ゆびさき同盟
おやゆび

「だーからァ、マネやんねーのって聞いてんじゃん」
「やんねーって何度も言ってんじゃん!」
「お前らなんでオレのクラスでケンカしてんだよ」
「「だってコイツがここいるから」」
「さっさと戻れよチャラチャラコンビよー」
「はあ?わたしのどこがチャラチャラしてんの?」
「んー、明るい髪とピアスじゃね?」
「それ照島もじゃん」
「だからコンビって言ったべや」

見た目だけは爽やか系の沼尻はいっつもわたしと照島をチャラチャラしてるって言う。うるせー、誰が女子紹介してると思ってんだやめるぞコラ。沼尻の席に座っているわたしは、机の上をバンバン叩いた。そしたら、沼尻が机の横に引っ提げた鞄をごそごそ漁ってうっすら汚れた英語の教科書を取り出した。

「ほれ。英語だろ吉川」
「そのとーり!ありがとサンキュー今度パンおごる」
「最近購買のパンまずくね?」
「あんたに買うわけじゃないし」
「それオレも思ったわー。好きなチョコパン入荷しなくなった」
「…」
「だろ?オレのすきなソーセージのやつも違うのになってっしよー」
「……ジュースにすりゃいーんでしょ」
「お前って実は素直だよな」
「な。見た目によらずな」
「もー!あんたら帰れ!」
「いや、帰んのお前の方だから。ここ3組、お前は1組」
「そうだぞさっさと帰れ」
「お前も7組だろーが照島」
「しょーがねえ、帰るか。ん。」
「ん」

あたりまえのように差し出されたゴツゴツした手をあたりまえに取って、照島と手を繋いで立ち上がる。そんなわたしたちを呆れたようにじっとりと見上げる沼尻の視線にはもう慣れっこだ。伊達に友人二年目やってない。

「授業遅れんなよ」
「うい〜」
「へーきだよ〜」

繋いだ手を二人で持ち上げて手を振る様にぷらぷらさせた。違うクラスの生徒が手を繋いで歩いてようがこのクラスは気にしない。ってか慣れたんだろうな。いつもこのまま廊下に出て、わたしのクラスの前で手を離す。これが他のクラスで照島と遭遇した後の流れ。いつから始まったんだろう。2年に上がったくらいからかな。いつだったか記憶を辿りながら、隣りで歩いてる照島の顔をこっそり覗いてみる。

「なんでニヤニヤしてんの照島」
「べーつにィ」

そういえばなんでこの人3組来てんだろう。沼尻に用があったわけでもなさそうだし。まさかマネ勧誘だけしに来たのかな。だったらわたしのクラスで待ってたらいいのに。なんでわざわざ3組来てんの。

「……そんなにマネ欲しいの?」
「やってくれんの?!」
「やんないけど」
「ふざけんなテメー」
「最初からやるなんて言ってないじゃん!」

バイトで忙しいんだから他を当たれ。そう言うと、いつも決まって同じ言葉が返ってくる。

「遊べそうな奴じゃねーと楽しくねーじゃん」

わたしはいつも、照島たちの言う「遊ぶ」の意味を図りかねてる。彼らの部活は遊びで、本気じゃないのかな。その割には朝練も頑張ってるし暇さえあればバレーをしてる。彼らの一番は間違いなくバレーなのに、それを遊びってどういうことなんだろう。やっぱりいくら考えても答えは出て来なかった。


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