おとことおんな







ちゅ、ちゅ、と唇が触れる音なんて、なんでもなかった。
ひとつひとつの音が、全身に響く。
頬、首、唇、顎、喉、ミケさんの唇が伝っていくだけで、頭の後ろがくらくらする。
抱きしめられて、いつものように視線が合う。
お互いの目の色が違った。
知り始めたばかりの感情の色が、目に籠もっている。
この感情を、ミケさんは知り尽くしているのだろう。
相手は男の人で、私は子供あがりで、甘えてばかり。
下着の中にミケさんの手が潜りこんで、小さい胸に大きな指が触れた。
覆い隠されるように揉まれて、息が止まりそうになる。
例え胸が大きくなっても、ミケさんの手に収まらない胸というのは、なかなかない。
抱きかかえてくれる大きな手、安心する手の温かみが、今は別の熱への焚きつけになった。
ミケさんの手の中で、小さい胸を揉みしだかれる。
首筋あたりには、ミケさんの息づかい。
大きな手が、私の白い下腹部を這う。
指が滑りこむ前に、自ら下着を下げる。
おそるおそる、尻を外気に晒すと、ひやりとした空気が股を冷やした。
寒いなあ、というのが正直な感想だ。
脱いだ下着をどこかにやるためにミケさんから視線を逸らすと、すぐに抱き寄せられて尻を揉まれた。
大きな胸板に顔を埋めて、握り締めていた下着はあっけなく床に落ちて、大きな手に尻を触られる。
パンでもこねるような手つきで揉まれているうちに、意図しなくとも指は性器に触れた。
太くて大きな長い指は、すぐ私の恥ずかしい場所に辿り着いてしまった。
性器の薄い割れ目を、太い指先がなぞる。
「んっ」
性器の割れ目の先端から末端まで、何度も撫でられる。
ぬる、ぬる、感覚がはっきりしてきたばかりの性器に、震えに似た快感が伝う。
「んあ、ミケさ、はあ」
大きな指に撫でられているうちに、性器の割れ目はぬるぬるしてきた。
気づかないうちに濡れていたおかげで、指の滑りはよくなるばかりだ。
声が漏れそうで漏れないもどかしさに耐えるうちに、半開きの口から出た舌でミケさんの胸板を汚した。
鎖骨のあたりに、だらしないキスをして、目を閉じる。
私が息を詰まらせるようになると、仰向けにされた。
覆いかぶさるミケさんは、優しげな目元に切なそうな表情を浮かべている。
恥ずかしくて、両手で胸を隠して、足は閉じたままにしていると、ミケさんは私を見つめた。
ベッドの位置のせいで出来る暗がりが、私とミケさんの体に影を作る。
ゆっくり、胸を見せるように、手をどけた。
乳首が、つんと立っているのが恥ずかしくて、熱い顔が更に熱くなる。
ミケさんが、膝に手をかけて、ゆっくりと足を開いた。
みえちゃう、はずかしい、と口には出せず反射的に足を閉じようとするも、ミケさんはまた膝を掴んで、足を開かせる。
何度かそんなやりとりをして、私は震える足を開いた。
大好きな人の前で、一番恥ずかしい格好をしてしまった。
泣きそうになっていると、ミケさんが覆いかぶさり、キスをして、頭を撫でてくれた。
近くに見える、ミケさんの顔。
「嗅がせてくれ。」
何も言わず頷くと、ミケさんは首筋から臍の下まで道でもあるかのように鼻を辿らせた。
すんすん、と嗅いでは、ゆっくり息を吐く。
息を吐くあいだも、すんすん、と嗅いで、熱っぽい吐息だけが私の体にかかる。
ミケさんの手は、私の股にあった。
指はぬるりと性器に招かれ、クリトリスに触れた。
「ひあぁぁ」
敏感なそこを、大きな指が何度も撫でる。
体は、クリトリスを撫でられるたびに、びくびくと痙攣した。
刺激されるたびに、腰が大きく跳ねる。
足に力が入らず、強すぎる快感に体が悶えた。
「やっ、んっ、ん!」
腰が逃げるように動くのを見て、ミケさんが腰を掴んだ。
逃げられない体勢のまま、大きな手が股にくっつく。
触られるたびに、腰が跳ねて、爪先に力が入った足がぴんと伸びる。
腰を捕まれてもなお、逃げ出そうとする体のあまりの過敏さに、ミケさんが問いただした。
「自慰行為は?」
「した、よっ、でも、びくんびくんってなるから、へんで」
「なまえ、俺を見ろ。」
ミケさんが、私の体を覆うように覆いかぶさる。
目を開ければ、目の前にミケさんの顔があった。
鼻で笑ういつものミケさんではなく、赤い顔をしている。
体の刺激に耐えられず、目を閉じてしまいそうになっても、なんとか視界を保った。
びく、と体が何度も動いても、ミケさんを見つめた。
見詰め合っている間も、ずっと触られている。
「やぁ、はああ」
クリトリスが、硬くなるのがわかる。
熱を持った肉芽が、刺激に反応して、快感だけを得る。
じわじわと感じる感覚が、トイレに行きたい感覚に何かを混ぜたようなものになってきた。
きもちいい、きもちいい。
言葉にせず、目だけで訴える。
なんとなく目尻が温かいので、涙でも浮かんでいるのだろうか。
体が敏感すぎて、涙を気にしているどころではない。
大好きな人の前で、私はどうなってしまうのか。
「ミケさぁん、きもちい、気持ちいいよお!へん、変っ!」
「楽にするんだ。」
「トイレ、いきたいっ」
