錐刀を以て泰山を堕つ
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山崎の調べたとおりのルートで船に入り込むことが出来た。入り込む、と言っても映画とかにありがちな排気口から足と腕で上がり天井裏を這いずっている。しかし、予想していたような罠もなく怖いくらいに順調だ。

「……こりゃァ朝には帰れそうですぜ」
「油断大敵、心に垣をせよ、だぞ」

総悟が呆れたように呟くのを諌めるが、正直俺も呆気に取られている。

面倒だから艦橋(っぽい所)は避けて、紅桜の回収と奴にぎゃふんと言わせることを目的としているのだが、流石の山崎でも船内の地図は無いので適当にそれっぽい場所を狙うしかない。とりましばらく進めば、いかにも怪しげな培養器が連なっている場所を発見した。

「三、二、一」

格子を外して、ゼロのタイミングで俺から飛び降りる。着地し態勢を整えると脇の刀を抜いて警戒するが、運よく人気も無く一度収めた。この部屋には紅桜の培養器しか置いていない。

「……こりゃすげェや」
「圧巻だなァ」

培養器の中には無論紅桜の兄弟達が陳列されていた。うわァこんなにあったら江戸征服も夢ではない。てかこれじゃ回収するより壊すほうが早いよなァ、と考えていたら、横の総悟がごそごそと何かを取り出して培養器の方にそれを向けていた。

「全部吹っ飛ばしちまいやしょうぜ、土方さん」

それは携帯式対戦車ロケット弾発射器、いわゆるバズーカである。残念ながら発射機使い捨て型であるが、真選組では愛用されている安価な60mmバズーカだ。
 
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