、尊くんの前に座り込む。
ブラジャーの肩紐をずらして、おっぱいを持ち上げるように出す。
シャツを捲って、胸元と腹を開放感に晒す。
手で胸を寄せて谷間を作り、尊くんの腰を引き寄せてからペニスをおっぱいで挟んだ。
熱い塊が、肉に沈んでいく。
持ち上げたおっぱいを、ゆっくりと勘で動かす。
挟んで扱くと、尊くんが早くも切羽詰りだした。
「あ、あっ、なまえさん、はあ、はっ、っう。」
挟んで動かすたびに、谷間がカウパーで濡れていく。
いきなり汗と体液まみれになった谷間が、熱を持つ。
「おっぱいあっつう」
動かしつかれてきた手を休めるついでに、空いた口でペニスの先を咥えた。
舐めなくてもいいくらい、ぬるぬるしている亀頭を口腔に収めると、尊くんが目を細めて息を吐き出す。
肩が震えていて、必死に耐えているようだった。
咥えて、口の中で舐めながらペニスを挟んだ胸で扱くと、尊くんが涙目になったというか、泣いた。
微塵も罪悪感が沸かないどころか、高揚する。
強め吸い上げて勘で舐めてみると、抑えに抑え込んだ喘ぎ声が聴こえた。
泣いた尊くんが腕で顔を隠して、耐える。
頭を動かして吸いながら舐めて咥え、胸を持ち上げては動かす。
「あっ、あっ、あ!」
舐められながらされるのが、好きなようだ。
おっぱい攻めのような愛撫に、尊くんが涙が溜まり潤んだ目を向けた。
涙で焦点が合っていない。
引き出すように舐めると、尊くんの腰が動いた。
尊くんの手が、私の頭の後ろを押さえる。
余裕がなさそうに押さえられ、亀頭を舌で舐めまわした。
はっ、はっ、と息を切らす音が聴こえた。
それをいいことに、頭を動かす頻度も手を動かす頻度も早めると、何度も腰が動く。
口とペニスの間から下品な音がすると、腰はもっと動いた。
おっぱいで挟み咥えたままイラマチオをする体勢になり、喉が中から押される。
「なまえさん、止まらな、へぁ、ぐすっ、なまえさんっ!」
しゃぶってるおかげで顔は見れないけれど、明らかに泣いている。
そんなにひどいことをしてしまっただろうか。
でも腰は動いているし勃起しているし、尊くんの手は私の後頭部にあるし本気で嫌がってもいないので、続けた。
いつか泣き声に変わるんじゃないかと思うくらいの僅かな喘ぎ声が、映画の音声と混ざる。
背を向けてしまったから、映画の展開がわからない。
あとでまた見直さないといけないと思いつつ、私の視線そのものは尊くんの涙まみれの赤い顔に釘付けだった。
「なまえさんっ、なまえさんっ、きもちい、駄目です、こんなの!」
ぐすぐすの顔をした尊くんが、いやいやと頭を振る。
浮かんだ言葉は、いやよいやよも好きのうち、というおっさんくさいもの。
腰を震わせた尊くんが、カクカクと腰を動かして達した。
飛び出した精液が、唇から垂れて私の顎と頬にかかる。
「っあああぁぁ・・・!!」
射精したばかりの亀頭を強く刺激するように舐めると、喘がれて後頭部にある手が肩に伸びた。
おしまいの合図を受けて、口を離す。
唇から糸をひいた精液がプツンと途切れて、足の上に落ちる。
熱くてべたつくものが、足の内側を伝う。
尊くんの膝に手をついて、唇を拭いた。
足の筋肉が何度か動き、
その間も腕で顔を覆っていた尊くんが、息を切らして呆然としている。
赤面したまま放心する姿を見ていると、はっとしたのか服の端を持って、恥ずかしそうに股間を隠す。
まだ赤い顔をしている尊くんが、涙目のまま照れた。
「なまえさん、意地悪しないでください・・・。」
「意地悪じゃないよ、そういうプレイだった」
「ボクの男としてのプライドが知りえない方向に行きそうです!」
「そんなことないない、ないから」
背後で流れる映画は最終局面を迎えている。
一体どういう流れでそうなったのか分からないまま、ラストを見ることになりそうだ。
すこし離れた位置にあるテーブルの上にあった水を飲んで、口の中の精液その他体液を流し込む。
冷たい水が胃の中に広がって、汗を冷やす。
「恥ずかしい・・・ううう。」
呻く尊くんがズボンを履いて、ベルトを締める。
潤んだ目を指で軽く擦り、俯いていた。
隣に座って頬にキスをすると、また赤くなった。
「隙もない状態で一方的にスキンシップするのはやめてください、ボクの心が折れてしまいます。」
「なでなでしただけなのに」
「不意打ちです!そういうのは駄目です!」
「我侭言わないの」
「なまえさんが触ってくれるの、気持ちよくて好きなんですっ、だから、だからっ。」
だからなんだ、と言いたいけれど潤んだ目と赤い頬の情けない尊くんを見ていると、どうでもよくなってしまう。
抱きしめて頭を撫でると、一瞬驚いたあと、気持ち良さそうに撫でられてくれた。
映画の最終局面まで、あとすこし。
主人公が敵のアジトを爆破するか敵を全員吹き飛ばすかで迷い、結局格闘術を披露している。
筋肉がムキムキでバキバキの色男が、汗と埃と血にまみれていた。
腕の中にいる男の子と正反対の俳優が、飛んで跳ねて戦う。
クライマックスになるにつれ派手に血が飛び散るのは、よくあることだ。
映画に目線をやっている間、ずっと尊くんを撫でていた。
ふと視線を戻すと、甘えた目つきをしている。
「なまえさん、大好き。」
甘えたことを言われ、おでこをつっつきながら映画のラストを見届けた。







2015.07.26




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