8月10日、今日は雲一つない快晴。
ここ、万事屋にはエアコンというハイテクなものは無く、扇風機で暑さをしのいでいる。
高杉は額に浮かぶ汗を拭った。
目の前で悠々とジャンプを読んでいる銀時は汗一つかいていない。この暑さに慣れると汗もかかないのかよ、と高杉は思いながら出された麦茶を啜った。

今日は自分の誕生日だ。
去年は自分でケーキをわざわざ買ってきて銀時に祝えと要求した。いい雰囲気のところで馬鹿二人に邪魔されて散々だったが。
しかし今年はその心配もなかった。
坂本も桂も偶々、用事があったらしく祝えないと知らせがきたのだ。
最初から祝ってほしいとも思っていなかった高杉にとっては好都合だった。

今年こそは銀時と甘い一時を過ごせると思っていたが、当人はジャンプを読むのに集中していて高杉に構う様子は全くない。
(今日って8月10日だよな?俺の誕生日だよな?間違ってたら俺ただの痛い奴じゃん)
と高杉は焦り始めていた。
カレンダーで確認してみると8月10日だ。
自分は間違ってはいないようだ。

「おい、銀時よ今日は何の日だ?」
「高杉の誕生日だろ」
「そりゃァ、そうだが…」

誕生日を覚えてくれていたのは嬉しかった。
けれど、なんだこのアッサリした感じは。
これでは去年の方がマシじゃないかと思った。
はあ、とわざと銀時に聞こえるように溜め息を吐いても動じなかった。
コイツいい度胸してるじゃねぇか。
高杉は銀時が夢中になっているジャンプを奪い取りキッチンへ投げ捨てた。
これには銀時もカチンときたようで、ぎろりと高杉を睨みつけてきた。

「何すんだよ!?」

「それはこっちのセリフだぜ?今日は俺の誕生日だ!!祝いやがれ」

「何その上から目線!?」

高杉から逃れるように銀時はソファから立ち上がろうとした時だ、高杉が足掛けをし銀時は鈍い音を立てて床に倒れ込んだ。
見上げると不適に笑む高杉の姿が目に入った。

「銀時ィ、今年こそは最後まで邪魔者がいねぇぜ?」
「なっ…やめっ、んん!」

抵抗しようとする銀時の腕を押さえつけて唇を塞いだ。
唇の隙間から舌を忍ばせて絡みとると銀時は悩ましげに眉根を寄せた。
酷く官能的で理性を抑えるのが惜しいくらいだ。
甘い息遣いに目眩がしそうだった。

「なぁ銀時?俺を祝ってくれよ」
「んっ…耳元で、喋んなっ」

舌なめずりをして高杉は甘噛みをするように耳を舐めた。
びくんと敏感に震える銀時の身体。
自分が男を気持ちよくしているのだと思うと心地がいい。

「銀時、銀時」
「たか、すぎ…後ろ…」

銀時は高杉の後ろにいる何かを指差している。
誰だ、このいいムードを邪魔する奴はと睨みつけながら高杉は振り向いた。
刹那、視界が真っ白になった。
ぐしゃりと柔らかいスポンジのような感触。

「ぶははははは〜!喜べ高杉!祝いにきてやったぞ」
「顔が真っ白じゃき!おまん具合でも悪いんか?」

うざったいほど長い黒髪に鳥の巣のような髪型の男。
ぼやけた視界でもわかるシルエット。
ああ、コイツらは…!

「ヅラ、てめぇ…」
「どうだ?顔面から食らったケーキは」
「クソまじぃ」

べっとりと張り付いた生クリームを手で拭い上体を起こす。
折角の銀時との甘い一時も、この馬鹿二人のせいで今年も台無しになったのか。
高杉の怒りは増していく。
銀時はそそくさと桂の後ろに隠れ高杉を伺った。

「ヅラにバカ本よォ…天国と地獄どっちが見てぇか言ってみな」

ゆっくりとだが確実に高杉は刀を抜刀していく。
キラリと刃が光ると同時に白塗りお化けこと、高杉が桂をめがけ走ってくる。

「ヅラアアアア!バカ本オオオオ!!俺の誕生日を返せエエエエエ」

高杉の叫びに似た声は銀時の耳によく響いた。
(毎年ついてねぇよなあ…)


(ケーキじゃねぇか)




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