専属




大福さんリクエスト
・ほのぼので、短めのミカサ夢







タンクトップに薄い生地、服としての役目を果たしているか危ないくらいの短いパンツを履いて、マフラーを巻いた、なんとも奇妙な出で立ちのミカサが、私の元にやってきた。
鍋の汚れを擦って額に汗を浮かべている私を見て、珍しくミカサが喋る。
「なまえ。」
「なに?」
ミカサの体が、汗で光っている。
先ほどまで自主鍛錬していたのがわかるくらい、腹筋の隙間には汗が滴っていた。
汚れていないところを見るに、自主訓練が暇になってきたから、最適人材を探しているのだろう。
「エレンなら、薪割りよ」
最適人材であろう人物の名を告げても、ミカサは私を見たままだった。
「ちがう、なまえに用がある。」
「そうなの?」
なんとも、珍しい。
ミカサが私に話しかけてきて、それも私に用があるときた。
背を向けたと思ったら、歩き出したミカサは吐き捨てるように呟く。
「来て。」
鍋の底には汚れがまだあるけれど、一度それを置いて、手を拭き、ミカサの後を追う。
後ろから見るミカサの姿は、凛々しい。
露になった膝裏の筋肉は締まって、引き締まって詰まったような太ももと、腰。
服を着てしまえばそう思わないけれど、この人は肉体改造ばかりしている。
そんなに強くなる理由は、なんなんだろう。
ミカサのあとを追って着いたのは、ミカサが自主訓練に使っている部屋だった。
ありとあらゆる器具が並び、床に落ちている。
壊れたものもあるけれど、それには目をやらなかった。
吊るされたサンドバックからは、砂が落ちている。
殴りすぎてぼろぼろになってしまったサンドバックの砂が、さらさらと落ちていく音が聞こえる。
唖然とする私に、ミカサはマフラーを外して問いかける。
奇妙な出で立ちから、ただの訓練時の軽装になり、安心した。
「いいわね。」
なにが、いいのだろう。
もしかして、砂の掃除のために呼ばれたのだろうか。
それなら雑巾でも取りにいかないといけないし、取り外すにも一苦労。
ミカサが人を呼んだのも納得できる。
でも、あのミカサが猫の手も借りたいときなんて、あるのだろうか?
「何が」
思わず聞き返すと、あっさりと返答がきた。
「なまえ、体重。」
「え、あ・・・・・・」
ミカサに体重をそっと耳打ちすると、ミカサが少しだけ笑った気がした。
「ちょうどいいわ、なまえは素敵。」
そう言うと、ミカサはお姫様抱っこのような形で、難なく私を抱きかかえた。
抱きかかえた私を、二本の腕だけで、上下に動かす。
「ダンベルを壊してしまったの、なまえ。」
床を見つめると、たしかに壊れて粉々になったダンベルがあった。
もしかして、このお姫様抱っこダンベルをされ続けると私も粉々になってしまうのだろうか。
それは避けたい、降ろしてと言おうとしてミカサを見ると、見たこともないようなミカサのきらきらした笑顔が、そこにあった。
「トレーニング、付き合って。」
優しく笑ったミカサは、私をダンベル代わりに訓練を始める。
私はというと、ここまで激しくお姫様抱っこなんてされたことがなく、しかも相手は女の子のミカサ。
変な風に、どきどきしてしまう。
「エレンは、ダンベルになってくれない。なんでか、わからない。」
ああ、エレンもダンベルにしようとしたのね、と納得。
二人はたしか幼馴染だったはずだから、ダンベル代わりのお願いもわかる。
私が選ばれた理由はなんなのだろう。
見るからに重そうだから、抱えやすそうだから、なんて理由なのか聞いてしまおうか。
「なまえ、すごいわ。」
私の何がすごいの、そう聞く前にミカサは淡々と告げる。
「筋肉量にあわせて、すこし脂肪もある、この胸がそうでしょう。」
脂肪は、もしかしたら腹にもついているかもしれないのに、ミカサはそう言う。
「素晴らしいわ、なまえ、私のダンベルになって。」
きらきら笑っていたはずのミカサは、いつの間にか真剣な顔をしていた。
声に表情がなく、冷淡なはずなのに、そのお願いにはどこか熱い気持ちが感じられた。
「はい」







2014.07.06

[ 124/351 ]

[*prev] [next#]



×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -