タケルに抱かれ、今までのことが全て走馬灯のように駆け巡った気がした。


「一人にさせないから」

タケルの声が、亜子の鼓膜に響いた。


ーーずっと、一人だった。だから、なおのこと、その言葉がどれだけ心に響いたか……。


亜子の涙は止まるどころか溢れるばかり。


無理もない。今まで色々なことがあったから。



タケルは、亜子の涙を優しく拭う。

そして、頬に手を添え、軽く口づけた。


「亜子……愛してる」



言いながら微笑んだタケルは、亜子を強く抱きしめる。


「タケル……私も愛してる」




これから、二人、ゆっくりと毎日を過ごしていこう。

そして、いつか本当の家族になる日を夢見て……そう誓った夜だった。






(完)

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