9
タケルに抱かれ、今までのことが全て走馬灯のように駆け巡った気がした。
「一人にさせないから」
タケルの声が、亜子の鼓膜に響いた。
ーーずっと、一人だった。だから、なおのこと、その言葉がどれだけ心に響いたか……。
亜子の涙は止まるどころか溢れるばかり。
無理もない。今まで色々なことがあったから。
タケルは、亜子の涙を優しく拭う。
そして、頬に手を添え、軽く口づけた。
「亜子……愛してる」
言いながら微笑んだタケルは、亜子を強く抱きしめる。
「タケル……私も愛してる」
これから、二人、ゆっくりと毎日を過ごしていこう。
そして、いつか本当の家族になる日を夢見て……そう誓った夜だった。
(完)
- 9 -
[*前] | [次#]
ページ: