あ、
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それを視界に納めて、俺は思わずあ、と声を漏らす。
双眼鏡からは、俺が捜し求めていた髪の長いアイツが恐ろしい勢いで走っていた。

「ようやく見つけた。……山崎」
「はいよっ」
「……真面目にやれよ真面目に。何としても奴らの拠点、抑えて来い」

そう言うと、山崎ははいよっとにんまり笑って立ち去った。最近背後に犬の尻尾がぶんぶんと振っているような気がするのはおそらく気のせいではないだろう。
山崎の気配が消えた後、懐から指名手配犯の紙、桂の写真を取り出すと、ふと溜息を吐いた。

「天人、ねえ」

天人と呼ばれる宇宙人が侵略してきたのは、今は昔の二十年前。御国の為に戦っていた攘夷志士も、この今の傀儡政権の中では唯の反乱分子だ。正直なんでコイツらが国を牛耳ってるんだと声高に言いたいような気持ち悪い容姿の天人もいるが、そんな奴等を守るのが今の俺の仕事なので、変なことを言うようなら、おそらく今俺のすぐ傍で寝ている奴にぶった切られてしまうだろう。そんな死に方だったら、まだ幕府の狗だと罵られてもお上を守って死ぬ方が、俺というか土方十四朗の面目も保たれるだろう。死なないが。

……無駄話だった。
とりあえず、この話は寝てる奴を起こさないことには始まらない。手に持っていた紙をぐっしゃぐしゃに丸めると、それを寝さぼっている総悟の頭に放り投げた。
   
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