噂をすれば影がさす
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「行くぞ総悟」
「へいへい」

総悟はふわぁとやる気無く欠伸をした。かくいう俺も今日はすこぶる眠い。夜の見廻りほど嫌なものはないがシフトを決めたのは自分なのでなんとも言えない。いつもの見廻りだったら総悟を放し飼いにして勝手に放浪するのも容認するのだが、今回はあの高杉一派、人斬り似蔵が相手なのでもし遭遇したら、と考えると共に行動した方が合理的だろう。

ま、どうせ警戒するだけ無駄かもしれないがな。なんせ原作じゃ真選組もほとんど出番無かったし。現に今も町中はしんと静まり返っている。俺が手綱を引いてる(勿論比喩表現で実際にリードをつけてるわけじゃない)所為でふらふら出来ない総悟は最初こそ珍しく黙って周囲の警戒をしていたのだが、集中が切れたのか十五分も経つと詰まらなそうにぼやき始めた。

「なんだ、折角強い奴と手合わせできるかと思ったんですがねィ」
「俺じゃ不満なのかよ」
「今まで戦ったこと無い奴って意味でさァ。……んん、あそこの河川敷に居るの、万事屋の旦那じゃ」
「はあ? お前何言って……」

総悟の言葉にぎょっとなりながらも彼が示す河川敷を見遣ると確かに、見覚えの有るような銀髪が居た。
 
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