私だけが楽しい。すみません。
神も神器も、すべて人間に転生してます。神や神器、ひよりのような人間、いわゆる彼岸を知るものには前世の記憶があります。
神器は前世で仮名をつけられる以前のことは依然覚えていません。夜トさまは「夜ト神探偵事務所」の所長さんです。彼岸のものではなく、此岸の人間なので忘れられることもなく、前世よりは繁盛している設定です。




 久々の依頼は、ガキの猫探しだった。
 決して正規の依頼ではない。学校帰りなのか、未だ小奇麗なランドセルを背負いぱん、ぱん、と柏手を打ち、小さな社に一枚の五円玉と猫の写真を置いて、ぎゅうと目を瞑りながら祈る子供の姿を見てしまっては、どうにも無視をするのは可哀想に思えたからだ。
 何の得にもならないことだけれど、その願いを放っておけないのは、もはや性分なのだろう。手掛かりはたった一枚、猫の写真。その裏には子供の筆跡で一言添えられていた。
――ウエサマを探してください。お願いです、神様。
 残念、今の俺はただの人間だ。夕焼けに写真を掲げひっそりと呟いた。
 けれど、悪い気はしない。


 この世界は一度滅びた、はずだった。
 終末を迎えた世界であるがままを受け止めた人間――或いは人でないもの、そのすべては、世界が再構成された後に再び、人として生まれ変わった。
 それを知るのはこの世界に生きる、限りなく一部の人間のみだ。神、その僕である神器、そして彼岸の存在を知る人間、だった者たち。しかし、神も神器も人間も、この世界に生まれ落ちるにあたっては皆平等に唯の人間として生を受けた。
 ただ、――そう、残念ながら、人間になったとは言えど、強い力を持った神はこの世界においても、人間社会でのヒエラルキーにそれが適応される。そして、その逆も然り、なんて自分で言うことじゃあないけれど。
「ウエサマ―」
 まさかあの猫を再び捕まえる羽目になるとは思わなかった。どうやら転生したのは人間だけではないようだ。溜息をついて、思い出すのは前世のこと。
 確か、あの猫が俺とひよりを引き合わせたんだった。
 蒼天から次第に陽は暮れ、すっかり夜めいた気配が漂う。そういえば今日は新月だった、と思い出しては唐突に家路が恋しくなった。一端の神であった頃は神器さえ居れば怖いものなしだったのに、今ではすっかり人間の仲間入りだ。月のない夜に怯え、朝を渇望する。
 あの猫は妖を挑発する阿呆ではあったが、人の言葉を解する賢い猫だった。今もどこかで同じ思いをしているのだろうか。歳は幾つだと言っていたか。あのとき、懐にいれた重みは成猫のそれではなかった、ということは生まれたばかりの子猫なのかもしれない。
「ウエサマぁ、どーこでーすかー!」
 たった五円でも、昔から俺はその縁を繋ぐために存在する。
 今晩は冷えるらしい。早く見つけて、あの少年の元へ帰してやらないと。

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『ノラガミ転生現パロ』2015/11/01 Sun 23:36
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