貴方と私の一年後




「おめでとう」
エルヴィン、と名前だけ呼ぶようになって初めての誕生日。
誕生日は、オルオとエルドから聞いた。
なんでもリヴァイ兵長が誕生日をぽろりと零してしまい、そこから広まったそうだ。
広まる前から知っていたけど、きっともう色んな人からプレゼントでも貰っているのだろう。
今でも、エルヴィンと呼ぶと照れてしまう。
長い間、エルヴィンさんと呼んでいて、ある時名前だけで呼べと言われて、名前で呼んでいる。
なまえと呼ばれるのも、なんだか嬉しいような恥ずかしいような、そんな気持ち。
「エルヴィン、誕生日でしょう」
ホットケーキの乗った皿を持った私をひたと見据え、にっこりと笑う。
静かな笑みが、とても好き。
この人の品のある立ち振る舞いが、とても好き。
「覚えていたのか。」
椅子から立ち上がって、ホットケーキを持つ私に近寄る。
鼻腔まで漂ってくるコロンの匂いとホットケーキの匂いで、甘さに溺れそうだ。
私とエルヴィンの間に立ち込める匂いの甘さが、もはや媚薬だったのではないかと思わせるくらい、甘い。
見据えるように笑うエルヴィンがホットケーキを凝視する。
「座学の成績はよくないなまえが、無い知恵で必死に私の誕生日を覚えてくれたとは・・・嬉しいな。」
「なによその言い草」
たしかに座学の成績は悪かった、と苦笑いし、ホットケーキを渡した。
「これ、私がいた内地のお菓子」
内地出身の私からしたら、誕生日を祝うとなると自然と食べ物が豪華になる。
小さな家畜の卵に、小麦粉、微量の砂糖でなんとか作る。
ふっくら焼いたホットケーキに、蜂蜜をかけただけの粗末なもの。
でも値段は張る。
食材自体は、意外と高価なのだ。
兵士になってから、特別料理をしていないから、焦げた部分がところどころあるけれど。
「特別な日に食べるんだ、だから、おめでとう」
エルヴィンさんは皿を受け取ると、また椅子に座ってから食べ始めた。
食べる仕草も綺麗で、思わず見とれてしまう。
甘いんじゃないか、まずかったらどうしようと思っていると、エルヴィンの口元が緩やかになった。
「ふむ、美味い。」
その言葉に、歓喜せんばかりだった。
温かいホットケーキを食べるエルヴィンの口を見て、きゅんとする。
ひょいひょいとエルヴィンの口に消えるホットケーキを見て、とても安心する。
母さんが作ってくれたホットケーキを食べる私の食べ方と一緒で、嬉しくなった。
それでも、まだ出来はお粗末なわけで。
ちゃんと練習しなきゃ、と省みた。
「またちゃんと作れるように練習するよ。母さんが作ったのみたく、できるように」
「十分嬉しいプレゼントだ。ありがとう、なまえ。」
エルヴィンの笑みに心躍らせながらも、次はもっと綺麗に焼かなければ、と誓った。
好きな人に食べさせるものだ。
手を抜いてはいけない。
訓練と同じで、本気で取り組む以上気は抜けないのだ。
「来年は、エルヴィンの欲しいものプレゼントにするから」
私の苦笑いと照れ笑いがごちゃごちゃになった笑みを見て、エルヴィンが眉を潜める。
「私の欲しいもの?」
そういえば、エルヴィンはどんなものを使っているのだろう。
コロンは高そうだし、服も上等なものばかり。
たまに、私がエルヴィンのシャツを寝巻きにしているけど、肌触りのいいシャツだった。
「うん」
この人は、何を欲しがるのだろう。
団長という立場で、私に欲しいと打ち明けてくれるものは一体何。
気になっていた私に、予想外の答えが返って来た。
「子供が欲しい。」
そう言い放つと、エルヴィンは黙々と残りを食べ始めた。
私の作ったホットケーキが、どんどん皿から消えて、エルヴィンの口の中に消える。
甘そうな口から飛び出た言葉を理解して、赤面した。
「え、あ」
驚いた私からは、こんな言葉しか出なかった。
食べる手を止めて、エルヴィンが私に諭しかけた。
「子供が出来なくてもいい、一年後も抱きしめさせてくれ。」
手に皿を持ったまま、空いてる手で私を手招きした。
呼ばれたように近づくと、腰に手を回され、抱きしめられる。
漂うのはコロンの匂いと蜂蜜の香り。
この人らしくない甘さに、謎の征服感が沸く。
それはきっと、作ったものを食べてもらったから。
微笑んだエルヴィンが、私の下腹部を撫でる。
「抱きしめられる人がもう一人増えたのなら、私は幸せだ。」
撫でられる下腹部に、締め付けられたような刺激が走る。
エルヴィンに撫でられるだけで、子宮が発情するような、そんな感覚。
発情なのだろうか?
すぐに体の力が抜けてしまう。
「・・・赤ちゃん、つくる?」
「そうだな、このプレゼントを食べてから考えよう。」
顔に熱を籠らせたまま、ホットケーキをフォークで切っていたエルヴィンの手を邪魔した。
フォークを手に持ち、エルヴィンの一口ぶんの切れ端を口元に持って行った。
「はい、あーん」
ぱくり、と食べたと思ったら、私の手を掴んでフォークを避けるように指を舐めてきた。
ぬるりと絡まる舌に、いつかの全ての情事が蘇り、疼く。
「ね、指っ・・・舐めちゃ」
「ところでなまえ。君からの誕生日プレゼントはケーキだけか?」
「言うと思った」
指を舐められるねっとりとした合図に、背筋から興奮が逆流する。
「言う事、きいてあげる」
舐めおわった指にキスをして、それから囁く。
「私に、愛してると、本心から言え。」
「当たり前のことを強請ってどうするの?」
