死んでしまいたいと思ったことなんて何度もある。その度に自殺の方法を調べるのだが、いつの間にかその熱情も冷める。死にたいと思う反面、痛いのは嫌いだったのだ。
そう、それにしても何故こうも死にたいと思うのか。それはおそらく、俺が越前リョーマだから、なのだろう。

Dear ××

拝啓、名も知らぬ君へ
これは、俺の苦悩を綴る手紙だ。もし俺以外の誰がこれを読んでいるのだとしたら、よかったら最後まで呼んで、そっと戻しておいて欲しい。あと、これは断じて遺書では無い。もし君が読んでいる時に俺がもう死んでいるのならば東京湾にでも流してしまえ。燃やす価値も無い。

親の七光りだと言われるのも嫌だが、親が立派だからと過度に期待されて生まれた俺には、その時点からテニスで栄光を掴むことを強制されていた。明らかに実力差で負けたのにも関わらず父は惜しかったなあと戯けたことを言う。それが嫌でアメリカの大会で優勝したら、次は日本? 正直、冗談じゃ無いと殴りたかった。

再三言うようだけれど、周りから勝利を強制されていた。どこへ言っても越前の名は纏わりついて離れやしない。越前リョーマと呼ばれるのは、俺にとって何よりも苦痛だった。部長も、皆も仲良くしてくれたけど結局は俺の才能目当てであって、すなわち青学が勝つことにしか興味が無い。

それに気付いたとき、俺はとても淋しかったのだ。


他にも数枚あったけれど、これだけで十分だった。彼が抱えているものは理解しがたいけれど、彼の淋しさは埋めて遣れる。俺は奴の何も理解しちゃいなかったのだ。良い先輩を気取っていたけど結局はアイツがいれば優勝も夢じゃないという安心が欲しかった。俺もわかっちゃいなかったけど、アイツも何もわかっちゃいない。俺達が、お前のテニスだけを見ていたんだと本当に思っているのか?
「これが本当ならお前、詐欺師にでもなれるな」
ぐしゃぐしゃと畳んで手紙はコートのポケットに忍ばせる。目指すは、テニスコートへ。

***

ありがちですが「皆は俺ではなくて、越前リョーマのテニスに惹かれてる」と思い込んでる成主。いつ書いた奴かもわからないけど出てきたので上げてみる
多分最後の先輩は桃ちゃんだと思いますおそらく。リョーマの部屋に不法侵入、とメモしてあったけどそれこそ冗談じゃ無い
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『鬱リョーマ成り代わり』2013/03/04 Mon 17:05
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