「大丈夫、大丈夫だ。俺を見ろ。」
大丈夫、と言われて、トイレに行きたいのか、なんなのか分からない感覚を受け入れた。
びくん、びくん、びくんと浮く腰。
漏らしてしまいそう、と思う反面、何かが違う気がした。
ぐりぐりと指で刺激されて、掠れた声が出る。
指の腹でこねくりまわされて、どんどん硬くなるのがわかる。
ぬるぬるしてどうしようもない性器が、締め付けられた。
トイレに行きたいと思う感覚が強くなるたびに、おなかはぎゅうっと締まった。
下半身の筋肉が攣ってしまうのではないか、というくらいに締め続け、ミケさんの手の動きは少しだけ荒っぽくなった。
変な動きをする指を見つめて、自分しか見たことのなかったそこに、大きな手があるのを見て、手が痺れる。
締まる性器と、硬くなるクリトリス、濡れるそこが熱くなっていた。
ミケさんを見つめたまま、びくん、と腰が跳ねて、体が伸びるように震える。
指から与えられた快感が、全身に回るようだった。
目に溜まった涙が、滲んで零れ落ちそうになる。
高く跳ねた腰から、広がる快感。
その間も、ずっと、ミケさんを見つめていた。
「は、ミケ、さ、きもちい」
私の腰の跳ね方を見て、指の動きは止まって、押し撫でるような動きを何度かしたあと、性器から指が離れた。
呆然とする私にキスをしたミケさんが、私の耳元を嗅いだ。
じわじわと広がる快感が治まったあとは、またクリトリスが疼いた。
「んあ、これ、すきっ」
痺れた腕を下半身にやって、自分の小さな手で性器を弄る。
触るたびに腰が跳ねるものの、やめられずに何度もクリトリスを触った。
「なまえ。」
優しくキスをされ、唇と唇の端の唾液がミケさんの唇につく。
私の頬を撫でて、落ち着かせるように何度もキスをしてくれた。
ちゅ、と音を立てて唇が離れると、撫でていた手はミケさんのズボンのベルトにかかった。
目の前で、ベルトが外される。
自分の快感にかまけていて気にもしていなかったけれど、股のところが、ズボンの上からでもわかるくらい盛り上がっている。
ミケさんがズボンを脱いで、ベッドの端に放り投げた。
はっきりとわかるそれが収まる下着に、釘付けになった。
女子寮の子達と、そういう話になることはあるから、男の人の仕組みはなんとなく聞いていた。
けれど、こんなに大きいとは聞いていない。
女の子達は、したことのある子は平気そうだったから、支障はないものなのだろう。
これが、私の中に入るのだろうか。
いや、どう考えても、入らない。
「なまえ、腰を楽にするように足を開け。」
あれ、もしかして、私はここで大好きな人の顔を見ながら死ぬんじゃなかろうか。
そう思いながら、怯えながら足を開く。
ミケさんが下着を下ろし、脱いで、それが露になったのはいいが、どう見ても大きすぎる。
体に見合った大きさなのは間違いない。
だけど、するとなったら話は別だ。
やはりこのまま私はここで死ぬのだろうか。
足を開かされたまま、ミケさんの腰と私の腰が密着する。
「ね、ミケさん、ね、ちんちんそれ、大きいよ」
「ああ、そうだな。」
そうだなじゃない、と言う前に、ちんちんの先が私の性器をぬめりを楽しむように擦り付けられた。
押し付けられるたびに、気持ちのいい熱が腰のあたりを疼かせる。
熱の塊を押し付けられてしまえば、金輪際走れなくなるか、最悪死ぬ予感がしていた。
私の予想が的中することはなかった。
ミケさんのちんちんの先と、私のクリトリスが、キスをするように何度も擦り合わされる。
先のほうの丸い部分と、そこにかけての裏の部分で、滑りに任せて擦られた。
逃げ場のない快感に、腰が跳ねる。
「はあ、あ、あ!」
思いもしない光景と、初めて見る腰の動きと、行き来するたびにずるずると押し寄せる快感に、視界に火花が散るようだった。
がっしりと腰を掴まれて、逃げられない。
思わず手で押さえようとしても、気持ちいいほうが勝ってしまって、自分の手で性器を広げるしかなかった。
「あっ!あああ!」
ぐり、と当たって、甲高い声が飛び出る。
押し付けてほしくて、性器の間をぬるぬる動くそれを手で上から押さえつけた。
「ミケさぁん、ミケさぁん!気持ちいいよお、あっ、あっ、んん、ん!」
「なまえ、そのまま、押さえてろ。」
ミケさんの声は、すこし苦しそうだった。
眉間に皺はよっているし、額には汗が浮かんでいる。
押さえつける力が強いのかと思って心配になったけれど、目に浮かぶ優しそうな表情を見て、安心した。
「はっ、はっ、あっ、きもちい、きもちい、気持ちいいよお」
動くたびに、ぬちぬちと音がする。
擦りつけあうたびに、気持ちよさが増す。
クリトリスが潰されてしまいそうなくらい擦られても、体は気持ちいいというばかりだった。
硬いクリトリスが、指とは違う感触で刺激される。
「ひゃ、ああああ」
ミケさんのほうに腕を伸ばすと、軽々と背中に手が回された。
少しだけ浮いた体に、腰が打ち付けられる。
ミケさんの腰の動きは、段々荒くなってきた。
息も荒い。
ミケさんも、同じように気持ちいいのかな?
