朱に交われば赤くなる
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「土方さん」

屯所の仰々しい門をくぐったところで後ろから声を掛けられた。足を止めて振り返ればそこには予想通り総悟の姿がある。正直あんなこと言って来てくれなかったら恥ずかしい。

俺は再び前を向いて歩き始めた。慌てて俺の後を追うばたばたという足音を尻目に俺は昨日ぶりの煙草を出して火をつけた。風は目の前から吹いている。後ろで咳き込む声がひっそりと聞こえたのでふと笑えば、総悟はひでえや、とまたもや拗ねた声を出した。

「こないだ、ザキがアンタの煙草全部没収したんじゃなかったんですかィ」
「手持ちを没収しただけじゃあな。それにザキだけに使いを頼んでるわけじゃねェし」
「あの後、土方さんから没収した煙草をザキから没収したんでさ」
「おま、まだ未成年だろうが」
「誰も吸ったとは言ってねェですぜ」
「それで?」

どうしてこの話を始めたのか検討もつかない。その煙草を返してくれるのかと問えば、総悟はふんと威張るように「全部溝に捨てちまいやした」と言ってのけたので俺は一発殴っておいた。煙草も最近増税だなんだで高いのだ。

「……総悟、それでお前は俺について来るのか」
「俺ァアンタについてってるわけじゃねェでさァ」
「へェ」

俺が幾ら笑えども総悟は「俺の行きたい方向とアンタの行く方向が同じなんでィ」としきりに言った。普段尻尾を出さない相手をからかうのは中々に楽しいものだ。総悟は最後に分かってるくせに、と呟いたが、俺はそれに言葉を返すことは無く、ただ彼の頭を撫でるのみだった。
 
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