ただただ、熱い。
熱に浮かされてばかりの私と、余裕のエルヴィン。
「愛してる」
私の言葉を聞いてから、キスをされた。
蜂蜜のせいか、ほんのりと唾液が甘い。
絡み合う舌に蜂蜜が混ざっているのかと思うと、興奮した。
「んん、はあ」
あっという間にシュミーズドレスが脱がされ、性行為をする前独特の興奮が身体を駆け巡る。
露出した胸の先端を舐められ、体が震える。
ホットケーキを食べた甘い舌が、私の身体に舌を這わせはじめる。
何度も体を重ねた仲だ。
どこが気持ちいいか分かっている同士のセックスは、これ以上ないくらい気持ちいい。
何度もしているうちに、どこが気持ち良いかなんていう恥ずかしいことも、全部分かってしまう。
体のプライベートを許すことほど、恥ずかしさと信頼を伴うことはない。
反射的に股を閉じようとしたら、ぐっと両足を開かれ、太ももを撫でられる。
足を閉じたままじゃ、触れないよ。
そういう合図。
気持ちいいことが待ってる、それだけで羞恥にも耐えられ、期待に変わる。
撫でられるだけで、肝心なとこには触れてくれない。
恥ずかしさにぐっと耐え、足を開いていたら、ご褒美かのように性器にキスをされた。
ぷちゅ、と唇が触れる音から、すぐに性器を舐められる。
気持ちいい、と小声で喘いだけれど、聞こえていたのだろうか。
大きなざらついた舌が、性器を知り尽くしたように舐める。
思わず漏れる声を抑えて、吐息で喘ぐ。
エルヴィンの太い指が、膣内に挿入され、それからクリトリスを撫でられた。
擦られて、舐められているうちに、私ひとりだけどんどん気持ちよくなっていってしまう。
部屋に響く荒い息遣いは、全部私のもの。
ぷっくりと膨らんだクリトリスを容赦なく弄り回す指に、されるがまま快感を貪っていた。
指で性器を撫でられるたびに、腰が震える。
スカートの中が、とんでもなくいやらしい。
皆に見られたら、恥ずかしくて死んでしまいそうな光景。
でも、私は気持ちいいのだ。
「あっ、んっ、あっ、はぁぁ」
濡れてきたころ、エルヴィンが片手でチャックを下げ反り返った逸物を私に当てがった。
机に腰掛け、足を開く。
下着はすぐに取り払われ、床に落ちた。
スカートしか体に着ていない状態なのに、興奮する。
これはきっと新たなものだから、今度からこうしよう。
エルヴィンは、すぐ太ももにキスをする。
それから、私の性器を舐める。
エルヴィンのペニスのために作られたような私のそこは、見て分かるくらいびしょ濡れ。
舐められて興奮したら、もっと濡れてぐしょぐしょになった。
クリトリスが、膣内が、疼いて仕方ない。
身体が覚えた快感が、求めてくる。
エルヴィンの肩に手を回して引き寄せてから、足を開いた。
恥ずかしい体勢も、興奮する。
膣口にペニスをあてがい、ゆっくりと挿入する。
中に押し入って入る大きなペニスの圧迫感と、腰から背筋に逆流する快感。
奥のほう、子宮口あたりを突かれるのが此の頃とても気持ちいいと言ったら、激しくされた。
それはそれでいいのだけれど、触れ合う時間が長ければ長いほど、私は勝手に興奮してしまう。
粘液同士が擦れながら、滑りあって中に入って、また見詰め合う。
欲情にまみれて興奮して据わった目が、とても好き。
抱き方は、いたってゆっくりだった。
ゆるゆると、私の体をエルヴィンの体全身を使って愛でるように、動いてくる。
抱きかかえられ、揺さぶられるようにゆらゆらしながら、恥ずかしいとこで気持ち良くなる。
刺激が欲しくて、抱えられたままの体勢で恥骨側をエルヴィンの腹に擦り付けるように腰をくねらせた。
どうにかしてクリトリスへの刺激がほしくて堪らないときの腰使いは、自分でもいやらしいと思う。
「君の喘ぎから、産声が産まれるんだろう?」
「な、に、言ってるの、恥ずかしいっ」
「なまえが・・・。」
エルヴィンさんが私を揺さぶるのをすこしやめて、しっかりと目を捉えて言った。
その目は欲情に満ちていて、これ以上なく愛しく見えた。
「なまえが愛しくて堪らないんだ、私のものだ。この綺麗なうなじと背中も、私のものだ。」
うなじ、と聞いて、エルヴィンは綺麗なうなじが好きなことを思い出した。
白い肌のうなじは、さぞ美しいセックスアピールに見えているんだろう。
「エルヴィン以外とセックスなんてやだ。だから、中にいっぱい出して」
覚えたてのような笑顔で、誘う。
もっと好きにして、あなただけが私を嬲っていいの、そんなことも言えず、ただ求められるものを受け入れる。
もっと、犯されるくらい激しくしてもいいのよ!とは、いつか言いたい。
求められるものと受け入れるものに差がないことは、とても幸せなこと。
「私は、あなたの側にいるの」
体に浮かされた熱を感じて、一年後に強請られたプレゼントは出来るだろうか、と考えた。
少なくとも、これだけしてるんだから、そろそろできてそうだと思ったけれど、そういえば前の生理はいつだっけ?
そんなことが、心配にならなくなった。
欲しいと言われた。
求められたのなら、受け入れるしかないじゃない。
それを愛だと言わないのなら、愛とはなんなのか、教えてもらおうじゃないか。
抱きしめあって、子供が欲しいというエルヴィンに、柔らかなキスをした。





2013.10.14
エルヴィンおめでとう

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