「そういや今日って子供の日やったな」

テニスの練習の小休止中、俺は携帯のカレンダー機能を見て思い出した。謙也くんはごくごくと水を飲んでいたが、俺の言葉に反応する。

「なんや、白石ん家こいのぼり飾っとらんのか」
「んー……姉ちゃんと友里香の雛祭りしかやらんからなぁ。あんまり見に覚えがないっちゅーか」

そういえば、子供の日なんて昔も今も大したイベントは無かった。ただ他の家の屋根にはためくこいのぼりを見て、若干羨ましく思ったくらいだ。
それを言うと、謙也くんは突然叫んだ。

「白石はなんでそないに大人なんや!」
「え、いやせやかて、俺の我侭やし」
「阿呆! 自分ただでさえ我侭言わんのにそういうときに言わんで何時いうんやっちゅー話や!」
「…なんで謙也くん泣いとるん」

俺は呆然とした。
無意識に謙也くんの目から溢れる涙を右手で拭うと、更に溢れてくる。え、何で泣いてるの、えええ、俺が泣かせたんかこれは。

「じ、自分が泣かへんから俺が代わりに泣いたるんやアホ!」

そうやって泣く彼を、抱きしめた。

*囁くように泣いているの、

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小6若しくは中1の子供の日。
我侭を言わない子供・白石と感情豊かな謙也くん。
謙也くんは白石が自分をあまり主張しないのを分かってはいるけど、時々本人より辛くなってしまうっていう。感受性が豊かなんです。

title = 群青三メートル手前-雨香十五題より
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『子供の日』2012/05/05 Sat 23:09
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