同じだと、いいな。
クリトリスが、ちんちん全体で何度も何度も擦られる。
「あああ、ミケ、さ、ミケ、あ、だいすきっ!!」
口の中に溜まった唾液を飲み込んで、仰け反る。
腰の位置をすこしずらそうとして動くと、ミケさんの手の力が緩んだ。
気持ちいいところを探そうと、腰を動かす。
「きもちい、きもちいっ」
甲高い声は、もっと高くなっていた。
喘ぎというのは、こういうものなのかと霞みそうな頭の中でそう思った。
「なまえ、っはあ。」
汗まみれの私の首と、あばらのあたりを嗅いで、満足そうにしている。
欲情というのだろうか、そんな目をしたミケさんは、私にキスをした。
「いい香りだ。」
ぐ、と少しだけ、入り口にミケさんのちんちんの先が押し付けられた。
痛くない程度の場所に、ぐぬ、と中に何かが入るのだけは、わかった。
入り口付近の膣内に、何かが広がった。
それが精液であることくらいは、わかる。
痛くない程度に、先のほうだけ押し付られて、性器から肛門に精液が少しだけ垂れた。
「あ!?」
自分が漏らしたのかと思って焦って、すぐに状況を理解する。
「はぁ・・・っ、はぁ・・・。」
息を切らすミケさんが、肩を震わせた。
押し付けられているだけでも、びくん、と脈打っているのがわかった。
「苦しくないか、なまえ。」
「だい、じょうぶ」
僅かにそう答えると、ミケさんは体をするりと移動させた。
足を開いたままの私の性器に顔を近づけたのを見て、私は反射的に足を閉じた。
太ももでがっちりとミケさんの頭を押さえるつもりだった。
そんなことはお構いなしに、腰を掴んで、ミケさんは私の性器を舐めた。
熱い舌が、擦りあって敏感になったクリトリスを舐める。
舌と、髭がたまに触れてちくちくした。
舐め取って食べられてしまいそうなくらい、なにもないところを延々と舐め続けられた。
臍の下の中身が、痛いくらいに締めつけられる。
何回舐められても、私のそこからは溢れて止まらない。
「や、はあ、ん、ああああ」
いつもキスしていた、あの唇が、私のそこに触れている。
それに気づいたときには、考える余裕など、どこかへ消えていた。
「ミ、ケ」
大好きな人の名前だけを、呼ぶ。
「ミケ、あああ、は、あ」
今までずっと、ミケさんと呼んでいた自分が、どこかへ行くようだった。
何度も何度も名前を呼んでいるうちに、舐められたまま腰が跳ねて、意識がどこかへ飛んだ。
頭の裏に籠もる熱が、なにもかもを暖めて溶かすように思えた。

意識を戻したときには、隣にミケさんが寝そべっていた。
私をずっと見ていたようで、目を開ければすぐにミケさんが見えて、優しく頭を撫でられる。
熱は治まって、体だけがぼんやりとしていた。
体にかけられた毛布の中から、性的な匂いがする。
これが、男と女の混ざった匂いなのだ。
知っているものとは違ったけれど、体を重ねた。
そして、意識を飛ばす直前に言ったことを、思い出した。
「ミケ」
「ん?」
「ミケ」
「なんだ。」
「名前だけで呼ぶのも、呼びやすいね」
優しげな目に、安堵が浮かぶ。
頭を撫でていた手で、頬をつつかれた。
「照れくさいのか、なまえ。」
「すこし」
「ミケ、でいい。癖で呼ばれてるのかと思っていた。」
「なんかね、こう、大人の人にはみんな、さん付けないとって思ってた」
「なまえも、とうに大人だろう。」
「やっぱり、ちびだからかな」
ミケの髭をひっぱると、追いつかれるように鼻をつつかれた。
「素直ななまえも、俺は好きだ。」
好きと言われて、今更顔を赤くすると、ミケに鼻で笑われる。
猫のように飛びつくと、今までと同じように頭と背中を撫でられて、それから優しくキスをされた。







2014.10.21




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